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TowerJazz、デザインセンターを社内に置きサポートの充実図る

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イスラエルに本社を置くファウンドリメーカーのTowerJazzがこのほど、日本国内にもデザインセンターを充実させることを明らかにした。これは、同社CEOのRussel Ellwanger氏が7月下旬に開かれたTowerJazz Technical Global Symposiumで述べたもの。

ファウンドリビジネスでは、顧客の代わりにデザインをするサービスが必須になっている。TSMCは、Global Unichipというデザインハウスを子会社として持ち、RTL設計を嫌がる顧客に向けてLSI設計作業を請け負う。TowerJazzは自社内にデザインセンターを置いて、顧客のシステムに沿った半導体チップ設計を請け負う。日本国内では西脇工場で行う。イスラエルとカリフォルニア、西脇と世界各地にあるセンターと併せて、グローバルなセンターの一つになる。このデザインセンターをDesign Enablement Centerと呼んでいる。

タワージャズ・ジャパンの代表取締役社長の河端敬一氏は、「日本人の日本語による日本工場のサービス」がセールスピンとだと言う。デザインセンターが国内にある(図1)ことで、ICユーザーにとって、気楽にICチップの設計・製造を依頼できる。顧客のシステムにもっとも適したデザインをサービスすることを心掛けている、と河端氏は語る。


図1 TowerJazzのデザイン・サポート体制 出典:TowerJazz

図1 TowerJazzのデザイン・サポート体制 出典:TowerJazz


ただしTowerJazzの得意な分野は、アナログ、ミクストシグナル、パワー(図2)。具体的には、CMOSセンサやRFチップ、MEMS、高耐圧プロセス、その他CMOSなど。製品に加えて、TOPS(Transfer, Optimization and development Process Services)と呼ぶ、顧客のカスタマイズに合わせたプロセスサービスもある。製品仕様に合わせてイスラエル、カリフォルニア州ニューポートビーチ、西脇の3工場を選択する。


図2 TowerJazzの製品ポートフォリオ 出典:TowerJazz

図2 TowerJazzの製品ポートフォリオ 出典:TowerJazz


微細化を追求する純粋なデジタルロジックではない、これらの分野は日本の顧客が得意な分野でもある。河端氏は、「われわれはここを手伝いたい」と言う。チップコストを下げるために活用してもらいたいとしている。ファウンドリビジネスをやっていくために、デザインキット、EDAツール、IP、サービスを提供する。同社が目指すのは、すべてのEDAツールで相互運用性のある(interoperable)PDK(プロセス開発キット)の作成だ。これにより顧客はEDAツールを自由に選択できる。

回路トポロジーのチェックは、TowerJazz側で行う。プログラマブルERC(electrical rule check)を使って、接続性やレイアウトなどの妥当性を評価する。例えばESD(静電破壊)に弱い回路があるかどうかのチェックなどは、これまで顧客がファウンドリのPDKを読み、ルールを理解していたという。顧客はIC回路設計よりも電子システムにフォーカスしたいはずであり、IC回路の妥当性のチェックはもともと関心が薄い。TowerJazzはさまざまな顧客をカバーするためのデザインツールを揃えている(図3)。


図3 きめ細かいデザインツール群 出典:TowerJazz

図3 きめ細かいデザインツール群 出典:TowerJazz


TowerJazzは、モデリングも含めた回路設計や合成、検証といったデザインと、PDKを使ったプロセスへのサポートなどを行う。モデリングには高耐圧やSiGeのトランジスタなどサポートするプロセスに応じたデザインをカバーする。さらにパラメータによって、寄生素子や熱抵抗を含め、トランジスタサイズも変えられるツールを提供する。


図4 TowerJazz GroupのCEOであるRussel Ellwanger氏

図4 TowerJazz GroupのCEOであるRussel Ellwanger氏


CEOのEllwanger氏は、「日本人は、東日本大震災や津波から見事に復興させたことは素晴らしい。規律のとれた社会だからこそ、できたことだ。加えて、日本人はきれい好きだ」。と述べた。続いて、ビデオを流し、カフェテリア形式の食堂において、食べ終えた後のトレイとその上の食器について海外の例と比較した。日本の食堂では、食後、食べ残しを捨て、箸を分別し、ごみを捨てたうえで、食器を洗い場に投入する。これに対して別のある国では、トレイに載せた食べ残しを含む食器をトレイごとそのまま流しに持っていく。日本人はきれい好きである点は大きなメリットだとCEOは日本をべたほめする。

Ellwanger氏は、さらに日本を活性化させるための提言も行っている。いつくか紹介すると、まず成功を勝ち取るための要素は二つ;ビジョンと人材だという。企業をどうすべきなのか、したいこと(want)と、すべきこと(should)、あるべきこと(Be)を3つとも一致するように企業経営することが重要だ、と述べた。さらに過去の歴史にとらわれてはダメで、成功体験にしがみつかないようにすべきであり、もっと女性を活用すべきであり、これから重要になる「環境」問題を子供に教えることも重要だと述べた。加えて、労働環境を改善することも重要だとする。

(2013/08/02)

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