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サファイヤ結晶の大口径化によりLED基板価格は2013年に半減を期待

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白色LED照明の原材料となるサファイヤ基板結晶を製造する装置と、サファイヤ結晶インゴットを製造販売する米GT Advanced TechnologyがLED Japanで存在感を示した。大きな体積のサファイヤ基板の8インチ化を可能にし、しかもインゴット直径当たりの価格も下げられる見通しだ。サファイヤの市場は拡大成長すると見る。展示会での同社の標語はGrowth begins here(成長はここから始まる)であった。

図1 GT Advanced Technology社サファイヤ材料グループ担当バイスプレジデントのPaul Beaulieu氏

図1 GT Advanced Technology社サファイヤ材料グループ担当バイスプレジデントのPaul Beaulieu氏


白色光は青色LEDに黄色い蛍光膜(赤+緑に等しい)を被せることで得られる。青色発光ダイオード材料であるGaNの結晶格子定数に近い材料がサファイヤであり、現在の青色LED基板の主流となっている。LED照明では青色LEDチップを数十個使うのが一般的である。このためチップの価格が照明ランプの価格を支配する。チップを低コストにするためにはサファイヤ基板の低価格化が不可欠になっている。

GT社は、サファイヤ結晶の低価格化を強く推進している。同社は昨年まで太陽電池用のポリシリコン基板とウェーハを主力製品としていたが、昨年7月に米Crystal Systems社を買収し、サファイヤ結晶ビジネスを手に入れた。その後、矢継ぎ早にCrystal社の持っていた装置の台数を3倍に増やし、生産能力を2インチのサファイヤウェーハ換算で600万枚/月に上げた。GT社の持つサファイヤ成長装置ASF(Advanced Sapphire Furnace)の受注額は9億4400万ドルもある、と同社サファイヤ材料グループ担当バイスプレジデントのPaul Beaulieu氏はいう。

同社のユーザーには、インゴット(厳密にはサファイヤビジネスではブールと呼ぶ。結晶の原石という意味のブールBouleという言葉)から、ウェーハにスライスして加工するメーカーが多い。特に、サファイヤ結晶からウェーハを作り出すメーカー上位10社のうち、6社がこの装置で成長させたサファイヤのインゴットを使っているとしている。ユーザーであるウェーハメーカーはこの結晶インゴットを購入して、スライスし、ラッピング、研磨、アニール、洗浄などの工程を経てウェーハに仕上げるが、GT社はウェーハ加工は扱わない。

サファイヤ結晶の低価格化に欠かせないのはサファイヤ結晶の大口径化である。結晶成長の速度からa軸方向に成長させることでインゴットを作製し、成長させたインゴットを目的とする結晶面(軸)に向くように周囲を削り円柱にする。このため大きければ大きいほど、LED向けのc軸の円柱結晶が取れやすくなる。LED Japanで見せた直径15インチの円柱型のインゴットの重量は100kg。これまで同社の最大重量は85kgだった。最も大きなインゴットとして130kgも可能だとしている。

サファイヤインゴットを大口径化することで低価格化に結びつき、GTは結晶インゴットの大口径化によるコストダウンを図2のように見ている。


図2 結晶インゴットの低価格化の推移予想

図2 結晶インゴットの低価格化の推移予想


サファイヤの市場はLEDだけではない。SOS(silicon on sapphire)デバイスの耐放射線デバイスとして市場があり、米Peregrine Semiconductor社などがSOSデバイスを宇宙防衛産業からもっと一般的な工業用へと広げようとしている(参考資料1)。絶縁体上のシリコンは浮遊容量が小さくなるため、高速・低消費電力になる。SOIと同様の応用分野が期待できる。

参考資料
1. 新生CMOS on SapphireのRFチップで携帯電話市場のGaAsを置き換えていく (2010/06/30)

(2011/10/11)

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