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産総研を中心としたTIAとフランスのデバイス研究所LETIとの役割分担が明確に

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フランスの国立研究開発機関のLETIが東京でコンファレンスLETI Dayを開催、日本半導体産業とLETIとの交流を積極的に進めることを訴えた。その第1弾として2010年5月にLETIと日本の産業技術総合研究所との間で技術交流を中心としたMOU契約を交わした。共にもう少し大きな組織として、産総研はTIA(つくばイノベーションアリーナ)、LETIは政府のCEA-DRTとの間でのMOUとなっている。その詳細が明らかになった。

LETIの開発拠点のあるMINATECキャンパス

図1 LETIの開発拠点のあるMINATECキャンパス


LETI Dayの招待講演の講師として日本の産業技術総合研究所のナノ電子デバイス研究センターの金山敏彦センター長が講演し、LETIのCEOであるLaurent Malier氏はLETI全体のミッションについて述べた。産総研はトランジスタレベルのデバイス・プロセスに集中し、LETIはトランジスタを集積したLSIレベルの応用研究することに集中しており、両社の提携は互いを補完しあいウィン-ウィンの関係になるとしている。

TIAは産総研と物質・材料研究機構(NIMS)、筑波大学という3者でナノテクノロジを研究するための共同組織である。これまで期限付きで活動していきたSelete(半導体先端テクノロジーズ)のクリーンルームを生かし継承する。ここから「産業領域を作り出したい」と金山氏は意気込む。ArF液浸リソグラフィとEUVリソグラフィを備えたクリーンルームがあり、300mmウェーハを扱えるプロセス設備もある。例えば45nmCMOSベースプロセスを持っているため試作依頼に対応するR&Dファウンドリとしての役割も果たす。

動作電圧0.5V以下のCMOSトランジスタやLSI、メモリーなどプロセス技術を中心の開発を進めている。ウェーハ同士の張り合わせや3DウェーハIC、SiCプロセスなど、これからのシリコンプロセス技術を開発する。同時にカーボンナノチューブ(CNT)や環境に配慮した材料を使うグリーンプロセス、低消費電力・再生可能エネルギー・エネルギーハーベスティングなどのグリーンデバイスなどについても研究する。TIAは国内企業だけではなく海外の企業や研究所とも共同研究、設備の共同利用も推進していくとする。

一方のLETIは、産業界に技術を移転することをミッションとして掲げているため、応用研究に集中する。合計1600名の研究者(うちプロパー1300名)がフランス・グルノーブルにあるMINATECキャンパスに集まっている。産業界との共同研究では目的をしっかり定め、サードパーティに対してはオープンイノベーション、企業との共同研究に関しては秘密保持を基本とする。企業パートナーの利益になるようなIPのルールを定めているとしている。


LETIがカバーするこれからの応用研究

図2 LETIがカバーするこれからの応用研究


現在利用可能なダブルパターニングやEUVリソグラフィ、3D集積化技術を使い低消費電力のLSIを開発するが、産総研との違いはプロセス・デバイス技術をさらに追及するのではなく、アプリケーションに応じたLSIを開発することにある。このため、プログラマブルロジックチップに必要な組み込みソフトウエアを開発したり、マルチコア・マルチスレッドなどの並列処理コンピュータ技術やワイヤレス通信技術を開発したりする。

例えば、ノキアと共同でNFC(近距離無線)とワイヤレス給電技術の組み合わせにより最大112Mbpsのデータ転送レートを使い、1Gビットメモリーをバッテリなしでアクセスする技術を開発している。医療診断・画像処理用チップも開発中で、がんを検出し治療に生かす応用研究も行っている。スマートグリッドのシステムに向けたチップの開発、ソーラーシステムの制御、電力潮流の制御などに向けた半導体チップの研究も始めている。

日本の産業界と長期的で強力なパートナーシップを結び継続していきたいとMalier氏はコミットしている。

(2010/10/15)

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