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TSMCが28nmプロセスをゲートラストで構築、20nm以下の見通しも語る

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TSMCが28nmプロセスにおいてゲートラストを選択することを発表した。7月2日開催するTSMC2010 Technology Symposium Japanに先だって、1日にメディア向けにその概要を発表したが、メディアに対してエンバーゴをかけ、本日正午を持って発表となった。

TSMCのCTOであるJack Sun博士

TSMCのCTOであるJack Sun博士


TSMCが今回明らかにしたのは28nmCMOSプロセスを、nチャンネルトランジスタのゲートをn+、pチャンネルトランジスタのゲートをp+のメタルゲートで構成するゲートラストのプロセスを採用すること。ゲートラストはプロセスが複雑になるきらいはあるものの、n、p両チャンネルのゲートメタルの仕事関数を持ちあげられる方式を使えるため、ゲートリーク電流の上昇を抑えられるというメリットがある。もちろん、ゲート絶縁膜にはhigh-k材料を用いる。

同社R&D担当CTO兼VPのJack Sun氏によると、「ゲートファーストプロセスを使ったところはうまくいっていないと聞く。こういった歴史から学び、当社はゲートラストプロセスを選んだ」と述べた。

28nmのhigh-k/メタルゲート(HKMG)プロセスには3つのオプションがあり、それぞれ高性能狙いのCLN28HP、高性能モバイル向けのCLN28HPM、高性能低消費電力のCLN28HPLがある。CLN28HPプロセスは2010年第4四半期に量産開始する計画だ。ただし、28nmプロセスオプションはこれらが初めてではない。低消費電力狙いのCLN28LPと呼ばれるゲート絶縁膜に従来のSiONを使ったバージョンは最近、量産を開始した。


TSMCの28nm CMOSロードマップ

TSMCの28nm CMOSロードマップ


28nmプロセスで重要になることは、デザインルールの制約(RDR)を設けることでプロセスバラつきをいかに減らすかということに尽きるという。これまでRDRを設けてデザインを制約するとトランジスタを集積化しにくくなるといわれていたが、28nmでは逆にプロセスバラつきが大きくなってしまう。RDRを設けなければ、消費電力、動作速度、リーク電流、歩留まりなどが悪くなるためだとSun氏は言う。RDRとしては次の4項目に制限を設ける;
1.ポリシリコンの向きを一方向に揃えること
2.同一拡散面積上のトランジスタのチャンネル長を同一にすること
3.ポリシリコンの間隔を一定にすること
4.拡散領域を決まった形に統一すること

デザインルールチェックは20nm時代には大手EDAベンダーたちとのコラボレーションは欠かせないとしている。ただし、どのEDAベンダーと組むのかセミコンポータルは質問したが、Sun氏は答えを避けた。

28nmの次のプロセス開発にも言及、22nmはスキップして20nmへ飛ぶとSun氏は述べた。「これはチップコストの効率が良いからで、同じウェーハサイズで比較すると22nmよりも20nmにするとチップの密度は20%も増加することがわかった」としている。

20nmまでは液浸ArFリソグラフィを使えるだろうが、20nmがもはや波長限界だろうとして、それ以降のリソグラフィについてはEUVとMEB(マルチビームの電子ビーム露光直描)の2本立てで行く。EUVはオランダASMLのNXE3100を2011年の早い時期から使い始め、20nm、14nmプロセスではEUVのプリプロダクション用に2012年から使い始める予定だ。MEBについては、2009年7月にMAPPERプレアルファ機として5keV、110ビームのツールを使って試しているが、ビームの均一性はhp45nmとhp30nmで10%以内だったとしている。さらにマルチビームをアップグレードすることによって、13,000ビームで10枚/時のスループットを20nm、14nmノードではさらに上げ、クラスター化することで100枚/時のスループットを目標としている。

20nm以下になるとコラボはマストになる。20nm辺りからウェーハコストは急増するからである。リソグラフィ装置開発は言うまでもなく、3D ICでは大手アセンブリハウスとのコラボにより強力なサプライチェーンを作り、インターポーザの有無も含めて検討していく。ただし、ここでもアセンブリハウスの名前は避けた。最初の段階ではインターポーザは必要だが、次の段階では直接ロジックとメモリーなどをTSVで接続するとみている。

さらに日本のメーカーとは装置・材料メーカーとのコラボを望み、装置、材料、マスク、デバイス物理を含め協力したいとしている。450mmウェーハに関しても今はISMI SEMATECHと協力しているが、広いサプライチェーンとのコラボが必要とみている。

(2010/07/02)

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