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NXP、RF/ミクストシグナルASICのワンストップショップ体制完了、量産へ全開

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「RFやミクストシグナルASICの設計から製造・パッケージング・量産までワンストップショップで顧客に提案できる」と、NXP Semiconductors社戦略ビジネス開発マネジャーのJacob van der Pol氏は胸を張る。これまでのこなれたプロセスを武器にRFやアナログ、ミクストシグナルのチップの設計ツールの提供から製造・パッケージング・テストまで全てを請け負う体制ができた。

NXP AMS & RF Process Portfolio


このほど来日したvan der Pol氏は、これまでの設計ツールは社内でしか使って来なかったという。微細化に重点を置かなくても済んできたアナログでも少しずつプロセスは進化しながら、一方でプロセスの広がりに対応できる準備を整えてきた。アナログやミクストシグナル製品のプロセスポートフォリオとしては、RF向け、フラッシュ搭載のCMOS、高耐圧CMOS/BCD(bipolar/CMOS/DMOS)、SOI-BCD/高耐圧パワー製品、BiCMOSといったプロセスを揃え、デザインルールも耐圧800Vの2μmから、微細なRFの0.14μmまで揃えた。


NXP Semiconductors社戦略ビジネス開発マネジャー Jacob van der Pol氏


プロセスは、CMOSだけではなく、BiCMOSや高耐圧系のDMOS、バルクだけではなくSOIウェーハも利用する。BiCMOSのうちのバイポーラの性能を上げるためワイドギャップエミッタ構造を作るためのSiGeやSiCを組み合わせる。Siのバンドギャップに比べてSiGeは狭く、SiCは広いという性質を利用する。エミッタ部分にエネルギーギャップが広いSiC、ベースに最も狭いSiGeを用いることで、エネルギーの高いホットキャリヤがベースを走行することになり、バイポーラトランジスタの動作速度は高まる。バイポーラトランジスタは微細化よりも、ベース幅を狭くエミッタからの電子エネルギーをできるだけ高くすることがスピードを上げる常道である。

このプロセスポートフォリオを顧客に示し、NXPはCOT(customer owned tooling)と呼ぶビジネスモデルを使ってさまざまな顧客に対応する。顧客に設計ツールを貸し出すことで、ICチップの仕様やアーキテクチャから設計まで顧客に任せるモデル、設計だけを第3者のデザインハウスにゆだねるモデル、仕様から製造までNXPが担うモデルなど、どのモデルでも顧客が選択できるようにしておく。

上図のプロセスの中で最も高周波に使えるQUBiC4 RF-BiCMOSファミリーは、デザインルール0.25μmのCMOSとSiGe:CバイポーラプロセスによってGaAsデバイスよりも高性能で信頼性が高い。このファミリーの中で最新のプロセスQUBiC4Xiでは、バイポーラトランジスタの遮断周波数fT(電流増幅率βが1になる時の周波数)は180GHz、最大発振周波数fMAX(パワーゲインが1になる時の周波数)が200GHzと高く、雑音指数は10GHz動作時で0.5dBと低い。NXP社内ではこのプロセスは2002年以来、実績があるとしている。これまでファミリー全体で8インチウェーハに換算して20万枚を累計で出荷、45品種をテープアウトした。


QUBiC4 Application Examples


このQUBiC4プロセスにはCMOSやバイポーラだけではなく、可変/固定キャパシタやインダクタ、薄膜抵抗なども含み、アンテナ入力から周波数変換してIF出力までの全ての回路をカバーする。LNA(ローノイズアンプ)からPLL(位相ロックループ)、フィルタ、分周器、局部発振器などの回路をIPとして持っている。

IPコアは、顧客がどのIPをどのくらいの数を使うか、などによってライセンス料の有無や料金の大小が変わると、同氏は言う。RF用のプロセスQUBiC4で使うIPの種類は、以下の図のようにRF回路で用いられる全ての基本回路がそろっている。


Example Product Embedded IP - QUBiC4


QUBiC4ファミリー以外も現在ユーザーの認定を取得中で、例えばCMOS14AMSやCMOS14Pは2010年の中ごろには認定が終わり、量産に入ることになる。ABCD9は自動車用チップの認定を取得中のため、もう少し時間がかかり認定終了は2010年第3四半期だとみている。量産体制は確立しているため、認定が済み次第、即量産できるとしている。

顧客に提供する設計ツールでは、プロセス技術パッケージとしてデザインフローツールチェーンのファイルやシミュレーションモデル、プロセスパラメータなどを含み、I/Oセルライブラリやスタンダードセルライブラリもある。さらに、メモリーや組み込みプロセッサ、データコンバータなどのIPコアも揃えており、ユーザーが組み込むためのIPも共同で開発する。

ウェーハファブはオランダのナイメーゲンとシンガポールにあり、デュアルソースによって顧客に安定供給できることを強調する。生産能力はナイメーゲンのICN8ファブが1万5000枚/月、シンガポールのSSMCが6万枚/月だとしている。

NXPのミクストシグナル製品は日本市場で伸びており、2009年は世界的な不況に見舞われたのにもかかわらず、27%成長したという。この成長を促すため、この2年間に日本のオフィスに25名を採用したとしている。

(2009/11/26)

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