ニューモニクス、満を持してPCメモリーをまもなく量産、90nmで128M品から
スイスに本社を構え、伊仏合弁のSTマイクロエレクトロニクスと米インテルとの合弁会社であるニューモニクスが、128Mビットの相変化メモリー(PCメモリー)を量産する。現在、特定ユーザーにエンジニアリングサンプルを配布中であるが、まもなく一般ユーザーにも配布できるようになる。90nmルールという実績のあるプロセスで設計している。年明けには1Gビット品も出したいと意気込んでいる。
ニューモニクスは、アイリーアクセスプログラムと呼ぶ、システム設計者やソフトウエア開発者のために最新情報を提供するホームページを立ち上げた。PCメモリーの最新情報を提供する。今回、128MビットPCメモリーに関してはNDA(Non-disclosure agreement)を結ぶことなく情報を読むことができる。
高温のリセットパルスでアモーファスになり電流は小さくなる
PCメモリーはカルコゲナイド結晶材料を急加熱・急冷することでアモーファス状態に変え、材料を流れる電流の変化、すなわち抵抗の変化を利用して1、0を対応させるメモリーである。上図においてT字のメモリーセルのオレンジ色部分がカルコゲナイド材料(Ge2Sb2Te5)、緑色部がヒーターである。それぞれの上と下は上部電極、下部電極で構成されており、電極間に電流を流し急熱・急冷にすると黒い部分で示したようにアモーファスとなる。アモーファスでは電流は流れにくいが、結晶の状態にすると流れるようになる。下図のように読み出し電圧を0.5V以内に設定すると、セット/リセットを判別できる。書き込みにはVth以上の電圧を加える。
アモーファスのリセット状態ではしきい値Vthを超えるまでは電流は小さい
書き換え回数は実力として10の15乗(1000兆回)程度あると、ニューモニクス・ジャパン EBGジャパン部長の外山大吾氏は言う。実際には10の10乗(100億回)から1、0の抵抗値がばらつき始めるため、量産を考えて10の8乗(1億回)を上限と決めている。NANDフラッシュメモリーは1、0の幅が小さくなっていくため、書き換え回数は少ない。
書き換えサイクルの実力は1000兆回
アレニウスの加速試験では、110℃で10年もつという結果が得られている。活性化エネルギーは2.6eVもあり、劣化しにくいという傾向を示している。
スケーリングのしやすさに関しては、40nmピッチで1平方インチ当たり(6.45cm2)0.4Tビット(400Gビット)、20nmピッチでは同1.6Tビット、14nmピッチでは同3.3Tビットだと見積もっている。セル面積でDRAM、NANDと比較するとDRAMよりは小さく、NANDよりも大きい。ただし、微細化しにくいというわけではないという。
またフラッシュと同様、多ビット/セルの可能性についても研究しており、はっきりとした4値の抵抗曲線をISSCC2008で発表しており、2ビット/セルは可能であることを示している。
ROM的な使い方をするフラッシュと同様、PCメモリーの使い方としてRAMではなくROMとしての応用を考えている。PCメモリーはフラッシュメモリーと同様、電源をオフにしても記憶状態が残る不揮発性メモリーである。しかしフラッシュと違い、読み出し・書き込み速度はずっと速い。PCメモリーをサムスンはPCRAMと称しているが、RAM的な使い方だと、書き換え回数は無限に近いため、実際的ではない。
応用分野としては、フラッシュやDRAMの価格からみて、競争力のありそうなサーバー向けHDDのキャッシュメモリーとしての用途がある。従来のNANDフラッシュよりも高速なため、その効果は大きい。加えて、フラッシュがまだ高価な、コントローラ+ECC内蔵メモリーの置き換えはありうる。位置づけとしては、DRAMではできない不揮発性、フラッシュなどのROMよりも高速であることを利用し、大容量のプログラム用途などもありうるとしている。
売り出す製品にはシリアルアクセス品とパラレルアクセス品の2種類を用意する。シリアルアクセス品は16ピンのSOPだが、パラレルアクセス品は56ピンのTSOPか、64ピンのBGA。特にパラレル品は、余裕を持ってNORに近い性能を提供する。動作温度範囲は0〜70℃、書き換え回数は100万回しか保証しない。NORとの互換性を重視した仕様となっている。これはマージンを十分に持った仕様といえる。