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生産性向上は産業界のためになると信じるISMIが450mm活動状況を明らかに

「200mmから300mmウェーハへ移行するときもそうだったが、難しい問題にぶち当たるとすぐにできない、という人がいるが、エンジニアはイノベーティブな手法を開発し難問を解決した。そのときの難問はリソグラフィのスループットだった。しかし、300mmスキャナーが発明されたことで200mmと同じスループットを手に入れた。何もしないうちからデキナイという人は好きじゃない」。SEMATECH傘下のISMI(International SEMATECH Manufacturing Initiative)の製造技術部門バイスプレジデントのScott Kramer氏は言い切る。

ISMI 製造技術部門バイスプレジデントのScott Kramer氏


300mmから450mmウェーハへの移行に対して疑問視する声は強いが、450mmウェーハを使った製造プロセスはそう簡単には構築できない。しかし、「熱意のあるエンジニアは必ず解決する」と同氏は語る。450mmウェーハへの移行を推進するISMIと、反対していたSEMIという対立軸の中で、ISMIが推進してきた450mmウェーハ計画の進展状況が明らかになった。SEMICON Japan開催時期に合わせて幕張メッセで450mmプロジェクトの進展状況報告会が開催された。

現在、インテルTSMCサムスンの3社が450mmウェーハへの移行をコミットしており、ISMIは各社のコラボレーションを推進するという立場になっている。ISMIが450mmを推進する根拠は、これまでの半導体が歩んできた歴史からわかるように、大口径化はコストダウンにつながってきた、半導体産業はこれからも成長する、生産性向上は欠かせない、技術的な問題は必ずそれに挑戦して解決してきた、という4つの理由からだ。特に、生産性向上はマストである。ISMIのフィロソフィとして、生産性向上を加速することであり、流れに任せて徐々に生産性を上げていくという立場はとっていない。

ISMIは、テストウェーハを作り装置を示し、最初のウェーハを製造してみること、そのためのロードマップを作る。2009年に450mmテストウェーハを作成し300mmと同等に作れること、32nmの能力を持つプロセスおよび検査装置を2010~2012年で作ること、2012年以降にICメーカーのパイロットラインに導入できるような量産準備装置(22nmまで拡張可能)を作ること、としている。このようなタイムラインで進めていけばコストを最小にできるという。


Development & Technology Intercept Targets for 450mm


そのテストウェーハは、まず多結晶シリコン、次に単結晶シリコン、次の段階で、酸化膜をパターニングした単結晶シリコンを使う。

次に、EPM(装置性能の尺度)を策定する。これは450mmの装置を開発するのに当たり、重要なプロセス性能を表す尺度を決め、試作した装置の評価に使えるようにする。まず、どの装置を試作すべきかサプライヤが優先順位をつける。2010~2012年に試作する装置に使えるようにする。

その尺度を決めるために次の手順で行う。ISMIがまず装置をリストアップ、メンバー企業が装置の優先度をつける、それを元にISMIが尺度と測定方法のたたき台を作る。メンバー企業はそれを修正、サプライヤと議論し、最終的に尺度と方法を決め公表する。

EPMとしての条件は、全般的に450mmでも半導体産業が成長できるようなコスト構造を維持すること、境界条件として300mm装置よりも生産性が高いこと。ITRSの生産性向上計画によれば、300mmウェーハの生産性は、2008年時点における1時間あたりのスループットを基準に毎年4%向上していくとしている。

その他、一般的にEPMに要求されることとして、450mmウェーハのカセットはもはや持ち運ぶことをせず、PGV(Personal Guided Vehicle)を利用して、FOUPの移送やロード/アンロード作業をする。さらに450mm装置は、300mm装置の小規模改良でできるようにするため、大きすぎないように設計する。


450mm Person Guided Vehicle (PVG) Guidline


装置全部の性能尺度を決めるのは2009年前半までに完了する。そのためのサプライヤ向けワークショップを2009年第1四半期に計画している。そして、450mm試作装置のテスト手法の開発、450mmテストウェーハの作成を経て、2010年以降に試作装置を完成させる。

これまでのISMIの主な活動は、ウェーハバンク方式をとり、ウェーハを管理し、それを使った実験をサポートしている。まずシリコンウェーハを購入し、ISMIが管理する。サプライヤはそのウェーハをISMIから借りて実験データを採る。その実験データをISMIは共有する。現在、厚さ925μm+/-25μmの多結晶Siウェーハを150枚ストックしている。厚さを775μm、825μm、875μm、1mmを変えた多結晶ウェーハもあるが、少ししかない。単結晶ウェーハもまだ少ししかないが、2009年Q1には大量に入手可能になる。現在、155枚のウェーハを20社に貸し出し中だとしている。

まずウェーハの機械的な特性を測定評価するため、比較的製造しやすい多結晶シリコンウェーハを使い、振動や加速度の影響を調べ、出荷前後で特性変化のないことを確認する。データを解析し、SEMI標準のシリコンスペックにフィードバックする。

例えば、重力の影響によるたわみを多結晶ウェーハで測定したところ、ウェーハ支持治具とたわみとの関係は明確にあるが、厚さとの関係は少ないことがわかった。また、単結晶ウェーハでも同様な傾向はあるが、絶対値はやや少なかった。

ウェーハを使い、ロードポートやウェーハキャリヤ、ロボット、EFEM(Equipment front-end module)、PGVなどに使えるかどうかという評価も20社以上と検討している。名前の公表を許す企業には、Asyst Technologies、Brooks Automation、CyberOptics、Entegris、Fixeon、Genmark Automation、Gudeng Precision Industrial、H-Square、Nikko、SUMCOがある。


EFEMS, Robots, Loadports


450mmはESH(環境・安全・健康)問題にも最初から取り組む。450mmへの移行は、環境問題を全面的に見直すよいタイミングだとし、エネルギーや水、薬品、材料について検討していく。その結果を300mmにもフィードバックし適用していく。

少量生産のデバイスの生産に450mmウェーハを使う意味は今のところない。このため、「みんながみんな450mmへと移行する必要はない。今でも300mmウェーハを使わずに200mmウェーハでビジネスし利益を上げている企業もある」と同氏は450mmを無理やり押し付けるわけではなく、企業の意向を尊重する。「あくまでも450mmへのフィージビリティや経済性を検討し、いろいろな企業と話し合い、よく聞き、理解に努め、プランを立てることが大事だ。いろいろな意見があり、450mmへの移行に全員反対でも賛成でもない。SEMIともSEMIメンバーとも直接話し合いをしている」と今の状態を説明する。「とはいえ、生産性向上は産業界のためになる」と同氏は信じている。


(2008/12/09 セミコンポータル編集室)

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