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グラフィックス、画像認識などIPを強化したデュアルコアSoCをルネサスが開発

ルネサス テクノロジは、グラフィックスや画像認識機能に加え、PCI ExpressやシリアルATAなど高速シリアルインターフェースを充実させた、デュアルコアでスーパースケーラ構造(2命令同時発行)のプロセッサコアをもつ、車載エンターテインメント向けSoCの基本アーキテクチャを開発した。カーナビと車両制御を1つのSoCで制御できる高級車種から参入する。このSH7776(SH-Navi3)ほど高集積なチップを使ったカーナビはまだない。

SH-Navi3仕様概要


ルネサスは、昨年、スーパースケーラプロセッサを2個搭載した、最大1920MIPSの車載用デュアルコアプロセッサ(SH7786)を発表したが、今回はそれに画像認識処理機能やグラフィックス回路などを1チップに集積したもので、ルネサスの位置づけはSoCである。

搭載しているグラフィックスコアは2種類ある。一つは英イマジネーションテクノロジーズ社の3次元グラフィックスのPowerVR SGXコアで、シェーダーエンジンを搭載しているため、光の陰影や光沢などの質感も表現できる。今回のSH-Navi3の前の世代では、イマジネーションのIPコアはPowerVR MBXだったが、今回のSGXシリーズはポリゴン性能が2倍に上がっているという。

もう一つのグラフィックスコアは、ルネサスが独自に開発した2D、3Dグラフィックスプロセッサのコアで、カーナビ地図の3DオブジェクトやGUIのグラフィックスアイコンなどを表示するのに使う。最近ではVistaやiPhone、Windows 7などの3Dグラフィックスで作られたアイコンがよく利用されてきている。

画像認識処理用のIPも搭載する。カメラ画像のデータをリアルタイムで認識する。白線検出や、先行車認識追跡に必要な外界の環境を認識するプログラムをリアルタイムで同時に実行できる。さらに搭載している歪補正モジュールによって、魚眼カメラで撮影した画像を補正していわゆる5~10m上から俯瞰するといったアラウンドビューモニター画像を作成できる。

このチップにテレビやDVDプレイヤー用IC、動画や音楽圧縮伸長ICなどを外付けして、画質改善などの処理もできるようにするため、533MHzのDDR3-SDRAMインターフェースを2本集積しており、最大4.27Gバイト/秒のデータ転送が可能である。PCI Expressインターフェースの専用IOも搭載している。さらにハードディスク装置と接続するためのシリアルATAインターフェースも備えており、1.5Gビット/秒のデータ伝送が可能である。

デュアルコアの使い方は前回のSH7786と同じように、対称型と非対象型のコアがあり、リソースの有効利用から共有メモリーを使うが、非対象として二つのコアを使う場合、たとえば一つのコアにカーナビの地図描画、もう一つのCPUコアに走行アシスト機能をそれぞれ受け持たせることができる。その場合の共有メモリーの内部には関係しないCPUコアからはアクセスできないようにアドレス制限をかけている。

QNXのNeutrino RTOSやMicrosoftのWindows Automotive、Linux、T-KernelなどのOSに対応する。65nmCMOSプロセスを利用して製造、パッケージには653ピンのBGA(25mm角)を採用している。4月からサンプル出荷、2010年1月から月産2万個で量産開始、2013年1月から10万個/月で増産する計画だ。

開発環境としては、オンチップデバッギングエミュレータのE10A-USBマルチコア対応エミュレータを用意するほか、システム開発向けのリファレンスデザインも準備していく予定だ。ルネサスは、現在62社のSH-Naviコンソーシアムを組織化しており、開発ツールやソフトウエア開発の協力支援メーカーと協業している。1年前は50社程度だったから1年で10社以上新たに加入したことになる。


組み込み車載情報システム用製品展開


今後、このハイエンドチップをベースに下位展開を図り、高級車両から小型車へと幅広いニーズにも対応していく。


(2008/01/21 セミコンポータル編集室)

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