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アドバンテスト、SiC/GaN向け高電圧パワー半導体テスターを開発

アドバンテストは、ダイシングフィルム上でパワー半導体をテストできるシステムを開発した。数百V、数十Aという高電圧・大電流を扱うパワー半導体では、安全性をしっかり確保することが何よりも最優先。このため、テスター装置の経験豊かなイタリアCREA(Collaudi Elettronici Automatizzati S.r.l.)社を2022年8月に買収、SiCやGaNなどのワイドギャップ・パワー半導体のテスターに進出した。

HA1100 / アドバンテスト

図1 SiC/GaN向け保護回路搭載パワー半導体テスター 出典:アドバンテスト


パワー半導体はSiのIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)からSiCやGaNを使ったMOS/MIS FET(ワイドギャップ半導体トランジスタ)への移行がいよいよ普及期に入り、1200V や1600Vといった高電圧のパワー半導体デバイスを破壊せずに測定しなければならなくなってきた。これまでのような400V系のEV(電気自動車)システムから800V系のシステムへと移行するためだ。特に急速充電に対応するためには高電圧に対応する必要がある。特に充電スタンドでは急速充電はEVの普及に欠かせない。例えば800V系以上なら10分で満充電の80%まで充電できるといわれている。

アドバンテストは、CREAのテスター「MTシリーズ」に、アドバンテストが得意なダイ・プローバの新製品「HA1100」を組み合わせた統合テスト・セル・ソリューション「KGD Test Cell」を開発した。完成したウェーハをダイシングしてフィルムなどの支持フィルムに載せたまま、チップごとに数百Vを印加してDC特性やスイッチング特性などを測定できる。

高電圧・大電流を流すパワー半導体の測定には危険を伴うだけではなく、デバイスや測定器を破損するリスクもある。例えば誤って回路を短絡させたときに異常な大電流が流れ、半導体デバイスを破壊し、さらにプローブや回路の一部を急な発熱で溶かしてしまう恐れもある。そうなると測定装置の設備を修理しなければならないためラインを止めなければならなくなり、稼働率が大幅に落ちてしまう。

CREA社はPCI(Probe Card Interface) Technologyと呼ぶ特許取得済みの技術がある。これは測定器内部で異常電流を検出するとデバイスを遮断して保護する技術だ。ダイシングした後のダイの状態でテストできるだけではなく、ダイを複数個基板に載せて基板の試験、さらにその基板をモジュールに実装したモジュールの試験も可能になる。

アドバンテストによると、テスト装置と、DUT(Device Under Test)をテスト装置に搬送するハンドラーとはこれまで別構成になっており、パワー半導体ではユーザーが合わせていたという。この新製品「HA1100+MTシリーズ」では、テスト装置とハンドラーを一体化しているため使いやすい。加えて、一体化してもダイごとに測定できるため、合格したダイと、規格外れや不良品のダイとの混在を防ぐことができるため。モジュール試験での歩留まり向上も期待できる。

HA1100は2025年第2四半期に世界的に販売する予定となっている。

(2024/12/25)
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