Keysight、最高帯域幅1GHz、14ビット分解能の統合オシロを137万円台から
Keysight Technologiesは、周波数帯域200MHz~1GHz、サンプリングレート3.2Gサンプル/秒という2チャンネル/4チャンネルのオシロスコープ(図1)を137万円から発売した。オシロスコープといってもFFTを掛ければスペクトラムアナライザになる上、信号発生器やロジックアナライザ機能も内蔵しており、統合測定器ともいえるが、分解能が高くノイズが極めて低い。

図1 Keysightの新型統合オシロスコープ「InfiniiVision HD3シリーズ」 出典:Keysight Technologies
発売したオシロスコープ「InfiniiVision HD3シリーズ」は、帯域が最大1GHzもありながら信号の垂直分解能が14ビットもある。ノイズフロアはわずか50µV(二乗平均平方根)しかない。長時間の波形をキャプチャーできるようにロング・メモリを使っているため、高速な過渡応答の解析に優れている。
広帯域と高分解能を両立させるため、専用のASICを開発したという。ただし、その中身については日本法人でさえ話をしてくれないという。Keysightの前身であるAgilentとその前のHewlett-Packard時代から同社は半導体を自社開発している。測定器メーカーは測定すべきDUT(被測定デバイス)よりも高性能でなければならないため、半導体の自社開発は欠かせない。
Keysightは、以前開発した「Infiniium UXRシリーズ」帯域5GHz〜110GHzの超ハイエンド製品は1億円もしたが、今回の製品は「最先端のフロントエンド技術を、今回のHD3シリーズに持ってきた」と同社キーサイト・グローバル・マーケティング等担当日本マーケティングマネージャーの岡崎淳起氏は語る。ASICはそのために新規開発し、低コスト化を図ったという。
信号強度の分解能が14ビットのAD-コンバータを開発したことで、従来の12ビットよりも4倍(2ビット分)細かくしたことでギザギザの少ないスムーズな波形を観測できるようになった。熱雑音に相当するノイズフロアが従来の半分と減らしたことも特長となっている。このため、5mVと小さな信号を観測できた。従来製品だと70mVの信号がやっと見えたというデモを行った。ノイズフロアを小さくするため、フロントエンドのアンプの初段トランジスタが発生するノイズを低く押さえ、さらに増幅後の信号が干渉を受けないように工夫した。無信号でのノイズレベルが従来の「3000G Xシリーズ」では277µVだったが、今回のHD3シリーズではわずか31.5µVしかない。
また、従来機の25倍も容量のあるロング・メモリを使っているため、汎用のオシロスコープだと100Mサンプル/秒で10Mポイントしか取れないが、今回のHD3シリーズだと800Mサンプル/秒で80Mポイントも取れるようになった。また、タイムスタンプ付きのリスト表示(いつ時点の波形化を示す)も可能になった。さらに波形更新レートは130万波形/秒と速い。
図2 フォールトハンター機能 過渡的な異常信号をキャッチする 出典:Keysight Technologies
メモリ容量を増やしたことで、フォールトハンター機能と呼ぶ、発生頻度の低い異常信号をキャッチできる機能も設けた。図2では正常のパルス間に異常な過渡パルスが入るとそれを検出している様子を示している。また、いつ過渡的なパルスが入ったかがわかるため、例えば退社時間に測定器を動作させておき、翌日それをキャッチしている状況を見つけることもあるという。
図3 ソフトウエアでアップグレードできる 出典:Keysight Technologies
この統合オシロスコープは、さまざまなスペックの製品を選択できるだけではなく、購入後のアップグレードも可能である(図3)。例えば最初に帯域幅200MHzの製品を購入した場合でもソフトウエアによって1GHzの帯域幅にアップグレードできる。最初から1GHzのチップを搭載しているからだという。最も安価なバージョンは帯域幅200MHzで2チャンネルのみの製品で、販売店での希望価格が137万円からとなっている。