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アドバンテスト、テスターの販売からクラウドによるテスト分析業務へ拡大

アドバンテストは、テスターの製造・販売だけではなく、クラウドベースでテストしたデータを収集・整理・分析するようなコンサルティングビジネスを今後育てていくことをSEMICON Japan 2020で発表した。2020年7月に半導体製造のビッグデータを手掛けているPDF Solutions社と提携、そのデータ解析技術を利用する。

ADVANTEST Cloud Powerd by PDF Exensio

図1 アドバンテストのクラウドACSを利用してテストデータから装置の稼働状況まで半導体製造に欠かせない情報を共有・管理・保存・分析する仕組み 出典:アドバンテスト


アドバンテストが発表したAdvantest Cloud Solutions(ACS)は、半導体チップの設計評価からウェーハ製造、最終ウェーハテスト、アセンブリ後のパッケージングした後の最終テスト、さらにはチップをボードに組み込んだ後のシステムテストに至る全てのテストをクラウド上で管理し、データを共有し解析するというもの(図1)。

半導体の全ての工程ではさまざまなテストを行いデータを取るが、これまではそれぞれのデータがサイロのようにバラバラに置かれており、相互の関連が得られず解析しにくかった。そこで、半導体設計から製造の全ての工程においてデータをクラウドに上げ共有し、分析に活かそう、とアドバンテストは考えた。

もし市場不良が発生し、チップに何かしらの原因がありそうなことがわかった時、どの工程でどのような履歴があったのか、を簡単に把握できる。その履歴と他の正常品との違いを見つけることでどの工程が怪しいのかを推定できる。ある程度の数量の故障サンプルが集まれば、AIにかけて該当工程を割り出せる。要は、さまざまなデータの統計処理と相関を求めることで故障解析が可能になる。これまでのバラバラのサイロのデータでは、そのような場合に対処するには時間がかかりすぎていた。

このためにビッグデータ解析に定評のあるPDF Solutions社と2020年7月に提携合意に達し、PDF社と協力してACSを構築し始めた。PDF社が持っているデータ処理プラットフォームPDF Exensioを利用する。これまで、アドバンテストが持っているいくつかのソリューション(ACS EM360、ACS Smart-Insight、ACS TE-Cloud)に、PDF社の持っている処理・解析ツール(PDF Exensio Process Control、PDF Exensio Test Operations PDF Exensio Mfg. Analytics)を追加することで(図2)、全ての工程でのACSがシームレスにつながるようになる。


ADVANTEST Cloud Powerd by PDF Exensio

図2 アドバンテストのテストデータとPDF社の解析ツールを組み合わせクラウド上のPDF Exensioでデータ解析する 出典:アドバンテスト


これらのツールをシームレスにつなげると、半導体の全工程におけるデータを共有できるため、システムレベルで見つかった何らかの不具合に対してフィードバックをかけたり、ある工程での状態をフィードフォワードしたりすることによって、事前に良い方向に設定することができるようになる。PDF社のトレーサビリティ機能を利用すれば、偽物チップではなく本物のチップかどうかを簡単に見つけられるだけではなく、どの工程で不具合が起きたのかを特定できる(図3)。


Cross-Supply Chain Feed-Forward/Back Capability

図3 システムレベルでの不具合があればすぐにフィードバックして解析し、フィードフォワードで最適条件を提供する 出典:アドバンテスト


SEMICON Japanにおいてアドバンテストは、クラウド利用の新しいサービスだけではなく、従来のSoCテスターV93000や、汎用テストプラットフォームT2000のグレードアップなどに関しても発表している。半導体テスターの王者らしい面といえる。

今回のV93000 EXA Scaleは、半導体デバイスの更なる高集積化に備えたモノリシックなSoCや、チップレットを集積する2.5/3DパッケージSoC向けのテスターである。今後、7nm/5nmプロセスのLSIチップだとテストベクトルがさらに増えるだけではなく、ヘテロプロセッサのテストや回路規模に応じた処理の高速化も必要になる。そこで、従来8チャンネル分のプロセッサのテストを16チャネル分に拡張した。SoCは低電圧ながら大電流になるため1000Aにも対応できるモジュールを用意した。さらに、テスターのオーバーヘッド時間を削除しデバイスごとのテスト時間にした。その心臓部となるのが自主開発のテストプロセッサカード(図4)。である。


High Integration Technology - 2.5D Integration

図4 テスターの心臓部となるプロセッサチップカード 出典:アドバンテスト


T2000では、CMOSイメージセンサ専用のモジュールとデジタルスキャンモジュール、電源モジュールを新製品として開発している。CMOSイメージセンサをテストするためのモジュールでは、センサに光を当てて各画素の欠陥を浮き彫りにすることでイメージセンサの良否を判定する。最大4.8G bpsの速度でイメージをキャプチャーできる。モジュール1枚当たり4個のセンサをテストできるので評価解析や少量の測定が可能で、スマートフォン用のセンサのように量産テストする場合にはT2000に16枚のモジュールを挿入することで最大64個のCMOSセンサを同時にテストできる。

デジタルモジュール500MDMは、空冷で最速の500Mbpsでスキャンし、メモリの深さは最大32Gビットとなっている。スキャンメモリは8倍、パターンメモリは4倍と大きくし量産に備えている。

また、電源モジュールDPS32Aは32チャンネルで1チャネルあたり最大1Aに対応する。主にディープスタンバイの電流500nAを測定できる。しかも単なる測定に留まらず、初期故障のスクリーニングにも使える。パルス電流IDDQの初期値と最終値との差Δを連続的に測定しその周波数スペクトルを調べることで、初期故障になりそうなチップを見つけ、除去する。

(2021/01/05)
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