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Keysight、横からの飛び出しも評価する79GHzドップラーレーダー測定器

計測器メーカーのKeysight Technologyは、対象物との距離を測るクルマ用ドップラーレーダーの測定器を拡充した。これからの79GHzのドップラーレーダーをテストするために3対の無線リモートヘッドを設けている。リモートヘッドは、距離をフレキシブルに変えられるヘッド1個と距離を固定したヘッド2個からなり、横からの飛び出しを評価できる。

図1 Keysightがレーダーをテストする測定器を発売 送受信ポートを最大3個まで取り付けられるE8718A 出典:Keysight Technologies

図1 Keysightがレーダーをテストする測定器を発売 送受信ポートを最大3個まで取り付けられるE8718A 出典:Keysight Technologies


Agilent Technologies(その前はHewlett-Packard)からスピンオフしたKeysightは、元々HPをルーツに持つ計測器メーカー。それだけにレーダーのような高周波計測にはめっぽう強い。クルマはV2X(Vehicle to everything)をはじめとしてe-Callサービスやレーダー衝突回避など無線通信技術を使うことが多い。通信技術だけではなく、インフォテインメントや充電制御、コンバータ・インバータ、ECU(電子制御システム)、EV(電気自動車)の充電、車載Ethernetなどクルマに関する計測ソリューションは、これまで90種類以上販売してきたという実績を持つ。

クルマのテストは、実機を製作する前に実験室内でできる限り行うことで無駄なコストを回避する。半導体製造でもできるだけ前の工程でテストを行い、不良品を流さないことと同じ思想だ。例えば急速充電器のテストでは、EVに搭載されるバッテリの300~350Vよりも高い電圧で充電するため、最大1500V、最大600Aもの電力容量をもつ充電ステーションを模擬して実験室内でテストする。

今回発表するのは、レーダーターゲットシミュレータと呼ぶ測定器で、レーダーモジュールの評価に使われる。レーダーはクルマの前方にある対象物との距離と速度を測定する無線機だが、前方のクルマとの距離が例えば100メートルあるとしてそれが正確に測定されているかどうか、そして300メートル先から時速100kmで近づいてくるクルマを正確に認識しているかどうか、などを測定・評価する。

ただし、実験室内で100メートルを前方のクルマを置くことは現実的ではないため、それをアッテネータなどで減衰させた信号で評価する。装置としては1メートル前方に置くが、レーダーとしては100メートル先に相当するようにシミュレーション(エミュレーション)する。また相対速度は周波数を変化させることで模擬する。前方のクルマと自分のクルマとは走行している速度が違うため、ドップラー効果によってレーダーの周波数は変化する。クルマが近づいてくるとドップラー効果で周波数は高くなり、遠ざかると周波数が下がってくる。つまり、周波数の変化は相対速度の変化に対応するため、前方のクルマの速度を周波数の変化で模擬する。

現実には量産ラインにおいて、200メートル先の対象物を検知できるかどうかのラインを実際に作ることは現実的ではないので、この測定器で模擬することになる。

クルマのレーダー技術は、従来77GHzで帯域1GHzから79GHzで帯域4GHzへとより広帯域へと進化してきた。広帯域になれば距離の分解能が上がるためだ。帯域が1GHzでは距離分解能は1メートル程度、4GHzになると30cm程度に高まる。Keysightでも77GHzから79GHzへの進化に伴い、測定器も進化させてきた。最大79GHzの測定器E8708Aは、77GHzと79GHzの両方をテストでき、測定範囲も4メートルから300メートルまで模擬できた。さらに速度も最大時速300km/時まで対応できた。

しかし、E8708Aはレーダーの送信・受信ポートが、測定器の下から出ており、量産ラインでベルトコンベアなどに乗ったレーダーモジュールを測定するために固定されていた。

そこで今回、レーダーのミリ波を送受信する無線リモートヘッドと測定器部分を分離し、レーダーモジュールがどの向きにあっても測定できるようにした。開発でも使うことができる。このリモートヘッドから測定器までの同軸ケーブル長は0.5メートルと2メートルの2種類を用意した。リモートヘッドは新開発であり、ヘッド内部で周波数変換し、周波数を落とした後に測定器へ接続している。

この新製品E8718Aはリモートヘッドを旧製品の1個から3個へと増やした。3個のリモートヘッドの内、1個は前の製品と同様、距離を可変できるが、他の2個は距離を顧客から聞き工場内で設定して固定するという仕様である。これは開発時を考慮して、あるターゲットとの距離と速度を測定しながら、別のターゲットが近づいてくるというシーンに対応する。また3車線を同時に検出することもできる。


Multi-target use case - fixed distance

図2 3つの送受信ヘッドで対象物との距離や速度を評価するだけではなく横からの飛び代にも対応する 出典:Keysight Technologies


量産時では、図2に示すように距離をダイナミックに可変できるリモートヘッドをあるターゲットにまっすぐ向けながら、残りの2個のリモートヘッドをそれぞれ30度の角度を付けて固定距離でターゲットからのレーダー信号を受けることで30度という固定した角度になっているかどうかを正確に評価できる。これはクルマの横からの飛び出しにも対応できるようにするために使う。


Multi manufacturing, using sensor forecast...

図3 レーダー市場は成長が期待される 出典:IHS Markit、Keysight Technologies


レーダー市場は、今年、新型コロナウイルスで自動車の生産が大きく落ちたため、今年の販売額は落ちるものの、長期的には伸びていくことは間違いない(図3)。レーダー市場のニーズは高い。今回の製品は、今後の79GHzレーダーの開発や量産にもフレキシブルに対応できることから、レーダー市場の伸びへの期待は大きい。


(2020/10/14)

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