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NI、TEL、FormFactorなど4社が5Gミリ波用ウェーハテスタを開発

第5世代の携帯通信5Gのサービスが始まったものの、まだサブ6GHzの低い周波数でのスタートとなった。National Instrumentsは、本命のミリ波での半導体RFチップをテストするため、東京エレクトロン、FormFactorReid-Ashmanと組み、5GのRFチップのウェーハをテストできる装置を開発した(図1)。

図1 National Instrumentsが3社とコラボして作製した5Gミリ波用RF半導体テスタ

図1 National Instrumentsが3社とコラボして作製した5Gミリ波用RF半導体テスタ


5Gで日本が遅れているという見方は全くの間違いで、本命はミリ波でありこれはまだサービスが始まっていない。サービスが始まった5Gは6GHzよりも低い周波数の3.7GHzや4.5GHzのサブ6GHz帯を使っているため、データレートは最終目標の20Gbps/10Gbpsにはとても届かない。せいぜい1〜2Gbpsどまりである。5G通信の本命はミリ波帯であり、現在のサブ6GHzはそのためのつなぎにすぎない。NTTドコモやKDDIなどの技術は、世界をリードしているといっても過言ではない。

NIは半導体テスタであるSTSを提供、東京エレクトロンはウェーハステージをチップごとに動かすハンドラ、FormFactorはプローバを開発、Reidはウェーハとテスタとのインターフェースを担当し、ウェーハの平坦性やインピーダンス整合を含むマニピュレータを作製した。

次世代の5Gミリ波は24GHz帯と28GHz帯を利用することが3GPPで決まっている。NIらが開発した5Gミリ波用のウェーハテスタでは、最大60GHzまで動作可能なプローブティップをFormFactorが開発した。円盤状のプリント基板の中心にプローブティップを置き、そこにつなぐ配線を等距離に設計している。配線距離は可能な限り短くし、ノイズや反射、定在波の影響を極力排除した。

TELが担当したウェーハステージの精度は±1.8µmで、ボンディングパッドにプローブする。将来は±0.8µmの精度が可能だとしている。チップごとにウェーハステージを動かし、全てのチップを測定する。テストするウェーハは200mmと300mmの2種類。このテスタは現在、経済的に見合うシステムだという。ただし、将来、スマートフォンにミリ波が使われるときにRFチップは、複数のチップを同時に測定しなければならない。このためのプローバのプリント基板の設計が難しくなる。

また、ミリ波のように周波数が高くなると、直線性が強くなるためその電波は360度にわたって飛ばすことができない。このため、基地局から端末(スマホ)との通信には、ビームフォーミング技術を使って直線的な向きを端末ごとに変えながら送受信しなければならない。そのためにアンテナは1辺が2mm以下のアンテナ素子を多数並べ、それぞれの信号の位相と振幅を調整し一つの方向を向くようにする必要がある。このビームフォーミング技術はかつてレーダーがグルグル回転する方式から平面アンテナに移ったように位相シフト技術そのものである。

ミリ波のRFチップにはアンテナに送る信号の振幅と位相を変えてビームフォーミングを行う。RFチップのビームフォーミング信号を出すテストも行う。アンテナにつながるRFチップごとにその位相と振幅を変えるため、コンタクト方式のプローバでは傷つく恐れがある。このために将来はOTA(Over the air)のようにワイヤレスでテストする方式も研究が始まっている。特に、パッケージ上にアンテナ素子を構成するようになると、OTAは必須な技術になる。

(2019/05/22)
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