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半導体後工程でのIndustry 4.0をシンガポールInfineonが明らかに

Infineon Technologiesがシンガポールにある同社の後工程工場のIndustry 4.0すなわちスマート工場化を進めていることを明らかにした。同社シンガポール工場長でバイスプレジデントを務めるLaurent Filipozzi氏は、スマート化とデジタル化を進めることによって生産効率を上げるだけではなく、市場への出荷期間が短くなり、管理もしやすくなったとしている。

図1 Infineon Technologies シンガポール工場長兼VPのLaurent Filipozzi氏


Infineonは、工場内のスマート化だけではなく、サプライチェーンの統合によってエンドツーエンドで可視化する試みを進めており、将来は世界の全工場のデジタル化、バーチャル化に向けて、着実にIndustry 4.0を進めている。半導体工場では、特に前工程のプロセス工場で一部Industry 4.0がすでに導入されているが、後工程は遅れていた。

半導体のプロセス工場は、自動化や情報の統合化などIndustry 4.0はどの分野の工場よりも進んでいる。しかし、プロセス工場は、拡散、アニール、現像、洗浄、エッチング、デポジションなど何度も往復する工程ばかりで、流れ作業のようにベルトコンベアには乗らない特殊な工場であり、他産業へ展開することが難しい。しかし、後工程は比較的流れ作業に乗る工程順に進む。このため他産業への展開が可能な工場である。

Infineonシンガポール工場が進めている(まだ終わりではない)コンセプトは、サプライチェーンの統合により、サプライチェーン工程をリアルタイムで可視化を図っている(図2)。これを水平展開と呼んでいる。そして、工場そのものの統合化に関しては、自動化・通信接続・制御化製造を進めており、シンガポールが最先端の後工程製造のパイロット工場だ、とFilipozzi氏は言う。さらにデジタルデータの統合により、予防保全から予測分析へとデータ分析を進めている。


図 Example: Smart factory @ Infineon Singapore Principles of Industry 4.0 applied

図2 サプライチェーンは水平に、工場の自動化は垂直に 出典:Infineon Technologies


自動化されたこの工場では、「人」が最も重要で、人のスキルが問題解決に注力している段階だ。また作業工程に必要なHMI(ヒューマン-マシン・インタフェース)も重要だという。もちろん、技術的に優れている人は、正しい判断ができる。それ以上に、作業の速さ、俊敏性(アジャイル)なビジネスマインドを持つことが重要とする。長い間同じ会社に勤めていると、経営層も含めて変更することに抵抗を示す人は多いが、マネジメントを変えることと、学び続ける態度が重要だとFilipozzi氏は言う。

具体的な事例として、二つ紹介しよう。一つは外観目視検査、二つ目は工場の運営そのものである。外観検査装置(図3)は、従来はマニュアル(図3の左)で行っていた。これを半自動(図3の中央)に変えた。半自動方式では合否判定を行うアルゴリズムを決めており、これだけでもミスは減少するため品質が向上した。人員も数名の作業者から一人ですむようになった。さらに進んだ完全自動化ラインでは(図3の右)機械学習(AI)を使って良品のサンプルと不良品のサンプルを判定するためのアルゴリズムを利用する。ここでは、ロボットが作業し人間は作業そのものにはタッチしない。


図 Manual Inspection/ Advanced Inspection / Tomorrow's Manufacturing

図3 外観検査装置のスマート化を進める 出典:Infineon Technologies


一般的な作業工程では、例えばパッケージを終えた半導体ICを大量に運んだり、検査したりするのは人間が行ってきた(図4左)。それが複数の工程を一つのチームがこなすようなセル方式に変わり(図4中央)、作業者のスキルアップにつながっていた。作業者は装置が故障した場合のトラブルシューティングもできるようになり、チームワークのシナジー効果が上がった。さらに工程をネットワークで結び(図4の右)、技術への親和性を高め、賢くて安全な作業となり、人間とロボットは協力することになる。


図 Traditional Factory Worker / Super Team / Future Ready Workforce

図4 作業工程はこれまで手作業でしかできなかった工程にAIを導入し自動化する 出典:Infineon Technologies


Infineonは、自動化できるところから自動化し生産効率上げてきたが、いまだに手作業でやらざるを得ない工程を自動化して効率化しようとしている。さらにその先はどこに向かうのか。基礎固め(foundation)から、Industry 4.0の始まり、さらに進化した次世代デジタルトランスフォーメーションへと向かうロードマップを描いている(図5)。シンガポール工場では、それぞれ2012〜2015年、2016〜2017年、2017〜2020年に実現した、あるいは実現する方向で展開している。しかし、一般的な工場やInfineonの他の工場では、まだ基礎固めのところも多いという。


図 Competencies strengthen digitalization, which reinforces competitive strength

図5 基礎固めからデジタルトランスフォーメーションに至るロードマップ 出典:Infineon Technologies


どのレベルでも通信接続するため、セキュリティを十分に保たなければならない。これに対してInfineonはセキュリティを上げる認証機能を持つマイクロコントローラ「OPTIGA」ファミリを持っており、工場内で制御するPLC(Programmable Logic Controller)やセンサモジュール、アクチュエータなどの制御回路にこのマイコンを搭載している。また、工場内のITシステムは、物理層である生産機械の制御レイヤーから、それらのデータをまとめて管理するITレイヤー、さらに上位のネットワークからデータセンター(プライベートクラウド)レイヤーまですべてのレイヤーに使う「OPTIGA」ファミリを準備している。

これらのチップやノウハウを自社の工場のIndustry 4.0だけではなく、他社の工場にも展開していく予定である。

(2018/02/01)

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