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新トランジスタ測定に向いたプローブやアナライザ

半導体の基本は、やはりトランジスタ。トランジスタの性能を正確に測ろうとすると実はかなり難しくなってきている。オフからオンへの立ち上がりの速いSiCやGaNなどが登場、周波数帯域が拡大した。半導体は太陽電池やディスプレイTFT、ReRAM/PCRAMなど、パラメータ測定が必要な産業が拡大した。Tektronixはそのような性能・産業に向けた半導体測定器をリリースした。

図1 高速・高耐圧テスタのプローブIsoVu オシロスコープの前にある装置がコントローラで光ファイバ(赤い線)を経て右のセンサヘッドからプローブを当てる 出典:Tektronix

図1 高速・高耐圧テスタのプローブIsoVu オシロスコープの前にある装置がコントローラで光ファイバ(赤い線)を経て右のセンサヘッドからプローブを当てる 出典:Tektronix


Tektronixがリリースした測定器は2種類ある。一つは、SiCやGaNなど新しい半導体材料を使ったパワートランジスタの高耐圧・高速のドライバ測定器用のプローブ「IsoVu」である。高電圧のトランジスタを高速で立ち上げるとノイズが乗り正確な立ち上がり波形を観測できない。GaNやSiCが高速・高耐圧が大きな特長であるが、差動信号のようにグランド接続されない場合には、信号波形にノイズが重畳され、正確な信号波形を把握できない。この新型プローブは、光ファイバでノイズを遮断しているため、1000Vの信号を1GHzで動作させても劣化しない。

もう一つは、トランジスタのDC/ACパラメータを測定するパラメータアナライザだが、トランジスタの初心者でも短時間でI-VカーブやC-Vカーブを一度に測定できる。MOSトランジスタの4端子を測定器に接続すると、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を見ながら設定・測定を簡単にできる上に、配線を複雑につなぐ必要は全くない。

最初の製品「IsoVu」をまず紹介する。SiCやGaNなどのパワートランジスタの最大のメリットは高耐圧で高速、低損失という点だが、高電圧のスイッチング波形を見ることがこれまでは不可能に近かった。というのは、従来のプローブでは急峻な立ち上がり波形を見るために必要な周波数帯域が不十分、CMRR(同相信号除去比:差動入力のような二つ信号に同時に載るノイズなどを除去する能力)が高周波になるほど劣化する、といった問題があった。例えば、1000Vの交流信号は2MHz辺りから低下していき100MHzでは1V程度に落ちていた。また、CMRRは直流では120dB以上あっても周波数と共に遮断能力は落ちてゆき、100MHzではわずか20dBしかなくなった。この結果、高周波になるほどノイズが現れ、正確な信号を測定することが難しかった。

IsoVuは、プローブの先端はこれまでと同様MMCXコネクタを使って立ち上がり波形を測定するのだが、電気ケーブルが短く、その電気信号を光に変換する。このため電気-光変換器の入ったセンサヘッドから測定器までの光ファイバケーブルは3m、10mと長くてもノイズの影響を受けない。このため、周波数領域は1GHz、コモンモード電圧ピーク2000V、CMRRはDC〜100MHzでも120dB、1GHzでも80dBを確保した。


図2 IsoVuの基本構成 ノイズが乗りやすいケーブルを光ファイバにする変換器 出典:Tektronix

図2 IsoVuの基本構成 ノイズが乗りやすいケーブルを光ファイバにする変換器 出典:Tektronix


センサヘッドは、扱いやすくするため小型にする必要がある(図2)。プローブ先端の電気信号を光信号に変換したのち、コントローラボックスに送り光を電気に変換し測定器に電気信号として入力する。センサヘッドとコントローラとの間は光だけのケーブルにしているため、センサヘッドへの給電も光ファイバで送りセンサヘッド内で電気に変換し給電している。

プリント回路基板にスクエアピンが立っている箇所へプローブを当てる場合、スクエアピンとMMCXコネクタとの変換部品も用意している。この結果、直列接続されたGaNあるいはSiCトランジスタのハイサイド側のゲート-ソース間の立ち上がり電圧波形はシミュレーションと同様の信号波形が得られている。

IsoVu光絶縁プローブは周波数帯域が最大1GHzから500MHz、200MHz、ケーブル長は3mと10mの製品シリーズがある。価格は、プローブの先端からセンサヘッド、コントローラを含め158万円〜306万円(税抜き)。

もう一つの新製品について紹介する。パラメータアナライザは、トランジスタ開発者なら誰でも一度は使ったことがあるだろうが、この新製品はI-Vカーブ、C-Vカーブを測定器上で切り替えるだけで簡単に測定できるというもの(図3)。DUT(device under test)のMOSトランジスタのドレイン、ソース、ゲート、サブストレートの4端子をパラメータ測定器に接続しておき、測定器側でI-VとC-Vを切り替えることができる。


図3 新パラメータアナライザ測定器 右の箱はトランジスタの端子を接続するマルチスイッチ 出典:Tektronix

図3 新パラメータアナライザ測定器 右の箱はトランジスタの端子を接続するマルチスイッチ 出典:Tektronix


このため、配線を接続し直す必要はない。また、ウェーハ状態でも測定できる。このパラメータ測定器の出力が4端子2セットあり、入力にはSMU(Source measurement unit)、CVU(C-V unit)を接続する端子がある。

このパラメータアナライザの画面はタッチスクリーン方式のため、指でスクロールして知りたい技術情報を簡単に探すことができる。またClariusと呼ぶ新しいユーザーインターフェース(図4)を導入しており、Select、Configure、Analyzeという項目からテストを選び、設定し解析することができる。Selectには450ものテスト、プロジェクト、デバイスのライブラリを指でスクロールして選択する。


図4 新UIのClariusではSelect、Configure、Analyzeを簡単に設定・解析できる 出典:Tektronix

図4 新UIのClariusではSelect、Configure、Analyzeを簡単に設定・解析できる 出典:Tektronix


Select画面ではテストを早く構築するための概要や、ビデオ、図、アプリケーションノートなどのツールが用意しているため、トランジスタの初心者でもテスト時間を短くできる。Configureでも電流、電圧モードの設定や主要なパラメータを画面上で設定できる。Analyze画面では、全てのトランジスタ測定の履歴を保存し、各履歴の測定結果にレーティングを与えることができる。またハードウエア的にPCIインターフェースの付いたモジュールを差し換えることでバージョンアップも可能。

このアナライザはReRAMやMRAM、PCRAMのような新しいストレージクラスメモリのテストも可能で、書き込み、読み出し、消去、の繰り返しエンデュアランスの試験にも使えるという。価格は364万円(税別)から。

(2016/08/30)

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