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EUVの強い味方、大出力CO2レーザーのダイヤモンド窓

ダイヤモンド薄膜を開発しているElement Six社が、赤外波長10.6µmのCO2レーザーを99%透過できるダイヤモンド円板を開発中である。このほどPhotonix 2016でその試作品を展示した。EUVのX線を作り出すCO2レーザーの窓として使う。

図1 Element Six社が開発した、10.6µm赤外光を99%通すダイヤモンド円板

図1 Element Six社が開発した、10.6µm赤外光を99%通すダイヤモンド円板


EUVの波長13.5nmというX線は、高温で液状に溶けている錫(スズ)のドロプレット(液滴)を落としながら、CO2レーザーを照射することでプラズマ状態を作り出し、X線を発生させることで得る。35〜70kWという大出力のCO2レーザー光を通す窓が必要だった。従来はCO2レーザーをこの窓に当てると劣化して使えなくなるため、出力を上げられなかった。今回は、透過率が上がると同時に劣化しにくくなったため、レーザー出力を上げられるようになった。

35~70kWという大出力のCO2レーザーを99%も透過できるようになったのは、レーザーを照射する窓に貼っている従来の反射防止膜に代えて、モスアイ(moth eye:蛾の眼)と呼ばれる反射防止構造を用いたためである。従来の反射防止膜は、ダイヤモンドよりも熱伝導率が小さいため、発生した熱がこもりやすく劣化しやすかった。このため、レーザーの出力を上げられなかった。

そこで、ダイヤモンド板の表面に反射防止膜をコーティングするのではなく、モスアイ構造にすることで透過率を上げた。これは、昆虫の眼のように半円球の形に凸部をダイヤモンド表面に無数に形成する(図2)ことで、達成した。このモスアイ構造はパターン形状をモデリングして理論シミュレーションを行った。また、実際の形状作製には、リソグラフィとプラズマエッチングを用いたとしている。


図2 モスアイ構造だと3.5MW/cm2の大出力レーザーでも劣化しない 出典:Element Six

図2 モスアイ構造だと3.5MW/cm2の大出力レーザーでも劣化しない 出典:Element Six


モスアイ構造のメリットは大きい。CO2レーザー光を良く通すため、ダイヤの窓での吸収は少ない。従来のコーティングした反射防止膜は、0.4MW/cm2のレーザーパワーで膜が損傷した。このため出力を上げられない上に、窓を頻繁に交換しなければならなかった。しかし、今回の窓は、光を通すため損傷が少ないうえに、ダイヤモンド以外の材料はコーティングされていないため、はがれるという故障がないばかりか、寿命は長い。図2では、3.5MW/cm2まで透過率は落ちていない。寿命は10倍伸びたとしている。

今後、商品化に向けて、特定ユーザーと共にテストを繰り返し、テクスチャー構造をファインチューニングしていく。2016年第4四半期の発売を目指している。

(2016/04/15)

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