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新生Keysight、65Gサンプル/秒と超高速のAWGを発売

Keysight Technologiesは、65Gサンプル/秒と非常に高速のサンプリングレートを持ち、20GHzという極めて広い帯域で最大4チャンネルまで拡張できる任意波形発生器(AWG)を開発、製品化した(図1)。Keysightは、もともとHewlett-Packardを母体として分かれたAgilent Technologyから、さらに計測器部門として2014年8月1日に分離した企業。

図1 超高速・超広帯域の任意波形発生器M8195A

図1 超高速・超広帯域の任意波形発生器M8195A


Keysightという知名度はまだ低いものの、高周波・高速技術には古くから定評のあったHPの流れを汲むだけに、日本法人キーサイト・テクノロジー社長の梅島正明氏(図2)は、「HP創業時に回帰した」、と今回の分割を表現する。キーサイトは電子計測事業に100%専念し、売り上げの10%以上を研究開発に投資する。同社は、「世界初」にこだわるという方針をコミットしている。


図2 キーサイト・テクノロジー社職務執行者社長の梅島正明氏

図2 キーサイト・テクノロジー社職務執行者社長の梅島正明氏


そこで今回発表された新製品は、サンプリングレートが65Gサンプル/秒と驚異的に細かく、20GHzと周波数帯域が広く、しかも最大4チャンネルまで接続できる、という世界初にふさわしい測定器である。これほどまでに高性能なAWGを一体どこに使うのか。

Keysightが狙う市場は、100Gbps、その次の400Gbpsといった、超高速でなければデータトラフィックを処理しきれない次世代通信ネットワークである(図3)。ここにはバックボーンとなる長距離通信では、100Gbps、400Gbps、さらには1T(テラ)bpsと大容量へと向かっている。そのための技術としては、光通信に従来のオンオフ方式ではなく、QPSK(quadrature phase shift keying)や16-QAM(quadrature amplitude modulation)のようなデジタル変調を施されたデジタルコヒーレント通信を利用する。ワイヤレスモバイル通信でも60GHz帯などでのビデオ伝送などには多数のユーザーをサポートする100Gbpsといった大容量伝送への要求がある。携帯端末でも4Gから5Gになると10Gbpsというデータレートになる。有線のデータセンターやクラウドネットワークでは、Ethernetが100Gbpsから400Gbpsへと高速処理が求められる。このネットワークでは、企業向けのプライベートクラウドだけでは災害が起きたらデータが失われる恐れがあり、パブリッククラウドも利用するハイブリッドクラウドへの動きがある。これらの社会インフラでは大容量のデータを受け入れられるほどの高速性、広帯域特性が求められ、更なる高速化には拡張性で対応する。


図3 次世代通信ネットワーク市場 出典:Keysight Technology

図3 次世代通信ネットワーク市場 出典:Keysight Technology


こういったハイエンドの測定器は使いやすさも重要であり、Keysightはユーザーがテストに使う波形を各種パラメータなどで設定するソフトウエアも提供する。これらはPCと接続して、PCの画面を見ながら、基本的な設定や波形のロード、セーブ、ライブラリの保存などを行う。加えて、ビットエラーを測定するためのソフトウエアも揃えている。ユーザーが独自に波形を作り出したい場合には、MATLABやLabVIEWなどのツールや、C++プログラミング言語で波形を設計・検証できる。

さらに、この測定器はマルチレベルの階段状の波形も作成できる。多値の分解能レベルは高速周波数トグルによるが、32Gサンプル/秒だと8レベルまで作り出せるという。もっとサンプリングレートを下げると、16/32レベルにも対応できるとしている。

また、4チャンネルの波形、さらにはこの測定器を最大4台、すなわち16チャンネルの波形を、同期をとりながら出力することも可能だ。そのために同期をとるためのモジュールを用意しており、各モジュールのスキューはサブfs(フェムト秒)と非常に短い。


図4 独自開発したSi CMOSASICと右側4個のInPアンプ 出典:Keysight Technology

図4 独自開発したSi CMOSASICと右側4個のInPアンプ 出典:Keysight Technology


これほどの高速の測定器を開発できたのは、独自のASIC(CMOSプロセス)を設計し、III-V化合物半導体のInPアンプを設計・製造したためである(図4)。CMOS ASICには65Gサンプル/秒の高速DAコンバータと16タップのFIR(有限インパルス応答)フィルタなどを集積している。将来に備えてDSPコアも設計している。このDSPコアは、例えば基本波形にノイズを載せたり、エンコーダ機能を設けたり、今後の機能拡張に利用する。CMOS ASICの製造はファウンドリに依頼する。

(2014/09/11)

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