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Keithley、タッチパネル方式の複合DC測定器SMUを発売

絶縁体や半導体pn接合の微小なリーク電流測定器で定評のあるKeithley Instrumentsが、使い勝手を格段に向上させ、計測時間を大幅に短縮した測定器SMU(Source Measurement Unit)を61万円で発売した。SMUは電圧源、電流源を内蔵しカーブトレーサやデジタルマルチメータの機能を持つDC測定器。同社がTektronixと経営統合し、シナジー効果を発揮した製品だ。

図1 Keithley Instrumentsの複合測定器SMU

図1 Keithley Instrumentsの複合測定器SMU


この製品(図1)は、ユーザーインタフェースにタッチスクリーンを採用、ピンチイン/ピンチアウトによるズーム機能などスマートフォン並みの使いやすさを特長としている。Tektronixがユーザーの声を聞くと、測定器の操作パネルのボタンが多すぎる、メニューの階層が深く、設定条件にたどり着くまで2レイヤー、3レイヤーもかかりすぎる、などの問題が指摘されていた。この情報をKeithleyも共有し、ユーザーの声を取り入れた。機能の多いSMUを設計するため、タッチスクリーン方式にしてボタン数を減らし、画面のレイヤーも減らす設定シーケンスを設計した。新人エンジニアがこの製品の操作を覚えるまでの時間はわずか5分だとしている。これまでのSMUではマニュアルを手放せなかった。メニューやヘルプ機能はまだ英語であるが、今後、日本語化していく予定だという。


図2 GUIを充実させたSMU測定器 出典:Keithley Instruments

図2 GUIを充実させたSMU測定器 出典:Keithley Instruments


8月28日に行われた製品発表会では、青色LEDに3V印加して、流れる電流7mAを表示したり、I-V曲線を表示させたりしていた。電流を増加させるのに従い、LEDは明るくなっていくと同時に、画面上ではI-V曲線が伸びていく様子を見せた。実際にこの2450型測定器を使ってみた、同社日本法人のケースレーインスツルメンツの木下伸二代表取締役は、設定から測定までにかかる時間が従来機の1/3〜1/4の時間ですむと言う。

使いやすいという特長に加え、使い慣れたエンジニアにとっても必要な精度や価格、データログ・通信などの機能を充実させた。例えば、このDC測定器は、電圧分解能は10nV、電流分解能は10fAという精度を持つ。もっとも低い電流レンジは10nAであり、電圧レンジは20mVである。小数点以下が6ケタまで表示できる。これほど精度良く測定できる反面、例えば低電流を測る場合の電流が安定するまでのセトリング時間は従来の1/15と短い。テストを自動化するためテストプログラム(スクリプト)を測定器内に組み込み、実行できる。テストスクリプトを共有、再利用したり、最大32台まで多チャンネル化したりすることができる。そのためにTSP(Test Script Processor)-Linkと呼ぶインターフェースを設けた。TSP-LinkによりKeithleyの他の製品とも接続、システムを拡張できる。

ハードウエア的にも、微小電流・微小電圧の測定やウェーハプローブテストに欠かせないトライアキシャルケーブルを直結するためのコネクタを標準装備している。このためトライアキシャルコネクタの変換器を用意する必要はない。

ターゲットは半導体産業だけではなく、ソーラーセルやセンサ、バッテリマネジメントのテストなどさまざまなデバイスのテスト市場。太陽電池セルのI-V曲線やバッテリの充放電試験などだけではなく、プリンタブルエレクトロニクスに使う有機トランジスタや化学センサの性能測定など、これまでエレクトロニクス測定器になじみのなかった市場も狙っている。

Keithleyは、今回の製品を今後の新しい測定器プラットフォームにするという。そのための設計哲学として、「Touch, Test, Invent」TM を提唱している。最後のInventは、削減した時間を有効活用して、何か新しいことを生み出すという意味だ。

(2013/08/28)

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