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ワイヤレス機器の普及に向けスペアナも表示できるオシロをテクトロが発売

米テクトロニクス社は、周波数を横軸とするスペクトルアナライザ機能と、時間を横軸とするオシロスコープの機能を持たせた新型のオシロスコープMDO4000シリーズを発売する。最近の流行語であるコネクティビティとワイヤレスインターネットという言葉で代表されるモバイル機器にはRF回路は欠かせない。このオシロはRFからデジタルまで使える。

図1 奥行きわずか147mmのスペアナ機能搭載オシロ 出典:Tektronix

図1 奥行きわずか147mmのスペアナ機能搭載オシロ 出典:Tektronix


通常の時間軸と振幅などを対象とするオシロは、デジタルからアナログ回路をチェックするのに使われるが、スペアナはRF回路の無線信号の周波数特性を調べるのに使われる。組み込み設計エンジニアはオシロを通常使っているが、64%以上のエンジニアが最近はスペアナを必要としているという調査結果を同社は得ている。さまざまな機器にワイヤレス通信(RF)機能が付くようになってきたためだ。RFはもはや特殊な回路ではない。ZigBee、Bluetooth、Wi-Fiなどがもはやネジクギの類になってきたがゆえにケータイやタブレット、デジカメなど、どのような電子機器もコネクティビティ機能を拡充し始めている。

1台で両方の機能があれば使い勝手はよい。オシロとスペアナそれぞれ個別に設定する煩わしさもない。このオシロでは2画面同時にオシロとスペアナ波形を見ることができる(図1)。2画面をリアルタイムで独立に見せるため、スペアナ用に特化した専用回路を設計した。原理的にはオシロの時間軸を高速フーリエ変換(FFT)すれば、周波数軸に変換してスペアナ画面が得られるが、これでは信号のダイナミックレンジが十分にとれないという。オシロをFFTで変換しても40dBのダイナミックレンジしか得られないが、今回は専用回路を起こしたため60dB(代表値)が得られている。

独立したRF測定回路では、ハードウエアのダウンコンバータを通してA-Dコンバータ、メモリー、デジタルダウンコンバータを通してDSP処理する。RF回路用のA-Dコンバータではサンプリングレートとレコード長を、アナログ測定チャンネルとは独立に設定できる。オシロ機能のアナログ測定は4チャンネルある。

RF信号を取り込み、A-D変換するためには超高速のA-Dコンバータが必要となるが、サンプリングレートは10Gサンプル/秒と速い。それでも6GHzのマイクロ波信号を捉えるには、信号のダウンコンバージョンが必要となる。このRF測定回路では、RFパスを50kHz〜3.75GHzと2.75GHz〜4.5GHz、3.5GHz〜6.0GHzの3つの帯域に分け、このうち高い二つの周波数帯域に入る信号をダウンコンバージョンしている。このようにして3つの帯域いずれも最小1GHzの取り込み帯域をサポートする。最大3GHzの取り込み帯域をサポートしているため、900MHzと2.45GHzの信号を一度に取り込むことができる(図2)。


図2 900MHzと2.45GHzの信号を同時に観測 出典:Tektronix

図2 900MHzと2.45GHzの信号を同時に観測 出典:Tektronix


RF測定の入力は、一般的なNコネクタを使っているが、Nコネクタをテクトロ専用のTekVPI 50Ωアクティブプローブを接続することで、プリント回路基板上のRF信号を直接取り込み観測することができる。

オシロとスペアナの両方を備えていることで、周波数ドメインと時間ドメインの両方の信号波形が表示されているときは、ドリガーごとに信号を取り込むことができるため、周波数ドメインと時間ドメインの時間相関をとることができる。例えば、VCO(voltage controlled oscillator)をオンオフすることで周波数スペクトルが変化している様子を観測できる(図3)。RF回路に1GBのメモリーを搭載している。価格は238万円から。


図3 時間ドメインと周波数ドメインの時間相関を見る 出典:Tektronix

図3 時間ドメインと周波数ドメインの時間相関を見る 出典:Tektronix

(2011/09/09)

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