セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

アルバック理工、3kWクラスの排熱利用の発電機を開発、パートナーを探す

アルバックの100%子会社で、熱制御技術をコアとするアルバック理工は、温度差を利用する3kWクラスの発電機を開発した。温度差を利用するもののゼーベック効果のような半導体素子を使うのではなく、機械式の回転子に冷媒の蒸気圧を加えることで回転子を回しモーターを回転させ発電するという原理だ。工場の排熱利用を促進できる。

図1 アルバック理工が開発した小型発電機

図1 アルバック理工が開発した小型発電機


3kWクラスの発電機の大きさは、1400mm×1100mm×800mmとオフィスの複合コピー機並み(図1)。熱源としては工場の排熱や温泉などを利用し、75〜150℃程度の熱を導く。冷却側は10〜30℃の水道水を利用する。

アルバック理工によると、温度差が200〜700℃で出力が数100kW以上1000kWを超すような大出力だとタービン型発電機、数10kWから200kW程度で100〜250℃程度の温度差ならスクリュー型あるいはタービン型の発電機がすでに商用化されている。しかし、100℃前後で数kW〜20kW程度の簡易小型発電機は商用化されていないという。同社はこの領域への参入を狙った。

開発したスクロール型発電機は、非可逆過程の熱サイクルを利用して回転子を回す訳だが、従来のタービンとは違いスクロール膨張機と呼ばれる回転装置を利用してモーターを回す(図2)。フロンR134aという冷媒(大気圧下での沸点は-26℃)を、排熱などの発熱体によって高温高圧の蒸気をスクロール回転子の中心から導入する。図2の渦巻形状の回転子と壁を組み合わせることで狭い空間を作り、その中に蒸気を閉じ込める。この蒸気の圧力によって、閉じ込められる空間を外側に向かって膨張させていくことで円運動を行う。


図2 スクロール式回転の発電機 出典:アルバック理工

図2 スクロール式回転の発電機 出典:アルバック理工


この冷媒の蒸気は図2のように最後には最も外側の回転子の空間から熱サイクルの配管内に戻されるが、冷媒は冷却水に近い熱交換機によって低温に戻る。元の液体に戻った冷媒をポンプで高温側に運び、再び高圧蒸気に変換し、サイクルの最初の段階に戻る。この繰り返しによって、回転運動を持続させる。発電機となるモーターの回転軸をどこに置くのかについては、明らかにしない。スクロール回転膨張機と一体化したとしか述べていない。

熱量から動力へ変換される時の効率に、さらにモーターの効率を乗じることで発電効率を求める。69℃の温度差の時に出力3.8kWで6.7%という効率を得ている。ポンプを動かす電力やポンプの回転制御用インバータ、計器などの消費電力は700W程度だとしている。このため、全体の3.8kWから差し引いて、約3kWが正味の発電能力となる。最初に回すポンプの動力源としてはバッテリなどを用意しておき、回転が始まり発電できるようになるとその電力でポンプを回すことができる。同社代表取締役社長の石井芳一氏は、「クルマのエンジンを始動する時にバッテリを使ってエンジンを回す動作に似ている」と例える。

図3 アルバック理工の代表取締役社長の石井芳一氏

図3 アルバック理工の代表取締役社長の石井芳一氏


この発電システムに使える熱の例として工場や船舶、大型車の排熱、温泉熱、燃料電池の熱、太陽熱などを考えている。工場の排熱の例として、芋焼酎のもろみを発酵させるボイラーの熱を利用することで、もろみを冷やすチラーなどのコンプレッサのポンプの電源などに使えるとしている。工場の消費電力を減らすことができ、CO2排出量を低減できる。

今後、この発電機を製品化するためにフィールド試験を行い、耐久性や利便性、信頼性、メンテナンス性などを検討したいとして、パートナーを募集している。石井社長は、「熱源を持っているパートナーと一緒に試験したい。希望としては1年後にフィールド試験を終え、2年後には商用化したい」と考えている。

(2011/06/03)

月別アーカイブ