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テクトロニクス、信号位相・振幅・周波数、単発ノイズを時間軸で捉える測定器

無線LANやCDMA方式の携帯電話、Bluetooth、などのスペクトラム拡散方式の無線通信、LTEや地デジなどのOFDM変調といったデジタル変調方式の無線通信が華やかになっているが、これらの方式では時間軸での振幅や位相の波形が正常かどうか観察したい。テクトロニクスはこれまでの振幅に加え位相、周波数をリアルタイムに時間軸で観察できるシグナルアナライザRSA5000を発売した。

図1 テクトロニクスが発売したシグナルアナライザRSA5000

図1 テクトロニクスが発売したシグナルアナライザRSA5000


現在の携帯電話に使われているCDMA技術はスペクトラム拡散方式といって、あるときは周波数A、別の時は周波数B、といった方式で周波数を変幻自在に変えながら通信する。トータルの周波数帯域は広くなるため、スペクトラム拡散(Spread Spectrum)と呼ばれる。通話を傍受した相手は、周波数を合わせてもすぐに変えられてしまうため、盗聴しにくい。周波数ホッピング方式のスペクトラム拡散技術はかつて軍事通信として使われていたが、今や民生市場で普及している一般的な技術となっている。

今回の測定器は、時間軸で信号の振幅・位相・周波数を観測できるため、スマートフォンやタブレットのような携帯端末メーカー、あるいは自動車エレクトロニクスメーカーなどが狙い目の市場となる。携帯端末はWi-FiやBluetooth、デジタルテレビ、GPS、3G音声通話など無線を使う機能が満載されており、それぞれのアンテナが設けられている。Wi-Fiを使いたいのに他の無線電波による妨害によって動作しないといった、イントラEMIノイズが問題になっている。これまでのノイズはランダムなノイズだったが、イントラEMIノイズはある意味では信号であるため対策に工夫を要する。自動車内でも同様に、ECUのデジタル回路などからのノイズに加え、イントラEMIノイズとでも言うべき、3G通信、GPS、地デジ、Bluetoothなどの電波が飛び交わっている。どの電波がどの電波に影響を及ぼすのか、今回のようなリアルタイムシグナルアナライザで解析しなければノイズ源を見出し解決することができない。

この技術による信号は、スペクトラムアナライザのように周波数軸に対して振幅を見る、あるいはオシロスコープのように時間軸に対して振幅を見る、といった装置では観察できない。このためリアルタイムスペアナとテクトロがいうように両方の特長を採り入れたシグナルアナライザが必要とされている。

時間軸と周波数軸と両方から電波をリアルタイムで解析するシグナルアナライザRSA6000をテクトロニクスは2006年に発売したが、今回のミッドレンジのシグナルアナライザRSA5000は、振幅、位相、周波数を時間軸で観察できるだけではなく、300MHzのA-Dコンバータを搭載したため、最大サンプリング速度を150MHzとして6.7ns以上の過渡パルスを捉えることができるようになった。加えて市販のアナライザと比べ2倍のメモリーを搭載したため、高速のトリガーをかけることで過渡的なノイズ、EMIを画面に表示することもできるようになった。信号を取り込む最大の帯域幅は85MHzと従来のミッドレンジ製品の2倍あるという。85MHzの帯域で7秒間信号を蓄積することができる。


図2 リアルタイムの信号を解析できる

図2 リアルタイムの信号を解析できる


ミッドレンジとはいえ価格は、帯域が1Hz〜3GHzのモデルRSA5103Aは426万円、1Hz〜6.2GHzのモデルRSA5106Aは618万円である。ただし、これらは取り込み帯域幅が25MHzの製品で、このシリーズは40MHz品、85MHz品もあるが、高周波帯域はオプションで対応する。

この測定器は盗聴されにくいスペクトラム拡散方式のような通信を解析するのにぴったりであるということは、逆に言えば盗聴を解析することも容易にできる。サンプリング&ホールドで捉えているためトリガーをかけることで、電波の痕跡をディスプレイに残すことができる。このため市場としては軍関係、公安、警察、警備会社などもありうる。

(2011/01/12)

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