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アルバック、TSVコストを削減するターンキーソリューション装置を発売

アルバックが3次元実装技術であるTSV(through silicon via)プロセスを穴あけからメタル埋め込みまでターンキーで行う製造装置を開発、セミコンジャパンで発表する。ターンキーソリューションの最大のメリットは、リソグラフィとウェーハ薄型加工を除く工程の装置コストが4割も減ること。スループットも高くなるとしている。

図 TSV装置の価格構成 単位は百万円。月産2500枚を処理すると仮定。出典:アルバック

図 TSV装置の価格構成 単位は百万円。月産2500枚を処理すると仮定。
出典:アルバック


TSVは貫通電極を使って半導体チップを3次元実装する技術であり、性能向上はもちろん、消費電力の低減など、メリットは大きい。半面、コストが高く、裸のチップを3次元実装する場合にコスト的にワイヤーボンディングにはかなわない。このため、どうしてもTSVを使わなければ実現できない要求性能のあるCMOSイメージセンサーなど実用化は限られている。技術開発の主眼は、いかに安く作るか、の一点に絞られている。

ところが半導体チップの応用からTSVに追い風が吹き始めてきた。一つは、TSVは確実に性能が上がるためDDR2からDDR3へのDRAMの高速化への動きである。携帯機器でのビデオ応用とそのフルHD化という広帯域化には高速転送が欠かせない。もう一つは外部電極にBGAやCSPなど電極パッドピッチの微細化が進んでいることで、ワイヤーボンディングではできないほど小さな電極パッドピッチにTSVは対応できる。さらに、パッケージした後の実装面積あるいはパッケージ面積の小型化への要求も携帯機器では進められている。ルネサスは、パッケージサイズを1/3、あるいは1/9に小型にしたICを連日、発表している(参考資料1,2)。

こういったTSVへの追い風を受け、アルバックは、TSVのターンキーソリューション装置を開発した。装置開発には、3次元実装のプロセスノウハウを持つベンチャーのザイキューブと技術提携した。ザイキューブは、貫通電極を形成するための貫通抗の形状や条件、側壁の厚さや、構造などプロセスインテグレーションに必要な情報を提供、共同で開発してきた。

今回の装置はウェーハプロセスのトランジスタ工程(FEOL)も多層配線工程(BEOL)も全て終わったウェーハを薄く削るところから始めるビアラスト工程を狙った装置である。後工程メーカーを市場に含められること、さらに既存のLSIプロセスをそのまま使えることなどがその理由だ。FEOLが終わってから始めるビアミドル工程だと、LSIプロセスそのものの変更も必要になるため、IDMやファウンドリメーカーしか対象顧客になりえない。

ビアラストの最初のソリューション装置として、貫通抗のアスペクト比は2〜5が可能で、150℃以下の低温プロセスで穴埋めまでの工程を行えるようにした。ビアラスト工程では、シリコンウェーハを100μm程度まで削るために表面側を、支持台となるガラスに張り合わせるが、180℃以上だとガラスがはがれてしまう恐れがある。しかも工程のコストを下げるためスループットを上げる工夫も加えた。

例えば、垂直に穴を掘るのに必要な従来のボッシュプロセスだと、デポジションとエッチングを繰り返すためスキャロップと呼ばれるしわが側壁にできてしまう。このため側壁をカバーする酸化膜を厚くせざるを得なくなり、酸化膜デポジションに時間がかかってしまう。そこで、今回は、常にエッチングだけで削っていけるように、60MHzの高周波放電を利用した高密度プラズマを発生させ、スループットを速めた。側壁酸化膜を薄くできるためスループットが上がったという。

さらに装置コストを下げるため、ウェーハ前工程のスパッタ装置では必要だったチャンバごとのターボ分子ポンプやクライオポンプなどをチャンバ共通のクライオポンプだけにする、電源を3台から2台に減らすなど低コスト化を図った。今回の装置では、めっき・ウェット処理とエッチング・スパッタ・CVDを合計した工程の装置コストは6億8000万円と、従来のTSVの装置コストの10億5000万円よりも4億円も安くなった(図)。

今後、アスペクト比が10以上の製品や、300mmウェーハ対応機種など、ターンキーソリューションの製品ポートフォリオを拡大していく方針だ。

参考資料
1. 従来品と比べてパッケージサイズを88%削減したUSB/SDオーディオデコーダ用LSI 3製品の発売について(2010/11/24)
2. パッケージを従来の1/3に小型化したモバイルAV機器向けシステムLSIの発売について(2010/11/26)

(2010/11/26)

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