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ニューフレア、KLAに挑む、とっておきのマスク検査装置の詳細を明らかに

ニューフレアテクノロジーは、つくばで開かれたSelete Symposium 2009において、ハーフピッチ(hp)45nm以降のLSI用マスクを短時間で検査できる手法を採りいれた新しいマスク検査装置NPI5000PLUSの詳細を明らかにした。極めて複雑なナノメーターLSI回路を焼き付けるマスクのコストが膨大になってきており、その一因が高額のマスク検査装置にもあると言われてきた。ニューフレアはKLAテンコールの独占ともいえるこの市場に一矢を報いることができるか。

ニューフレアのNPI-5000PLUSマスク検査装置

ニューフレアのNPI-5000PLUSマスク検査装置


ニューフレアがKLAを強く意識するのにはわけがある。電子ビーム露光で培われた、設計データとパターンとの比較すなわちダイ・ツー・データベースでマスク検査できる装置はKLAしか持っていない。また、アプライドマテリアルズはステッパを模した光学装置をシミュレーションしてウェーハにどう転写されるかということについての検査装置を持っている。「しかし、シミュレーションはシミュレーションでしかない。マスクがデータどおりに出来ているかどうかを調べることが本筋」とニューフレアの取締役検査装置統括部統括部長の臼田欣也氏はいう。

レートカマーであるニューフレアがKLAに対抗するため、レーザー光の短波長化を図った。KLAが使用していたレーザー光の波長はKrFエキシマの257nm。ニューフレアはArFレーザーを使った。ただし、リソグラフィで使われている193nmではなく198.5nmの光を選択する。というのは、光が空間を伝搬する間に減衰する波長は200nmより短くなればなるほど減衰が大きくなるためだ。出来るだけ短波長で、しかも出来るだけ減衰を少なく、ということから理想的には200nmが欲しいが、198.5nmであればそれに近い。

半導体コンソシアムであるSeleteは、国産の検査装置を手に入れることでNECと東芝、マスクメーカー(JMI: Japan Mask Initiative)を支援し、2001年から2003年の間のプロジェクトでこのレーザー光源開発を後押しした。国産にこだわったのは、マスク価格が高価である一因は検査装置が高価だからと言われたからだという。そこで、KLAよりも一歩先をいく装置を作ろうとしてプロジェクトが始まった。その一つが198.5nmのレーザー光源だった。ニューフレアは、SeleteだけではなくMIRAIやNEDOの協力のもとで開発したレーザー光源技術を受け、事業化することを引き受けた。

装置を初めて出荷したのは2年前。この短波長による検査装置は最初のユーザーである東芝から高い評価を受けたという。最近、あるマスクメーカーがhp40nm未満のマスク検査において、さまざまな欠陥に対する感度を評価したところ、KLAの装置と互角以上の感度を示している。やや大きなCDと小さなCDなどさまざまなパターンでの評価であるため、ある部分ではニューフレア、別のパターンではKLAの方がそれぞれやや勝っており、結果的にはほぼ互角というデータを示したという。特に、微細なパターンになればなるほど、ニューフレアの方が感度は高い。波長が短い効果が生きているという。


位置Map測定機能


また、検査装置として故障しないというメリットもあるとして、安定に動くことも大きなメリットになるとしている。生産現場で使う装置であるからこそ、いくら性能が良くても故障すればアベイラビリティが悪くなり、生産ラインのスループットは落ちてしまう。再現性も高い。動作安定性に対しても自信を持っており、臼田氏は、次世代プロセス向けの検査装置としては問題ないと自信を持って言いきる。

技術の決め手となったのは、限られた時間内での検査のアルゴリズム。マスク検査は回路パターンが微細になればなるほど時間がかかる。最小線幅45nmだとSEM(走査型顕微鏡)を使わなければ見えない。しかし、SEMで検査しては日が暮れるほど時間がかかる。そこで、従来のCD-SEMだと比較的広い面積単位に渡り時間的に何度も測定して平均化している。これに対して、ニューフレアは空間平均という手法を使った。

これは、7mm角の四角形を一つの単位として、その1辺を50に分割し、50×50のマトリックスを構成する。1ブロックの1辺の長さは140μmである。140μmは45nmの約3000倍だからこれでも最小パターン寸法よりもかなり大きい。最小140μm角のあるブロックを見る場合には、そこを中心として周辺50×50ブロックの平均をとり、中心のブロックの平均値が7mm角の平均値となる。

そのブロックの位置を1ブロックずつずらし、また平均をとる。マスクの画像としては、平均化されたものになる。2500個の値を平均化するときに小数点を2桁まで求め精度を上げた。時間的にも2500回単純な加算平均を計算したことと等価になる。時間的なマージンをとる必要がないため時間平均をとるよりも計算時間が短い。さらに精度を上げる場合は平均値をさらに平均する。逆に精度を落として計算を早くしたい場合は4個分を一つの単位として計算する。平均化した画像を計算表示するため、NECエレクトロニクスが開発した0.15μm第1世代のプロセッサIMAPを使った。

空間的な画像の感度を上げるため、垂直画素2048の蓄積型CCDラインセンサーを使いTDI(time delay integration)動作をさせた。マスクを移動させながら画像を重ねていくため多くの電荷量が蓄積でき感度が上がるというもの。ただし、この技術はKLAも使っているという。

検査装置の技術は、設計パターンと実パターンとのわずかな位置ずれを補正するための電子ビーム露光技術の描画精度向上と相通じるところがあるため、EB露光機エンジニアと一緒になって開発した。EBエンジニアはマスク検査機の弱点を知っているという。X-Yステージの開発では、KLAと対照的だとしている。ニューフレアは画像のブレを減らすためハードウエアを重くするなどハードで工夫したのに対して、KLAはブレを補正する画像処理ソフトウエアで工夫したという。KLAがソフトウエアに要する人数は圧倒されるほど多いと、臼田氏は述べ、ソフトウエアの人件費を考慮するとニューフレアはコスト的に対応できるとしている。


NPI Technology Roadmap


今後、ユーザーインターフェースを含めた使い勝手を良くしていく。KLAと比べると、教育の行き届いたオペレータしか使えない点が弱点になっている。


(2009/06/09 セミコンポータル編集室)

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