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Mentor Graphics、クラウドベースのVerification 3.0時代へ

Mentor Graphicsは、Verification 3.0と称する時代に入ったと同社CEOのWally Rhines氏(図1)はGlobalpress Connection主催のEuroAsia 2014において述べた。検証作業にソフトウエアとハードウエアの両方を使うようになった2.0の時代から、グローバルなエコシステムが欠かせないSoC時代に向いた、クラウドベースでのVerification 3.0時代に突入した。

図1 Mentor Graphics CEOのWalley Rhines氏

図1 Mentor Graphics CEOのWalley Rhines氏


最近はSoC(システムLSI)がマルチコア、ヘテロプロセッサ、さらにはキャッシュコヒーレンシも求められるような複雑なシステムになっている。しかもSoCはソフトウエアを自身の中に組み込むようになってきており、ハードとソフトそれぞれの検証が必要になってきた。ソフトウエアはモデル化してシミュレーションで、ハードウエアはエミュレーションで設計通りに作られているかどうかをチェックする。シミュレーションのコードはここ数年の伸びはゆっくりだが、エミュレーションにかかる費用は2010年から2020年までに39%増というペースで急増している。ソフトだけのシミュレーションでは間に合わないからである。

さらにSoCの機能を増やすために微細化も必要で、22/20nmないし16/14nmの時代にはソフトウエア開発時間が増える(図2)。このため、高速にシミュレーションするためのアクセラレータと、インサーキットエミュレータ機能を持つVeloce(ベローチェと発音)エミュレータをMentorは開発してきた。しかも市場へ出すまでの期間Time-to-marketが短くなってきているため、ハードウエアが完成してからソフトウエアを開発する訳にはいかない。RTLができたらすぐにハードウエア機能をエミュレートしてソフトウエア開発に進まなければならない。このためのエミュレータがもはや欠かせなくなっている。


図2 微細化と共にソフト開発工数もうなぎのぼりに増える 出典:Mentor Graphics, IBS

図2 微細化と共にソフト開発工数もうなぎのぼりに増える 出典:Mentor Graphics, IBS


Mentorが提案するVerification 3.0時代の最初の製品として、企業向けの検証プラットフォームEVP(Enterprise Verification Platform)をリリースした。同社の検証システムQuestaと、第3世代のOS(Operating System)であるVeloce OS3エミュレーションシステム、デバッグを可視化するVisualizerを統合したもの(図3)である。ユーザーは世界中からクラウドベースでこの検証プラットフォームにアクセスできるため、グローバルな設計体制を持っている企業に向く。「例えば世界各地に拠点を持つIntelなら、サンタクララからでもアリゾナからでもアイルランドからでもアクセスできるから設計の効率が上がる」とDVT担当バイスプレジデントのJohn Lenyo氏は述べる。


図3 新しい設計統合プラットフォームEVP 出典:Mentor Graphics

図3 新しい設計統合プラットフォームEVP 出典:Mentor Graphics


中でも新しいVeloce OS3には三つの特長がある。一つは、ソフトウエアシミュレーションのようにエミュレーションできる。特に低消費電力化のためにアプリケーションプロセッサ内部では、動作している回路とスリープ状態の回路とが絶えず発生するため、それを考慮している。また機能をカバーするSystemVerilogに加え、新しいLSI設計言語であるUVMやC/C++もサポートする。2番目の特長では、ハードウエアの周辺回路を追加せずに、仮想的な周辺回路に置き換えている。もちろんPCIeやEthernet、USBなどの標準的なインターフェースは専用のハードはもはや要らない。そして、バーチャルな三つめは、データセンター向けに工夫し、ネットワーク上のどこからでもVeloceを走らせることができることだ。複数のユーザーと共有できる。

Questaが持つシミュレーションプログラムの内、できるだけエミュレーションできるようにテストベンチの再利用を進めてVeloce OS3でエミュレーションできるように修正し、シミュレーション時間を短縮する。従来のようにシミュレーションだけの場合よりも1000倍以上高速に検証できるとしている。すでにSTMicroelectronicsが使っているという。MentorはさらにVerification IPも提供する。これはQuestaとVeloceをサポートしており、移植しやすくテスト環境の再利用もできる。

Mentorは、クラウドベースの設計検証ツールを強化するために、データセンターにエミュレーションとシミュレーションを行うための検証プラットフォームを設置している(図4)。ユーザーは遠方からインターネット経由でこのデータセンターにアクセスし、検証作業を行うことができる。図4のコンピュータシステムに何枚も差し込んである、コンピュータボードのCPUは自社で設計開発したものだという。


図4 Verificationプラットフォームを設置したMentorのデータセンター

図4 Verificationプラットフォームを設置したMentorのデータセンター


開発した検証プラットフォームEVPを使ったクラウド設計検証サービスは2014年6月から開始する。すでに既存のエミュレータを購入したユーザー企業に対しては、アップグレードサービスで対応するとしている。

(2014/04/11)

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