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PCBレイアウト設計から熱設計まで一気にシミュレーションできるツール

プリント回路基板(PCB)のレイアウト設計から熱設計まで一貫してシミュレーションできて、しかも短期間で評価可能な熱設計シミュレータFloTHERM XTをメンターグラフィックスが開発した。PCB設計データから熱の流れをシミュレーションする場合にフォーマットを変換する必要はないため、開発期間(Time to market)を短縮できる。

図1 FloTHERM XTを利用する電子機器の熱設計 出典:Mentor Graphics

図1 FloTHERM XTを利用する電子機器の熱設計 出典:Mentor Graphics


FloTHERM XTは、PCBのコンセプトレイアウトからPCBを筐体に収容する構造設計した後に、熱の流れを計算するシミュレータである(図1)。熱シミュレーションの結果、赤いチップにはヒートシンクが必要であることがわかる。このため、そのチップの形状・寸法に基づくヒートシンクとさらに筐体にも風を逃がす穴を開けておく。機械設計(MDA)ツールで筐体を設計し、全体の設計の最適化を図ると、ここでデザインのサインオフを行う。このあと、試作に入る。

このシミュレータは、熱設計が必要な電子機器に効力を発揮する。特にデータセンターのサーバや、通信基地局や企業のルータ、コンピュータグラフィックスカード、スマートフォンなど、放熱設計が必要なPCBやシステムの設計に威力を発揮する。従来からメンターが供給しているFloTHERMは純粋な熱設計シミュレータであるため、例えばコンピュータラックシステムの熱設計に向くが、今回の新製品FloTHERM XTはPCBの配線・レイアウトの段階から使う場合に適している。

PCB設計から熱設計までを行うには、部品のサイズや形状などを入力してから、筐体に組み込み、その後メッシュを切り境界条件を入力しシミュレーションで数値計算する。従来は、アセンブルモードAとメッシュの切り直しM、さらに計算S(Solve)に時間がかかっていた(図2)。PCBの回路が複雑になるにつれ、ネイティブCADデータからフィルタリングをかけて簡略化したCADを作り、簡単な寸法に直したり、メッシュを切り直したりする作業が大変になってきたという。ネイティブCADとは、ソリッドワークスやPTC、SAP、キャティアなどが提供する市販の機械系CADのこと。一方で、PCBの電子回路設計ツールでは、シグナルインテグリティやパワーインテグリティなどのボード設計要素から単純なモノをインポートし、フィルタをかけて熱に関係する要素を取り出す。


図2 従来の熱設計のフロー 出典:Mentor Graphics

図2 従来の熱設計のフロー 出典:Mentor Graphics

図3 FloTHERMで開発期間を短縮する 出典:Mentor Graphics

図3 FloTHERMで開発期間を短縮する 出典:Mentor Graphics


今回のツールは、実装モデルとメッシュ生成の作業時間を短縮し、計算時間も短縮した(図3)。ネイティブCADから熱に関係する要素を取り出す際のフィルタリング作業の効率を上げたとしている。オブジェクトベースで直観的にメッシュを切ることができる。計算した後は、データの後処理を行い、レポートを自動的に生成する。この計算後のプロセスは従来と変わらない。

今回のツールはコンセプトの段階からシミュレーションできるため、設計・検証・修正のサイクル数を減らすことができる。このツールは熱設計のエンジニアも回路設計エンジニアも共に使うことができる。さらに、GUIをカスタマイズできるというメリットもある。

(2013/03/19)
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