メンターG、組み込みソフト開発を拡充、富士通のマイコン開発に採用
米EDAベンダーであるメンターグラフィックスが組み込み系のソフトウエアに力を入れている。2010年11月に組み込みソフトウエア開発ツールベンダーのCodeSourcery社を買収して傘下に収めた。このほど富士通はCodeSourceryが持っていた開発ツールSourcery CodeBenchをFM3 Cortex-M3マイクロコントローラの組み込み開発に採用したことを発表した。
図1 富士通がマイコン開発に採用するメンターのCodeBench 出典:Mentor Graphics
富士通がCodeSourceryのCodeBenchを選んだ理由は、数分のインストールですぐに評価ボード上で組み込みソフトウエアのコンパイルやデバッグを実行できるからである。このGNUツールチェーン(コンパイラやアセンブラ、リンカーなど一連のツールのセット)を内蔵したソフトウエア開発エコシステムをマイコンの顧客に提供できる。
メンターはハードウエアエミュレータも提供しているので、半導体メーカーがSoCを設計しはじめRTLが出力されたら、ハードウエアエミュレータで動作を確認した後、ソフトウエア開発に取り掛かることができる。ハードウエアが出来上がってからソフトウエアを開発する必要はなくなる。これによって、半導体メーカーはハードウエアとソフトウエアの同時開発が可能になる。メンターはSourcery CodeBenchを提供することで、組み込みSoCの開発をハードからソフトまでメンター製品でカバーすることができる。
CodeBenchは、マイコンやSoCプロセッサ周りの、コンパイラやデバッガ、アナライザなどの開発ツールであり、実際にシステム化した時の解析にはCodeBench System Analyzerというソフトを使う。このソフトは、電源電圧と性能との最適化やシステムレベルのデバッグ、マルチコアの可視化などを行う。
図2 システム解析ツールも提供 出典:Mentor Graphics
CodeSourceryを買収したのは、同社が特にコンパイラ技術に優れており、特に32ビットプロセッサシステムは強いからだと、メンター社ビジネス開発ディレクタのBrian Barrera氏は言う。半導体メーカーにとっては32ビットの組み込みシステム市場が広がっているため、SoC半導体メーカー向けのメンターのEDAツールと合わせて、短い開発期間でSoCを提供しやすくなる。
メンターは、2009年以来、組み込み系のソフトウエアにも力を入れており、Linuxベース、アンドロイドベースのシステムをカバーし、組み込み系のエコシステムに投資してきた。その結果、組み込み系ソフト売り上げの絶対額やパーセンテージは公開できないものの、毎年倍々ゲームで伸びているという。