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ARMがハイエンドのプロセッサコアCortex-A15を発表、コンピュータ応用も可能に

英国のプロセッサコアベンダー、ARMが最新鋭のプロセッサコアCortex-A15を発表した。これまでの最高性能を示していたCortex-A9の2倍の性能を持つ。これまでモバイル系に強いARMのプロセッサコアだが、民生のホームサーバーやデジタルホームエンターテインメント、さらにはワイヤレスのインフラ応用にまでの展開を狙う。

拡張性があるハイエンドもカバーするARMのCortex-A15の性能向上

図 拡張性があるハイエンドもカバーするARMのCortex-A15の性能向上


もともと、性能はそこそこでも消費電力は絶対的に低いことを強みとしてきたARMは、これまで通りの低消費電力特性を生かしながら、性能向上へと進化させてきた。このため、単位消費電力に対する動作周波数はどのプロセッサよりも高いという特長まである(関連資料1)。Cortex-A15は2.5GHzで動作可能であるが、ヒートシンクは使わなくて済むということも最大の特長だ。

Cortex-A15の特長は高性能や低消費電力といったパワーエフィシャントな設計だけではない。マルチコアへの拡張性にも優れている。1チップ構成にスケーラブルにマルチコアを提供するためのコヒーレンシ機能がある。すなわちシステムレベルでさまざまな周辺回路やマルチコアとのメモリー共有や、サイクルタイムの削減などが可能になっている。例えばL2キャッシュを集積し4コアのマルチコア構成をARMのAMBA 4バスでつなぐことで8コア構成のチップを設計することも可能だ。コヒーレンシ機能が優れているため、チップ上でのトランザクションが可能で、システムとしての動作速度が高まる。4コアの回路でグラフィックスやビデオ処理を行い、別のコアでセキュリティのアクセラレータ機能を行うことができるようになる。

こういったハイエンド応用を狙っているため、使用可能なRAMメモリーを1TBまでアドレスできる40ビットのアドレス空間を内部に割り当て、データバスと命令バスは128ビットを基本としていると、同社プロセッサ部門シニアプロダクトマネジャーのトラビス・ラニア氏は述べる。

スケーラブルな特長を生かして、仮想化(バーチャライゼイション)マシンもサポートしている。すなわち1チップ上に異なる2つのOSを載せ、その上で異なるプロセッサを動かすことも可能である。まるで1チップなのに2台のコンピュータが走っているように見せかける仮想化技術はハイエンドサーバーだけのものではない。タブレットPCやモバイルコンピュータの世界でさえ、最近は企業のデータやパソコンと自分のパソコンとを区別する傾向があるが、この仮想化技術を使えば、企業向けデータを1つのOS上にのせ、個人向けデータを別のOS上に載せることができ、企業のセキュリティを守ることができる。

すでに米テキサス・インスツルメンツ社、韓国サムスン社、フランスSTエリクソンが採用を決めてシステム設計を進めている。

技術的には11月のARM フォーラムで公開するとしているが、全世代のCortex-A9と比べで、L2キャッシュを内蔵したこと、データバス幅を64ビットから128ビットに変えたこと、1クロック当たりのコーディング能力を2命令から3命令できるようにしたこと、スーパースケーラ機能に関しても8命令まで同時発行できること、消費電力をシステム上からも下げるためパイプラインの細かいシャットダウン技術を採用したこと、などが上げられる。

関連資料
1) ARM社の競争力分析

(2010/09/14)

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