ケイデンスがARMと提携、組み込みシステムを短期間で開発するツールを提供
米ケイデンスデザインシステムズ社は、半導体チップユーザーがチップというよりSoCを含めたシステムの設計を最初から容易にできるようにする目的で「System Realization」を開発するため、ARM社との協業を拡大すると発表した。
図 ARMベースの組み込みシステム開発を容易にするケイデンスのツール
ケイデンスは2010年4月27日に、EDA360と呼ぶ、アプリケーション駆動型のシステム設計手法を発表したばかりだが、今回のARMとの提携はEDA360ガイドラインをさらに具体的にARMのツールを取り込み、システムメーカーがARMベースの組み込みシステムを簡単に設計できるようにした。ARMのツールとしては、DS-5、RealView開発ツール、Fast Models、VSTREAM仮想デバイスインターフェースなどを含む。
これによって、ユーザーはシステムアプリケーション構築から、ARMベースのSoC設計まで一気通貫でシステム設計ができるようになる。ケイデンスがARMを選んだのは、顧客からの要望による。ケイデンスはそれまで、ARM以外にもMIPSのRISCチップやインテルのAtomプロセッサを利用する組み込みSoCの開発を手掛けてきた。今回はARMをよく使う日本の市場から手始めにSystem Realizationを導入していく。
開発期間(Time to market)の短縮が最優先される最近のSoCではRTLが完成すれば、半導体チップが完成していなくてもソフトウエア開発に着手できるようにハードウエア・ソフトウエアの協調設計が使えるようになってきた。今回の提携によって、ケイデンスのハードとソフトの協調設計ツールであるVirtualizationの中に、ARMの仮想デバッガインターフェースVSTREAMと、ARMのプロセッサやIP、周辺回路など検証済みのモデルを取り込んでいるFast Modelsを組み込むことで、ARMのシステムの協調設計もできる。
詳細な記述は膨大になるため、ケイデンスはTLM(トランザクションレベルモデリング)駆動の設計・検証手法に関する本と、UVM(汎用検証手法)を採用するためのガイド本も発行した。日本での顧客になじんでもらうように、デザインサービス、トレーニングサービス、メソドロジインプリメントサービスなどを提供する。