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メンター・グラフィックス、熱解析シミュレータツールをPCB、半導体に展開

半導体設計(EDA)ツールの世界は、世界のトップスリーであるケーデンス、シノプシス、メンターがほぼ独占しているが、トップスリーといえども新しい分野への拡張によって成長を維持する。コアコンピタンスは半導体チップのデザインではあるが、例えばシノプシスはIPベンダーとしても手を広げ、メンター・グラフィックスはもともと強いプリント回路基板(PCB)設計ツールに加え、アンドロイドベースの組み込みシステムの設計ツールにも手を広げていたが、このほどメカニカルな熱解析ツールにも力を入れ始めた。

PCBの熱解析ツールではナンバーワンの地位(米市場調査会社Gary Smith EDA社によるとシェア78%)を占めていたフロメトリックス(Flomerics)社を買収、2008年8月にメカニカル・アナライシス部門として発足させた。この分野でのシェアがわずか2%しかなかったメンターは、フロメトリックス社の買収により80%のシェアを獲得したことになる。これにより、メンターは数値流体力学(CFD:Computed Flow Dynamics)と呼ばれる市場に手を広げていく。

流体力学は、基本的には、3次元流体連続の方程式と、ナビア-ストークスの定理、熱の伝達方程式という3種類の方程式を解くことで、熱が伝わっていく様子を表現するというもの。方程式は3種類だが、最初の連続方程式は3次元を表現するため、3本の方程式に3つの未知数を含み、合計5つの方程式と5つの未知数が存在する。これらの連立方程式を解くわけであるが、方程式は全て非線形の偏微分方程式でありかなり複雑であるため、解析的に解が出ることはまずない。このため数値展開して、積和演算を行うことになる。

その数値計算アルゴリズムをソフトウエア化したものが、メンターの提供するシミュレーションツールである。製品としては、3種類のシミュレータソフトウエアがある。PCBの熱解析に特化したFloTHERMと、ビルディングの温度分布や空調制御に向いたFloVENT、自動車や産業機器に向けたコンカレントFloEFD、である。これらは全て、流体力学を数値展開して解くソフトであり、「基本方程式は同じであるが、それぞれユーザーインターフェースやライブラリが違う」と同社メカニカル・アナライシス部門ジェネラルマネジャーのErich Burgel氏は言う。


PCB設計用のFloTHERMは、プリント基板上の半導体部品やパッシブ部品を配置し、動作させた時の温度分布をみる。プリント基板1枚の様子はこれでわかるが、筐体に複数枚実装し、動作させた時には筐体のメカニカル設計によっては、PCB基板そのものを設計し直さなければならない場合も生じる。このためPCB設計者と筐体設計者との双方向の対話が必要になる。筐体設計者はMCADというメカニカルCADを使い、PCB設計者はエレクトロニクスCADを使い、そのメカニカルな設計CADデータにシミュレーションデータを合体させて温度分布をみる。ここで双方向の協調設計がなされていれば、設計完成までの時間が短縮される上に、両部門のコミュニケーションが良くなる。ちなみに流体力学的なシミュレーション結果を導き出すのに必要な期間は100%から25〜35%に縮まると見積もっている。

メンターはこのECADとMCADとの協調について業界に提案してきたが、ドイツの標準化団体であるProSTEPに認められ、2008年に最初の製品をMCADメーカーのPTCとともにリリースした。PTCのCADツールProEngineer上でシミュレーション結果を見ることができる。

シミュレーションツール(CAE)ツールは、単体では位置と数値データを出力するだけなので、結果がわかりにくい。このためCADによる設計データ図面上で、シミュレーション結果を表示することでわかりやすくなる。このツールがFloEFDである。例えば6個のLEDを搭載したLEDランプの温度分布とその流れを示す熱解析の例を下の図で示している。これによってLEDランプの熱流を可視化できる。


FloEFDを使用した際のLED熱解析


メンターは、PCB基板だけではなく、チップを含むICパッケージやLEDパッケージ、ヒートパイプなども熱解析するために、ICパッケージ用の恒温槽やLEDパッケージのテスト治具というハードウエアも提供する。これらのハードウエアは設計モデルを作る必要があり、そのモデルをベースにシミュレーションのデータを載せて可視化する訳である。電源を加え、動作させると熱を発生するためその時間変化を合わせるため、デバイスの熱抵抗や熱容量などを測定し実際のデータを得ることでモデル化に利用する。


ICパッケージ熱特性評価


半導体シリコンチップ上の温度分布をみることができるかどうかについて、同社システム設計部門マーケット開発ディレクタのJohn Isaac氏に質問したが、ユーザーインターフェースが違うので何とも言えないが、基本的には可能だとしている。

(2009/12/24)

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