セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

LED照明でしかできない、初めての新しいデータ通信システムをNECが提案

照明用LEDの新しい応用を第12回組み込みシステム開発技術展(ESEC)においてNECが提案した。これは、LEDの灯りにデータ変調をかけ、照明ランプの下にあるデバイスと通信したり、位置を検出したりしようというシステムである。従来の白熱ランプや蛍光灯ではスイッチをマイクロ秒〜ミリ秒でオンオフできなかったが、LEDだからこそkbps〜Mbpsのデータ通信ができる。LEDならではの新しい応用となる。

原理は、いわゆるIrDAのような赤外線通信システムと全く同じ。赤外光とは違い可視光を使い、照明器具からの光を変調させデータを送る。これまで通り、部屋の明かりのもとでパソコンやケータイ電話、テレビやオーディオ機器を動作させながら、照明器具からデータが送られてくる。天井の照明ランプのそばに受光デバイスを設置すると、双方向の通信が可能になる。あたかも無線LANのようにLED照明の下でデータのやり取りができるという訳だ。

広い教室や講堂の天井にLED照明を複数台設置し、データを送信すると学校授業やセミナーとしても使える。生徒はPCや携帯電話を見ながら授業を受けられるようになる。光を受けられるところならどこにでも通信できるうえ、通信できる範囲がはっきりしているため、セキュリティを保つことができる。Wi-FiとBluetoothあるいは電子レンジなど電磁波の干渉がなく、しかも電波と違い免許がいらない。電波は無免許で使える周波数が限られているため、2.45GHzを無線LANもBluetoothも電子レンジも使うため干渉が起きやすい。

LED照明の逆に、天井にLEDではなく動画のイメージセンサーカメラを設置して、データ変調させた白色LEDを発するデバイスや物体の位置を検出するという応用もある。店舗でカートからの光と変調しているデータを認識することで、カートを1台ずつ認識できる。病院や介護施設の車いすにLEDを設置すると車いすがカメラの視界内にいる限り車いすごとに識別できる。物流倉庫においてもカゴやボックスなどの入れ物にLEDを設置しておくとそれらを認識できる。

ただし、動画カメラでデータ通信を受ける場合は、あまり高速のデータレートでは動かせないとNECは言う。9600bpsでの通信をESEC会場でデモしたが、説明員によるとその倍の19.2kbpsまでは通信できたが、それ以上の速度は今のビデオカメラのCMOSイメージセンサーでは無理だという。イメージセンサーの応答速度で決まるため、LEDの変調データレートは上げられないのだとしている。LEDからデータを送ることで太陽光などの妨害光を簡単に除去できる。


(2009/05/18 セミコンポータル編集室)

月別アーカイブ