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ルネサス、MRAMで22nmプロセスを使うAIマイコンをサンプル出荷

ルネサスエレクトロニクスは、マイクロコントローラ(MCU)の微細化を進めるために従来のNORフラッシュに代えてMRAMで22nm以降に対応する。微細化するのは、高集積化のためだが、従来のマイコンCPUに加え、AI専用のNPU(ニューラルプロセッサ)コアも集積しているのが特長だ。このほど第1弾としてAIoT向けの次世代マイコン「RA8P1」をサンプル出荷している。

マイコンの集積度を上げるためにメモリをMRAM(磁気抵抗型メモリ)などの新型メモリに代えたのはルネサスが初めてではない。STMicroelectronicsからはPRAM(相変化メモリ)Infineon TechnologiesからはReRAM(抵抗変化型メモリ)をそれぞれ集積し40nm未満の微細化に挑戦し、マイコンを出している。

これによりマイコンは22nm、さらにFinFET利用の16nmなどへと進んでいく。残念ながらFinFET技術を持っているのはTSMCとIntel、Samsungの3社しかない。UMCやGlobalFoundriesはまだFinFET]技術のロードマップさえ描いていない。日本のラピダスはFinFET技術をスキップしてGAA(Gate All Around)トランジスタへと向かっている。

今回ルネサスがMRAMに代えたArmベースの「RA」マイコンシリーズでは、AIoT向けの応用を狙っている。AIoTとはAIとIoTを一緒にした造語であるが、ここでのAIは今の段階ではIoTセンサからのデータからエッジAIで画像認識したり、認識した人物やモノなどを四角で囲む作業をしたりする。データ量を減らすこともAIアルゴリズムでできるため、ホストCPUの負荷を減らすことができる。このため、一種のアクセラレータとしての役割も持つ。

ルネサスはRAファミリでもローエンドからハイエンドまでの応用を狙っており、今回はハイエンドの画像認識を対象とした推論である。やや複雑で見えづらい図かもしれないが図1に主なブロックダイヤを示す。


RA8P1:最新フラグシップマイコンはAI/ML性能を飛躍的に向上 / ルネサスエレクトロニクス

図1 AI機能を搭載したマイコン 出典:ルネサスエレクトロニクス


CPUとしては最大クロック周波数1GHzのArm Cortex-M85と低消費電力で動作させる場合のCortex-M33(最大クロック250MHz)を集積、さらにAIプロセッサとしてArm Ethos-U55を集積した。Ethos-U55の性能は256MAC/サイクル、500MHz動作で256GOPS。さらによく見ると、カメラ&オーディオ回路にはMIPI-CBI2インターフェイスを2レーン搭載しており、画像認識用であることがわかる。もちろんセキュyリティやコネクティビティ、アナログ、タイマー、メモリ、外部メモリインターフェイス等マイコンに必要な周辺回路を集積していることは言うまでもない。

カメラで取得した映像データから画像を、音声データから音声を認識してAIで推論する。例えば人物なら誰とか、人数などがわかる。また車載向けにドライバーモニタリングも可能で、居眠り検知やわき見検知、ドライバのID、スマホの片手運転検知、あるいはたばこ検知などにも応用できる。


RA8P1による音声およびビジョンAIアプリケーション例 / ルネサスエレクトロニクス

図2 カメラ映像を元にした応用例 出典:ルネサスエレクトロニクス


さらに、画像を認識してオブジェクトの分類や、交通信号に設置すれば車両や歩行者のトラッキングやモニタリング、さらにそれらの動線検知にも使える(図2)。また顔検出では、最大20名までの顔を識別できるアプリケーションもサポートしている。

MRAMの用途は今の所、従来のNORフラッシュと同じROMとしての機能であり、RAM機能はSRAMが担当する。SRAMの容量は2MB、MRAMは1MBであり、MRAMは命令コードなどを格納する。

ルネサスは、RAシリーズとして、ローエンドのRA2T1マイコンも発表したが、これはモータ制御用としておりAIプロセッサは搭載していない。モータの回転数を連続的に変化させたり、多数の保護回路を組み込んだりするようなマイコンである。ハイエンドのAIマイコンではないが、CPUはArm Cortex-M23コアであり、電力効率重視マイコンでもある。

ルネサスは今回、22nmのTSMCプロセスを利用したMRAMマイコンを発表したが、今後さらに微細化を進めていく。

(2025/07/10)
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