米TI、POL電源モジュールを2.3mm×3mmの面積に小型化
Texas Instrumentsは、POL(Point of Load)と呼ばれる電源用ICとして使う、出力6Aの小型電源用パワーモジュール「MagPack」を開発、サンプル出荷を開始した。出力6AのDC-DCコンバータでさえ、大きさは2.3mm×3mm×1.95mm(高さ)とボードに実装する面積が小さい。このためボードスペースを有効に使うことができる。

図1 パッケージを小型化したPOL電源シリーズ 出典:Texas Instruments
最先端のIntelやAMDのプロセッサ、FPGA、Nvidiaの AIチップなど、微細プロセスを駆使した高集積のチップは、大電流・低電圧が多い。このため、プロセッサのすぐそばに電源ICを設置する必要がある。遠いと大電流によって設置ラインがゆすぶらされたり、ノイズが発生したりしやすくなるからだ。SoCなどのプロセッサのそばに多数の電源IC(DC-DCコンバータなど)を配置することで、SoCやプロセッサを安定的に動作させることができる。そのような電源ICはPOLと呼ばれることが多い。
今回TIが開発した電源モジュールMagPackは、回路の動作効率を上げ、熱抵抗を下げ、さらにEMIノイズを下げたという特長がある。今回、6種類のICモジュールを製品化しているが、例えば出力電流6Aのバックコンバータ(降圧電源)「TPSM82816」では、前世代の同社製品と比べ、最大4%の効率を向上させ、熱抵抗を17%下げている。効率を上げられたため、安全動作領域(Safe Operation Area)を10℃広げることができたとしている。
この電源モジュール製品には、コイルやトランスなどのインダクタを搭載しているが、それらは市販品だという。受動部品を1パッケージに搭載しているため、電源回路を小さくできた。IC実装面積の電流密度は1mm2あたり1Aを出力できるとしている。
TIは電源IC設計においてICパッケージを見直し、より小さなスペースでより高い効率を目指した。その結果、EMI放射ノイズもこのパッケージに実装した場合としない場合比較した結果、このパッケージによってノイズレベルは垂直偏向で8dB、水平偏向で2dB下がった。
高効率のバックコンバータを実現できたカギは、3Dパッケージのモールドプロセスと、新素材の開発だとしている。この新素材は、インダクタに使ったものではない。インダクタ自身は市販品。小型にするために、部品や半導体同士を遠ざけず、むしろ接近させている。さらにノイズの発生も抑えているため、フェライトとは言えないが、何らかのノイズを吸収する素材かもしれない。TIは、この材料の種類や役割などを明らかにしていないが、スペースを有効活用できるようにするための新素材であるという言い方をしている。また透磁率もやや高いようだ。
ノイズを減らすために寄生容量や寄生インダクタンスを減らすための内部配線を最適化した特殊なリードフレームを開発したという。しかもボンディングワイヤーは使っていないとしている。
TIは、電源ICを小型化したことで、ボードスペースを有効活用して、多チャンネル化やデータレートの高速化に生かせるのではないかと期待している。