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ルネサス、クルマ用MCUやSoCをArm系で統一するロードマップ示す

ルネサスエレクトロニクスは、クルマ向けのマイコン(MCU)とSoCの総称である「R-Car」シリーズのこれからの第5世代のR-Carシリーズを発表した。MCUからSoCまでCPUコアは全てArm系のIPを活用、ハイエンドのSoCでは5nm,4nmなどの先端プロセスノードや、チップレットを駆使する先端パッケージを採用していく。

第5世代R-Carファミリ 次の10年に向けたパフォーマンスとスケーラビリティ / ルネサスエレクトロニクス

図1 ルネサスの車載向けSoCとマイコンのロードマップ 出典:ルネサスエレクトロニクス


これまでルネサスは、演算性能が問われるSoCにはArmアーキテクチャを用い、MCUにはRH850やエントリレベルのRL78シリーズなどの独自アーキテクチャを採用してきた。また、演算性能主眼のSoCと制御命令主眼のMCUとの間の性能差は開くばかりだった。最近は低コストでも性能を上げたMCUも出てきており、SoCとMCUとの間のギャップを埋める必要も出ていた。

第5世代の「R-Car Gen 5」では、SoC、MCUともArmアーキテクチャで統一し、さらにSoCとMCUとのギャップを埋めるために新しいマイコンとして「クロスオーバーMCU」と呼ぶ製品シリーズも用意した(図1)。ただし、具体的な製品はこれから順次発表していく。

これまで開発を発表している第4世代のシリーズの主なものをSoCとMCUに分けると、SoCのR0Car V4xは7nmプロセスで設計され、2024年に量産される予定である。車載コンピュータのゲートウェイに使うR-Car S4xは12nmプロセスで設計されている。MCUはRH850/U2BやRH850/U2A、RH850/U2Cは28nmプロセスで設計され、サンプル出荷中の製品や量産中の製品がある。また、従来のRH850やRL78などの製品のバージョンアップも続けていく。


ルネサスエレクトロニクス 布施武司氏

図2 ルネサスエレクトロニクスのHPCマーケティング兼ビジネスディベロップメントユニット長である布施武司氏


第5世代のR-Car Gen 5のハイエンド製品となれば、おそらくチップレットが使われていくのではないか、とルネサスのHPCマーケティング兼ビジネスディベロップメントユニット長である布施武司氏(図2)は述べている。実際チップレットを促進する標準化団体のUCIeにもルネサスは参加しており、高性能とフレキシビリティを両立させる手としてチップレット手法は優れているという。

R-Car Gen 5のマイコンは、MCUと、クロスオーバーMCUの2系統のArmベースのアーキテクチャを使う。ルネサスのフラッシュマイコンにはMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Semiconductor)構造を用いているが、マイコン用のNORフラッシュは微細化しにくいことから28nmまでは従来構造のフラッシュ技術を使うが、それ以下になると、ほかの不揮発性メモリも候補になるとしている。

先端プロセスはやはり使う必要が出てくるという。他社と差別化できるからだとしている。クルマ用ではこれからは、ECUをいくつかまとめて仮想化するドメインアーキテクチャや、近くのECUを集めて統合化するゾーンアーキテクチャ、さらにそれらを束ねて外部と通信を行うためのゲートウェイコンピュータなど、これまで以上に高性能なSoC やMCUが求められる。こういったCPUを多用するクルマは、SD-V(Software Defined Vehicle)と呼ばれ、10年保証のクルマというハードウエアを更新していくためにはソフトウエアで機能を更新していくことになる。そこで、ルネサスは、SD-Vを可能にするR-Car SoC Gen5プラットフォームもソリューションも視野に入れている。

また、SD-Vではソフトウエアによる機能更新が不可欠になるため、ソフトウエアの提供も重要になる。SoCやMCUの開発ソフトウエアだけではなくアプリケーションを含めたソフトウエアの開発環境はオープンソースで提供することになりそうだ。

新たに命令セットを見直し整理して基本命令を47個に絞り、本来のRISC(Reduced Instruction Set Computer)アーキテクチャを提供するRISC-Vコアに関しては、ユーザーからの強い要望がなく、少なくともGen 5ではRISC-Vの出番はなさそうだ。

(2023/11/14)
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