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水平・垂直とも20m先まで検出できるドップラーレーダーを日清紡が製品化

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日清紡マイクロデバイスは、ドップラーレーダーを利用した人感センサを開発、検出エリアを水平・垂直とも従来の3倍広げた人感センサモジュールを製品化した。ドップラーレーダーは動く物体を検出する。歩行者や自転車クルマなど動く物体を暗闇や濃霧や吹雪、高温・低温の厳しい環境下でも検出する。サイズはわずか17.2mm×25mm×3mm。

図1 日清紡の24GHzドップラーレーダーモジュール 出典:日清紡マイクロデバイス

図1 日清紡の24GHzドップラーレーダーモジュール 出典:日清紡マイクロデバイス


このレーダーは、物体が動くとその速度によって周波数が変わるというドップラー効果を利用する。逆に全く動かなければ検出できない。レーダーは、基本的にマイクロ波やミリ波といった電波を発射し、その反射を検出して物体までの距離を測定する。物体が動いていれば周波数が変わり、動く速度を測定できる。

また電磁波は、周波数が高ければ高いほど放射状から指向性を持つように変わるため、物体に向けてそこまでの距離を求めやすくなる。

日清紡マイクロは24GHzという準ミリ波を使うレーダーをモジュールに仕上げた。周波数が高くなればなるほど、アンテナのサイズを小さくできるため、24GHzのレーダーモジュール上にアンテナを描いた。基本的にアンテナは波長の1/2の長さで共振するため、アンテナはミリ単位になる。チップは自社製かどうかについては明らかにしない。

同社は実は以前にもドップラーレーダー「NJR4266」を開発していたが、ノイズが大きく、検出エリアが狭かった(図2)。新製品「NJR4267」の検出エリアは水平方向を3倍、垂直方向にも3倍の20m(メートル)まで広げることができた。これによって人感センサとして天井の高い倉庫やホールなど、これまでは使えなかった建物内でも人数をカウントすることができ、用途が広がる。


新製品NJR4647F2A1の検出と従来製品の検出エリア(比較 参考図) / 日清紡マイクロエレクトロニクス

図2 今回の新製品NJR4267F2A1の検出エリア(左)と従来製品の検出エリア(右) 出典:日清紡マイクロエレクトロニクス


このモジュールには、アンテナ、マイクロ波発信機と受信機、制御と信号処理のためのマイコンを集積しており、デジタル出力のUART、CMOS出力レベルのインターフェイスを持つほか、調光機能に使うPWM制御信号も出力できる。調光は人間を感知すると、ランプをいきなり明るく照らすのではなく、少しずつ明るくしたり暗くしたりするために使う。また、消費電流を従来品の1.9mAから1.5mAに減らすため、間欠動作のデューティ比を少なくし、オフ時間を伸ばした。

ただし、一般にミリ波レーダーはクルマの車内での幼児の置き去り検出にも使えるが、この製品は自動車メーカーからの認定を取得していないため、今のところは使えない。

開発した企業が日清紡というと奇妙に思われるかもしれないが、同社は、通信やアナログICが得意な旧新日本無線と電源用ICが得意な旧リコー電子デバイスを買収し、日清紡マイクロデバイスとして、2022年1月に設立された。新日本無線は、元々日本無線の半導体子会社として出発したが、親会社が2005年に日本無線から日清紡ホールディングスに変わった。しかし、今年の1月までは新日本無線として活動していた。一方、リコー電子デバイスは、2014年にリコーから分かれて設立されたが、2018年に日清紡が株式の8割を取得していた。

(2022/10/05)

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