Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 技術分析 » 技術分析(半導体製品)

Arm、DPUのロードマップを公開

Armは、クラウドサービス企業向けのデータセンターやスーパーコンピュータなど大量のCPUやGPUを使うコンピューティングのインフラに向けたネットワークプロセッサDPUを今後伸ばしていくことを明らかにした。データを移動・処理するためのDPUプロセッサであるNeoverseのロードマップを描き、性能優先、消費電力優先、中間のミッドレンジへと拡大していく(図1)。

Rapid Pace of Innovation / Arm

図1 Arm、DPUプロセッサのNeoverseのロードマップを公開 出典:Arm


コンピュータの新しい用途としてクラウドの拡大がある。クラウドコンピューティングの物理的なコンピュータはデータセンターであるが、データセンターは従来のクラウド業者だけではなく、通信基地局のエッジにも置かれ始めている。レイテンシ(遅延)の短さが要求されるIoTなどの用途では、5Gの中央基地局で処理していては間に合わない応用が出てくるからだ。例えば、医療用の遠隔手術や、これからのデジタルツインを利用するメタバースではリアルタイム性が求められる。つまり、これからは大量のCPUやGPUを使うコンピューティング用途が増えてくる。

コンピュータを大量に使う用途では、並列動作が欠かせない。CPUを並列動作させるとデータが飛び交うため、交通整理が必要になる。こういったネットワークプロセッサ機能を果たすのがDPU(データ処理プロセッサ)である。CPUが少なければ従来のバス方式でデータのやり取りができるものの、CPUやGPUの並列処理でデータが大量に飛び交うようになれば、バス内でデータ競合が起きるため、交通整理が必要となる。データセンターやスパコンの世界は大量のデータが飛び交うため、DPUが欠かせなくなる。これまでは独自設計のネットワークプロセッサを用いていた。

Armは、これまでCPUコアのCortexシリーズに加え、GPUコアのMaliシリーズも出荷してきており、DPUのNeoverseシリーズもロードマップを描くことにした。すでにNeoverseコアは、AWS(Amazon Web Service)やMicrosoft Azure、Google Cloud、Oracle Cloud、Alibaba Cloudなどパブリッククラウドで実績がある。

今回Armが発表したのはNeoverseのロードマップである。Neoverseにはすでに性能優先のVシリーズ、効率の良い性能とスループットのバランスの良いNシリーズ、5Gエッジ基地局でのRANやエッジネットワーキングなど極めて多様な用途に対応するEシリーズを持っている(図2)。昨年はN2をリリース、今回はVシリーズの高性能版V2シリーズをリリースした。


Arm Neoverse Platform Roadmap / Arm

図2 現在持っているNeoverseの各シリーズ 出典:Arm


V2シリーズはコード名Demeterと呼ばれており、64ビットの制御用CPUのArm v9-A を集積、最大2MBのキャッシュメモリやパリティチェックや誤り訂正などの回路も集積している(図3)。このプラットフォームでは、AI(機械学習)を使ったデータ処理も可能なように積和演算器を積んでいる。


Arm Neoverse V2 Platform / Arm

図3 Neoverse V2シリーズの基本構成 出典:Arm


また、処理すべきメモリサイズと速度に関しても最大512MBのシステムレベルキャッシュを備えており、CMN(Core Mesh Network)のメッシュネットワークでは最大4TB/sと高速性を発揮する。サイバー攻撃に対しても、メモリを守るためのセキュリティ回路を各種入れている。

最近のNvidiaのGrace CPUスーパーチップにもNeoverse V2シリーズが集積されているという。この後は、最初の図1で示したようにE2シリーズ、さらに2023年にはV3、N3、E3へと進化を続けていく。

(2022/09/28)
ご意見・ご感想

HOME