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動画可能な4DイメージングレーダーをイスラエルのVayyarが日本市場にきた

ミリ波レーダーによる人々の安心・安全を見守る、という市場を開拓しているイスラエルを拠点とするVayyar社が日本での活動を本格化させた。1月に法人登録を済ませ、4月には元日本テキサスインスツルメンツ社社長を務めた田口倫彰氏が代表に就任した。製品は5〜10フレーム/秒程度の動画も作成できる4Dイメージングレーダーである。

イメージングレーダーの利点 / Vayyar Imaging

図1 レーダーイメージングは図の真ん中のように点群で表示されプライバシーは保たれる 出典:Vayyar Imaging


ミリ波レーダーは79GHzと60GHzのレーダーを利用して、点群でイメージを表現するようなボヤっとした画像を動画として描くことができる(図1)。全てがくっきりと見えるカメラと違い、鮮明ではないため、男か女かの区別もつきにくく、プライバシーを守ることができる。人間が立っているのか寝ているのか、動いているのか止まっているのか、という程度を認識できる。さらにミリ波レーダーのセンサは、非接触で人の挙動を認識でき、ウェアラブルや何らかのセンサを身に着ける必要は全くない。

そこで狙う市場としては、大きく分けて二つ、介護とクルマである。高齢者の介護施設では、高齢者が部屋にいるのかいないのかの区別や、起きていすなどに座っているのか、ベッドに横たわっているのかなどの区別、さらには床に横になっているのか立っているのか、などの区別もつく。転倒したのかどうかの区別もつく。

日本は世界的に高齢者比率の高い国である。2021年9月における日本の人口の29%が65歳以上の高齢者で3640万人もいる。その割に、介護士は慢性的な人手不足になっている。ベトナムやインドネシアから介護士を募っているものの、日本語を話せることが絶対条件であり、外国人にとって壁となっている。厚生労働省の調査では、2025年には現在よりもさらに32万人を追加する必要があるという試算が出ている。レーダーイメージングは電波で人を検出するため、介護の人手不足解消を目指せる。Vayyarは、高齢者介護遠隔モニタリングでAmazonや中国の家電メーカーHaierとパートナーシップを結んでいる。

もう一つの車載用途は、車内での幼児やペットなどの置き去り検出である。2020年には日本で真夏の1カ月間に98件も車内置き去り事件が起きた。車内にミリ波レーダーを設置しておけば、毛布にくるまっているような視覚的に見えない場所でも電波であるから赤外線とは違い、検出できる。

車内にいる人数をカウントできるため、クルマから降りた時に置き去りを検出できる。さらに、シートベルト付け忘れ防止や、人間の大きさから大人か子どもかの判断も付けられるため、エアバッグの作動を最適化できるというメリットもある。座席ごとにセンサを設ける必要がなく、電波で車内の人間を監視しながらもプライバシーは守られる。このような車内モニター用途で自動車メーカーへも出荷しているという実績がある。


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図2 Vayyarのミリ波アンテナ付きのチップ基板と実装形態の例 出典:Vayyar Imaging


このVayyar社の製品は、直径9cm程度、厚さ1.5cm程度の円盤型のコンパクトサイズで、内部にレーダーの送受信機モジュールと、Wi-Fi送信モジュールが入っている。ミリ波は波長が10mm以下の電磁波である。アンテナ素子は波長の1/2で共振するため、アンテナのサイズは2〜3mmしかなく小さいため、多数設けて感度を上げることができる。モジュールの基板サイズは6cm〜8cm角と小さい(図2)。

バイヤーイメージングジャパンの田口代表は、特に高齢化社会が進んでいる日本市場では介護分野で地方行政と共に実証実験を行っており、自動車産業に強い日本での主要OEMメーカーとはすでに話し合いを始めていると語る。

(2022/06/23)

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