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Lattice、システムの「レゴ」化に向けた新FPGA製品とO-RAN応用スタック

5Gの新しい基地局技術O-RANに見られるようにシステムを分割するディスアグリゲーションが進んでいる。これまでは何でもかんでも全て統合化する傾向にあったが、それらを分割し、汎用性を持たせて顧客が専用機を作れるようにする「レゴ」のような発想だ。それに向けたFPGA製品をLatticeがリリース、O-RANソリューションスタックも用意した。

システム制御アーキテクチャのニーズに対応 / Lattice Semiconductor

図1 複雑なシステムを分割して簡単に 出典:Lattice Semiconductor


子供に人気のおもちゃである「レゴ」は標準的な汎用性のある凹凸を揃えた小さな部品だ。これを使って子供は、独自のモノ(専用品)を作り上げる。システムはあまりにも複雑に、専用システムは高価になりすぎる傾向があるため、レゴのような汎用性のあるサブシステムに分割することで低コストにして、多くの企業が参入できるシステム作りへと変わりつつある。

例えば、セキュリティのしっかりしたCPUを1チップで作ろうとするとチップ面積が増加し、汎用性は失われてしまう。このため、システムのCPUボードとセキュリティボードに分割すれば(図1)、それぞれ汎用性が増し、ビジネスとしてもそれぞれを販売しやすくなる。

その一つのディスアグリゲーションの実例が5G基地局のO-RAN(Open Radio Access Network)システムだ。これまでEricssonやNokia、華為など巨大通信企業が世界の通信オペレータに納入してきた。システム動向を知ることが不得意なNECや富士通のような日本勢は全く歯が立たなかった。しかし、アンテナ近くのRFユニット(RU)と、RFフロントエンドに近いベースバンドの分散ユニット(DU)、中央の演算ユニット(CU)の三つに分割し、それぞれをO-RANインターフェイスでつなぎ、インターフェイスを標準化することで、日本勢も十分戦えるようになる。つまり通信オペレータは、NECのRUと富士通のDU、NokiaのCUを使って5G基地局を作ることができるようになる。これがO-RAN技術の産業的なインパクトである。

Lattice Semiconductorは、このようなシステム分割のディスアグリゲーションにFPGAの新市場を見つけた。図1の上図の例では、セキュリティを組み込んだCPUボードを、CPUだけのボードと、セキュリティだけのボードに分割し、それぞれをFPGAでつなぐのである。セキュリティボードにはサイバー攻撃を管理・監視するマイコンや暗号化回路、暗号化鍵の保存メモリなどを搭載し、認証と暗号の両面からセキュアにする。また、下図では最新の低電圧(1V/1.2Vなど)のCPUやSoCをCMOSセンサやLED制御、熱管理など3.3V系のICをつなぐためのインターフェイスとしてのFPGA回路を示している。

Laticeがこのほどサンプル出荷し始めたMachX05-NX製品は、図1で示したような用途に向くように、図2の回路ブロックで示す機能を集積している。FPGA部分を25kロジックセルと、1.9Mビットのメモリ、10Mビットのユーザー専用フラッシュメモリ、DSPブロックとして汎用性を持たせ、さらにセキュアな内蔵フラッシュメモリも集積した。さらに汎用I/Oを200〜300個と、ADコンバータやギガビット高速インターフェイスSGMII(Serial Gigabit Media Independent Interface)なども集積しており、汎用性が高い。


MachX05-NXの概要 / Lattice Semiconductor

図2 新製品のMachX05-NXの機能ブロック図 出典:Lattice Semiconductor


Latticeはファブレス半導体メーカーだが、チップは28nmプロセスのFD-SOI(Fully Depleted Silicon on Insulator)技術で製造されている。このためアルファ線によるソフトエラー率SERが従来品(バルクCMOS)の1/100と低い上に、消費電力も低い。

Latticeは、O-RAN向けのソリューションスタックも同時に発表した。LatticeのFPGAを使い、ホストとのPCIeサブシステムや、暗号化のプロセッサや回路を含むサブシステムなどに加え、アプリケーションソフトウエアも加えたソリューションとなっている。これまでもデータセンター向けにゼロトラストセキュリティを提供してきたという。ゼロトラストとは、IDを承認できるまではどのデータも信用しないという考えの仕組みである。この仕組みによる認証と、暗号化の両面でセキュリティを確保している。

(2022/06/08)

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