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Codasip、MPUを自由にカスタマイズできるRISC-Vコアを提供、日本法人設置

マイクロプロセッサ(MPU)を好きなようにカスタマイズして高性能・低消費電力・小面積を同時に実現できるRISC-VコアIPプロバイダーが日本で本格的に活動し始めた。チェコ生まれのスタートアップCodasip社だ。カスタマイズを自動化できることが最大の特長。そのためのツールCodasip Studioで、パイプライン段数やマルチコア、拡張命令など自由に選べる。

コダシップグループ / Codasip

図1 グローバルに拠点を置くCodasip社 22年1月に日本法人を設置 出典:Codasip


本社はチェコ共和国にあるが、実務のデザインセンターは英国とフランスに置かれている。日本にはこの1月にオープンしたばかりだ。設立が2014年とやや古いが、シリーズAラウンドは2018年に1000万ドル(約11.5億円)を調達、CEOにはビジネスに精通したRon Black氏が昨年12月に就任、ビジネス体制を築きつつある。プレジデント兼創業者のKarel Masarik氏はブルノ大学で博士号を取得したアカデミア出身のエンジニアで、ビジネス経験が豊富ではなかった。Codasipは、LSI設計技術だけではなく、マーケティングや営業の体制も固めつつあるスタートアップである。

Codasipは、元々マイクロプロセッサのハードウエアとソフトウエアの同時開発を研究していたが、米カリフォルニア大学でRISC-Vアーキテクチャが開発された頃に、RISC-V Internationalの創立メンバーの1社になった。マイクロプロセッサの民主化というテーマとも一致した。

RISC-Vは標準となる命令セットが47個と極めて少ない。同じRISCでもArmプロセッサだと500個というIPもあるという。ArmはCPUコアをずっと進化させ続けてきた結果、互換性を保つための命令を捨てられなかったためだ。ましてやIntelのようなCISC(Complex Instruction Set Computer)だと1500命令にも及ぶ。RISC-Vでは標準となる命令セットと、カスタム拡張命令セットの追加により構成されるため、CPUのカスタマイズに適している。

Codasipのマイクロプロセッサ製品は、より簡単に、より速く、より安く設計することに主眼を置いている。そのために、RISC-VプロセッサをCodasip Studioという開発ツールでカスタム命令を追加してアルゴリズムを高速化する。もちろん、既存のデザインをプロセッサのベースとすることも可能だ。


codasip RISC-V PROCESSORS / Codasip

図2 1シリーズから7シリーズまで揃えている基本プロセッサIP 出典:Codasip


これまでリリースした製品は、ローエンドの1シリーズ、3シリーズから、ミッドレンジの5シリーズ、ハイエンドの7シリーズと4種類そろえている。これらが基本的なプロセッサで、ここにカスタマイズしたい命令セットを追加する。まさにモジュール方式で命令を拡張できる。顧客の使っていたあるメーカーの8ビットマイクロプロセッサよりも、Codasipの32ビットプロセッサの方が面積は小さかった、と同社日本法人のカントリーマネージャー(社長)である明石貴昭氏は語っている。

全ての製品にRISC-Vの基本仕様を実装しており、さらにデバッグ仕様も実装している。また命令バスとデータバスにはAMBA、加えてデバッグ用のJTAG(4ピン/2ピン)も備えている。これらは検証済みでテープアウト品質のIPとなっているため、IPを検証する必要はないという。

これらの製品シリーズから自分でカスタマイズすべき製品を選び、自動的にカスタマイズするツールCodasip Studioを使う。RISC-Vの大きな特長の一つとして、Armでは一般的なユーザーはアーキテクチャの改変まではできないが、RISC-Vはマイクロアーキテクチャまで踏み込んで自由にカスタマイズできる。例えば、AppleのAシリーズAPUやQualcommのSnapdragon、富士通が開発した富岳向けのSoCなどはArmのマイクロアーキテクチャを改変しカスタマイズしたようだが、ライセンス料を特別に払った可能性がある。

Codasip Studio上で、ユーザーがカスタマイズしたいプロセッサ機能をモデル化したCodAL言語でプログラムすると、HDK(ハードウエア開発キット)とSDK(ソフトウエア開発キット)を自動生成するという。HDKとして、RTLを出力し、SystemVerilog UVM検証環境や総合テストベンチなどを行えるようになる。SDKでもコンパイラを生成し、デバッガやプロファイラーも得られる。

Codasipは日本市場では、半導体メーカーのほか、差別化技術が欲しいシステムメーカーやスタートアップにも期待しており、CPUコア製品のライセンス料をもらうビジネスモデルだが、今のところロイヤルティ料はフリーだという。ただし、今後、製品仕様によってはビジネスモデルを変える可能性も出てきそうだ。

(2022/03/18)
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