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Onsemi、HDR140dB/8.3MPのCMOSイメージセンサの詳細を明らかに

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車載用CMOSイメージセンサの最大手、Onsemiはダイナミックレンジ140dBと広く画素数が8.3Mピクセルと高い解像度を誇る製品「AR0820」を量産発表していたが、技術の詳細をこのほど明らかにした(図1)。同時に、現在開発中のイメージセンサについて、その問題点と解決策も明らかにした。

AR0820 高解像度・ハイダイナミックレンジ イメージセンサー / Onsemi

図1 ダイナミックレンジ140dB、画素数8.3MのCMOSイメージセンサ「AR0820」 出典:Onsemi


CMOSイメージセンサのダイナミックレンジを上げるためには、明るい場面での映像と暗い場面での映像をそれぞれ撮り、1枚に合成している。これまでは最低でも2枚以上、3枚あるいは4枚の映像を合成して1枚にすることもあった。このAR0820 では4枚の画像を合成して140dBという高いダイナミックレンジを達成した。

イメージセンサからの画像を合成して1枚に収めるためには、合成のアルゴリズムを演算するロジックICが欠かせない。このロジックICには、多数露光した画像を保存しておくメモリや、誤り訂正回路、サイバーセキュリティ回路、機能安全向けのハードウエア回路、高速I/O回路などが集積されている。カメラ部分のフォトダイオード、電気信号に変換された電荷を一時貯めたり利得を上げたりするための画素回路トランジスタ、カラーフィルタ、マイクロレンズアレイとロジックICを積層している(図2)。


AR0820 車載対応 ハイブリッドスタック技術 / Onsemi

図2 センサにはカラーフィルタやフォトダイオード画素回路、ロジックICをスタック 出典:Onsemi


加えて画素数も830万画素と多く解像度を上げたのは、クルマの運転中でも遠くのシーンをはっきりを見分けるためである。AR0820は400m先のクルマを見分けることができる。それだけではない。例えば、時速60kmで走行中に前方に停止中の自転車を見つけ、自動的にブレーキをかける場合には、応答時間の間走行する距離とブレーキをかけて停止するまでの距離を合わせて43m、さらにボンネットの長さも併せて45mの距離が必要になる(図3)。


高解像度化の必要性 / Onsemi

図3 高解像度はやはり追求 出典:Onsemi


つまり2Mピクセル程度の広角カメラでは45m先の画像は、縦15ピクセルしかない画像となってしまう。このため、その4倍の8.3Mピクセルの高解像度がクルマ用でも求められるのだという。60km/時以上で走行する場合には解像度はさらに必要になる。

車載カメラに要求される性能はそれだけではない。ADASや自動運転に向けては、カメラの品質や信頼性に関しても強化しなければならない。例えば、センサ上に積層するカラーフィルタは紫外線で劣化しやすいため、この影響を取り除くような技術も開発しているという。

また、故障状態を再現してテストするためのフォールトインジェクションを利用することで、開発期間の短縮を図っている。例えば、画像の色が変わるとか、データに欠陥があるような故障画像のライブラリを備えており、こういった誤りを注入することによって、短時間で劣化状況をシミュレーションする。

現在AR0820の次の製品を開発中で、ダイナミックレンジを155dBに上げている。特定ユーザーにアルファサンプルを出荷しており評価中である。車載用イメージセンサは、交通信号やクルマのテールライトやヘッドライトを認識するため、フリッカ(LEDライトの一部が欠けるように見える)を抑えなければならない。従来のフリッカ対策では、低照度での感度や明るさをはじめとする何らかの性能を犠牲にしているという。そこで妥協のないセンサの開発を目指している。

HDR(High Dynamic Range)とフリッカとの両立を図るため、同社はSuper-exposure技術を開発した。長時間露光しても電荷が飽和しづらくするためキャパシタを大きくし、3枚の映像で155dBのダイナミックレンジを達成した。このセンサが実際のクルマに搭載されるのは、現在のサンプリング評価から、量産時期を経て2025年ころになりそうだと見ている。

(2021/12/09)

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