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汎用から専用で性能向上を図るプロセッサ技術をAMDが解説

これからのプロセッサはドメインコントローラという専用プロセッサが進展しそうだ。VLSI Technology and Circuitsの基調講演で、AMDのCTO兼Technology & Engineering担当VPのMark Papermaster氏は、カスタムコンピュータ技術の時代が来るとして、ハードウエアもソフトウエアも一緒に最適化するコンピュータ技術が重要になる、と述べた。

図1 AMD CTO兼Technology &Engineering担当VPのMark Papermaster氏 出典:AMDホームページから

図1 AMD CTO兼Technology &Engineering担当VPのMark Papermaster氏 出典:AMDホームページから


かつて日立製作所の元専務の牧本次生氏が提案した「マキモトウェーブ(Makimoto’s Wave)」が語られることが、最近多くなってきた。これは、半導体ICの専用化と汎用化は約10年周期で繰り返される、という提案である。今回のVLSI Symposiumの基調講演で、AMDのPapermaster氏が述べた新しいコンピューティングの時代はまさに専用化の時代を象徴したものだ。講演タイトルは「A New Era of Tailored Computing」である。

集積度の向上に関しては、10nm/7nmになってもまだ直線的に過去から続いているが、コストや性能は、もはや時代と共に直線から外れてくるようになった。コンピュータ技術は、エネルギー効率を考慮する必要に迫られている。地球上のエネルギー生成とコンピュータに対するエネルギー消費とのアンバランスにより、エネルギーの危機を迎えることになると警告した。このため、半導体LSI設計は、プロセスで微細化を追求するだけではなく、設計も重視していかなければならないと述べた。

プロセスでは材料やトランジスタの性能向上が約40%、設計は残りの60%が重要になるとする(図2)。設計では、マイクロアーキテクチャの効率を上げ、パワーマネジメント、そして並列化の有効活用などを挙げている。さらにプロセッサチップのようなプラットフォームは消費電力の用途による最適化や、チップサイズやパッケージ、さらにソフトウエアの最適化なども必要となる。


PROCESS IS STILL IMPORTANT - BUT DESIGN NOW DOMINANT PERFORMANCE FACTOR

図2 プロセスは重要だが、設計はもっと重要になる 出典:AMD


AMDではすでにゲーム用のコンピュータと、サーバーやハイエンドコンピュータでは効率が違うという。このため、コンピュータというプラットフォームでは、ドメインスペシフィック(ドメインと呼ぶ特定用途向けの)なコンピュータに合わせるように最適化する必要があるというのだ(図3)。


APPLICATION OPTIMIZED ARCHTECTURES

図3 アプリケーションによってワークロードを変える専用アーキテクチャ 出典:AMD


例えばゲーム用途では、ゲーム向けPCだけではなくゲーム機X-BoxもPlaystation-5も同じGPUではレンダリングに注力しているが、コンピュータ用のGPUは全然違う。例えばRyzen 5000シリーズはモバイルコンピュータに特化しており、7nmプロセスで107億トランジスタを集積し、180mm2のチップ面積のSoCを使う。第2、第3世代のEPYCシリーズだと、7nmプロセスで作ったCPUチップレット8個と12nmプロセスのI/Oアーキテクチャのチップレット1個を小さな基板に集積したCPUを使う。ハードウエアで実現する上で、コスト効率を求めるならチップレットは有効な手段となると同氏は言う。

SoCレベルでは、MOSトランジスタのマージンをアダプティブにして、それほど重要ではない回路ではレイテンシの遅いバックグランドの処理に使うといったフレキシビリティが電力効率を上げる上で必要だとしている(図4)。これによって消費電力と応答時間との最適化を図る。GPUでさえ、グラフィック性能をワークロードに応じて調整する。図3に示したように用途に応じて最適化することによりエネルギー効率を上げていく。どちらの用途も使えるようにするなら最適な効率は低くなる。


TAILORING OPERATION TO THE WORKLOAD

図4 SoCそのものの電源電圧はかつての製品よりは下げるが、さらにワークロードの重要さに応じてレイテンシを無理に速めなくても済むようにアダプティブにマージンを変える 出典:AMD


今後、コンピュータ能力への要求は留まるところを知らない(図5)。機械学習では、AIモデルのパラメータがますます大きくなり、それに応じて計算能力も高まる。2005年〜2010年ころはマルチコアCPUで性能を上げたが、2020年ごろまではGPUやFPGAなどのアクセラレータを駆使し、スーパーコンピュータの性能を上げてきた。この先のエクサスケールコンピュータ時代は、アクセラレータの進化が求められる。


EXPLOSIVE DEMAND FOR PERFORMANCE

図5 コンピュータ性能はますます上がり続ける 出典:AMD


Papermaster氏は、今後はソフトウエアとエコシステムが重要になり、それらがCPUだけではなくGPUなどのアクセラレータをもっと使いやすくなると見ている。例えば、ソフトウエアはオープンソースのプラットフォームをベースとして、コンパイラやライブラリ、ツールなどの最適化を図る。そしてGPUなどのアクセラレータをもっと活用しやすくするための高位言語を容易に使えるようにしていく。そしてこれからのSystem on a Packageがこれからの集積機能のマザーボードとなるだろうという。最後に、産官学のコラボレーションが未来を開くだろうと結んだ。

(2021/06/30)

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