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TI、14/16/18ビット・65/125 MS/sのA-Dコンバータでリアルタイム制御狙う

Texas Instrumentsは、リアルタイム制御を狙ったA-Dコンバータの製品ポートフォリオを広げた。このほど、分解能14ビット、サンプリング速度125MS/sのADC3664から、同18ビット、65MS/sのADC3683など、分解能は14/16/18ビットでサンプリング速度10/65/125 MS(サンプル)/sながら消費電力は71〜100mW/チャネルの製品群ADC3660シリーズを発売した。

図1 Texas Instruments社High Speed Data Converter Product Line manager Matthew Hann氏 出典:Texas Instruments Inc.

図1 Texas Instruments社High Speed Data Converter Product Line manager Matthew Hann氏 出典:Texas Instruments Inc.


TIが今回リリースした製品群は、リアルタイム制御を可能にするレイテンシを最大80%削減し、消費電力は1チャネルあたり数十mW〜100mWと小さく、実用的なリアルタイム制御で使える用途を狙ったもの。例えば、何かの爆発現象の熱プロファイルをリアルタイムで観測・解析したいといった用途や、電力網に落雷が発生した時に故障から素早く守るためのフィードバック保護、またプラズマカッターで正確な切断が求められる場合にはデジタルによるリアルタイム制御が必要になる、と同社高速データコンバータ製品ライン担当マネージャーのMatthew Hann氏は述べる(図1)。

高速のデジタル制御では、負荷やセンサからの信号を増幅しフィルタを通して信号をきれいにしてA-Dコンバータでデジタルに変換し、CPUやFPGAなどの演算器へ送る。演算した結果はD-Aコンバータをとしてアナログに変換しフィルタを通して増幅し負荷やセンサに戻し、そこで大小を判断し制御する。

例えば、サンプリング速度125MS/sで分解能14ビットのADC3664は、逐次近似方式(SAR)とパイプライン方式のアーキテクチャを使っている競合製品よりもレイテンシが80%も低いという。またリアルタイム制御を行うため、サンプリング速度を落としでデータ量を軽くするためのNCO(Numerical Control Oscillator)を集積している(図2)。NCOは一種のフィルタで、データ量を減らせばCPUやFPGAなどで演算量を軽くできる。


ADC3664

図2 ADC3664のブロック図 NCOによってサンプリング速度を落としデータ量を軽くすることができる 出典:Texas Instruments


ADC3664の出力段は、デジタルのシリアルインターフェイスとなっており、CPUやFPGAと直結できるようになっている。この製品はデュアルの2チャンネル構成で100mW/チャネルの消費電力である。半導体製造装置での重要な部品の保護や、製造装置の精度を高めるのに向くとしている。

また、SN比がフルスケールで82dBと大きなA-DコンバータADC3660は、ナローバンド周波数の応用機器で低ノイズが特長で、例えば魚群探知機のソナーに使えば、画像の解像度が上がるという。この製品のサンプリング速度は65MS/sで、分解能は16ビット、消費電力は71mW/チャネルである。

TIは今後とも、高精度、高速のデータコンバータをさらに揃えていく。現在は分解能32ビットA-Dコンバータや最大10.4GS/sのA-Dコンバータ、さらに20ビットのD-Aコンバータや9GS/sのD-Aコンバータなどはある。そのためのAFE(アナログフロントエンド)製品も充実させていく。

(2021/06/15)

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