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MediaTek、AIコアと8コアCPU、GPUを搭載したSoCでChromebook市場強化

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いつでもどこでも常時接続を謳うGoogleのChrome OSを搭載したパソコン「Chromebook」向けのAPUにMediaTekが力を入れているが、このほどそのロードマップを発表した(図1)。MediaTekのSoCの特長はこれまでスマートフォンで培ってきた低消費電力技術。コロナ禍で遠隔教育向けのPCとしてChromebook市場は半年で急成長していることが背景にある。

Chromebook向け製品ポートフォリオ MediaTek

図1 Arm Cortex-AシリーズのマルチコアCPUとMaliシリーズのGPUコアを微細化するAPUロードマップ 出典:MediaTek


すでに2020年に発表した、12nmプロセスのMT8183に続き、2021年第2四半期に7nmプロセスのMT8192、後半から22年にかけて6nmプロセスのMT8195をリリースする予定だ(図1)。

これまでChromebook市場ではIntelやAMDのCPUが使われてきており、消費電力の点でさらに下げたい。電池寿命をもっと長くするためだ。CPUやGPU、ISPなどのプロセッサを1チップにするだけで別チップよりも消費電力は低くなる。ArmのCPUコアとGPUコア、DSPコア、ISPコア、AIエンジンも搭載しており、出来る限りCPUへの負荷を減らし、電池を長持ちさせようとしている。従来、パソコンではそれぞれのプロセッサは別チップで提供していたが、スマホではこれらを1チップに集積することで消費電力の削減を図ってきた。CPU以外のプロセッサはアクセラレータとしてCPUの負担を軽減する。全てのデータ処理をCPUだけに任せると消費電力が大きすぎるようになってしまう。

加えて、CPUコアでは、性能を上げ消費電力を下げるbig.LITTLEアーキテクチャを採用している。これは、性能優先のCPUコア4個と消費電力優先のCPUコア4個を使ったアーキテクチャで、CPUの処理に応じてコアを切り替えていく。例えば、MT8192では、性能優先用にCortex-A76コアを、消費電力を下げる場合にはCortex-A55をそれぞれ使い分ける。その次にリリースするMT8195では性能優先にCortex-A78コア、電力優先ではCortex-A55を集積する。コアの数は負荷に応じて変えていくことで性能・消費電力を両立させている。

パソコン画面上に絵を描くグラフィックス用のGPUコアも、すでに発売しているMT8183ではMali-G52を使っていたがが、これからリリースするMT8192とMT8195にはより高性能なMali-G57コアを集積する。

ISPは画像処理、DSPは音声処理のプロセッサとして使うが、AIエンジンとして4 TOPS(Trillion Operations Per Second)のAPU3.0をMT8195に、2.4 TOPSのAPU2.0をMT8192に集積する。AI(機械学習)機能を集積したのは、音声による個人の特定や音声制御、音声・画像認識、音声入力、ライブ翻訳、オブジェクト認識、背景削除、ノイズリダクション、画像・動画セグメント化、ジェスチャーコントロールなどをリアルタイムかつシームレスに処理するためである。各AIの性能も音声や画像の認識に使うのには十分の性能だとしている。


世界市場年間成長率

図2 Chromebookの急激な成長 出典:MediaTek


MediaTekによるとChromebook市場は、今年急速に成長した(図2)市場であり、これまでのArmベースの低消費電力技術を武器にIntel、AMDの牙城を崩していく構えだ。NECレノボジャパングループの河島良輔氏は、Chrome OSのPCは、教育市場で急増しており、次世代のランドセルになるだろう、と見ている。

(2020/12/25)

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