Micron、176層という最高層のNANDフラッシュをサンプル出荷
Micron Technologyが176層のNANDフラッシュメモリの出荷を開始した(参考資料1)。これまでもキオクシアの112層や128層の開発はあった。製品では96層のNANDが入手可能だが、従来の最大容量より40%以上も大きな容量のストレージデバイスとなる。しかも読出し・書き込みのスピード(レイテンシ)は35%以上も速いという。データセンタ向けSSDを狙う。
図1 176層をCMOS回路上に形成しても普通紙の1/5の厚さしかない 出典:Micron Technology
Micronの176層NANDフラッシュは、これまでのアーキテクチャとは全く異なり、CMOSトランジスタ層の上に形成する。データ量の多い負荷や環境で威力を発揮する。例えば構造化データと非構造化データを一つに共存するデータレイクや、ビッグデータ解析、AIエンジンのような応用である。また、5Gでは、多数のアプリ環境でも立ち上がりやスイッチングが高速になるため、使い勝手(QoS)はかなり良くなるとしている。
最大転送レートは、1,600 MT/s(メガ転送/秒)とONFI(Open NAND Flash Interface)バス上で動作し、Micronの従来の128層NAND製品よりも33%高速になる。このためシステムの起動やアプリケーションソフトの性能が上がる。自動車システムに使えば、エンジンを起動すると同時に即座に応答するようになる。
Micronはすでにシステムメーカーと共に新製品を組み込む作業を始めており、ファームウエアを簡単にプログラムできるようにするため、一筆書きのようなシングルパスのプログラムアルゴリズムを開発した。これにより、システムメーカーはソリューションに早く組み込むことができ、市場への出荷期間(Time to market)を短縮できる。
セル構造はチャージトラップ方式だが、独自開発したCMOSアンダーアレイ構造(CuA: CMOS回路部分より上にメモリセルを設けた構造)をとる。しかもワード線の電極を、従来のポリシリコンゲートではなく、メタルゲート構造にしている点も高速化に寄与している。
加えて書き込み耐性(エンデュアランス)を強化したため、航空機のブラックボックスやビデオ監視カメラのように書き込みの多い用途にも使える。モバイル用途では、メタルゲート構造によって、性能が15%高速になったため、エッジコンピューティングやAI推論、リアルタイムのグラフィックスゲーム機器などに向くとしている。
176層のNANDフラッシュは、シンガポールの量産工場からサンプル出荷中である。この技術を使ったさらに新しい製品は、2021年中に出荷する予定だという。
参考資料
1. Micron Ships World’s First 176-Layer NAND, Delivering A Breakthrough in Flash Memory Performance and Density (2020/11/09)