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ON Semiの車載用CMOSセンサがスバルの新型レヴォーグに搭載

車載用CMOSイメージセンサでトップを走るON Semiconductorが、ダイナミックレンジ120dB、画素数2.3MピクセルでLEDフリッカ低減機能を設けたCMOSイメージセンサ(図1)を量産開始したかと思うと、スバルの新型「レヴォーグ」に搭載されたことを明らかにした。このCMOSセンサが開発されたのは5年前。車載に乗る時期はむしろ早いくらいだ。

図1 車載ステレオカメラ用CMOSイメージセンサがスバルの最新レヴォーグに搭載 出典:ON Semiconductor

図1 車載ステレオカメラ用CMOSイメージセンサがスバルの最新レヴォーグに搭載 出典:ON Semiconductor


スマートフォン用のイメージセンサではソニーが圧倒的に強いが、車載用イメージセンサの世界ではON Semiが同様に圧倒している(図2)。映像を撮る機能だけのカメラでの市場シェアは58.5%、ADAS(先進運転支援システム)で白線検出や運転手の顔認識検出などのセンシングカメラの市場では77%と圧倒している。


車載用カメラ向け イメージセンサ市場シェア

図2 車載用イメージセンサ市場のシェア 出典:ON Semiconductor


車載用CMOSイメージセンサでON Semiが強いのは、性能だけではなく品質が良いからだ。常にZD(Zero Defect:不良率ゼロ)を目指し、不良率がppb(Parts per billion)単位という10億分の一のレベルに下げている。クルマでは何万個という膨大な数の部品を使うため、不良率100万分の一(ppm)では多すぎる。ほとんどゼロを目指すことになる。ON Semiがイメージセンサに限らず、車載用半導体に強いのはZDを目指す企業体質にあるという。パワーMOSFETやIGBT、超音波センサインターフェイスやLEDフロントライトなども車載用でトップクラスだとしている。

ZDを目指すこの品質管理手法はかつて日本が得意だったが、クルマ応用ではZD目標が今でも欠かせない。人の命の重さは何年たっても変わらないからだ。

今回スバルの新型レヴォーグでは、緊急自動ブレーキシステム「アイサイト」に2眼カメラを用いる立体カメラを採用、これまでよりも視野角を広げた。2.3Mピクセルと画素数を従来の2倍に増やしたのは、視野角を広げるためである。ただし、スバルは「アイサイト」というコンセプトを単なる自動ブレーキシステムだけではなく、ADASシステム全体を指すようにしている。このため、アダプティブクルーズ制御やプリクラッシュブレーキだけではなく、アクティブレーン変更支援や運転手異常時対応システムなどもアイサイトと呼んでいる。

今回のCMOSイメージセンサでは、コスト上昇を抑えて画素数を増やすため最小3µm幅の画素に設計し直した。ここに裏面照射型を採用、感度を高めた。

120dBという広いダイナミックレンジは、昼間の明るい所から暗いトンネルに入る場合やその逆に暗い所から明るい外を見る場合には暗すぎたり、明るすぎたりして見えにくいことに対応した。イメージセンサでは、明るい所に最適な絞りで画像を撮り、さらに暗い所に最適な絞りで画像を撮り、それらの画像を重ねることによって、ダイナミックレンジを広げている。通常は3〜4枚の画像を重ねることで明るい場所も暗い場所も同時に良く見える画像を得ることができる。

反面、何枚かの画像を重ねて1枚の画像に処理するため、その処理時間がかかる。このためフレームレート(1秒間に見せる画像の枚数)は、重ねる時間が遅ければ遅いほど、落ちる。今回の120dBでは、1フレームあたり最大4回露光するとフレームレートは30fps(frames per second)とテレビ並みの速度になる。もし1フレーム最大3回露光となるとフレームレートは40fpsと高速になる。

LEDフリッカの抑制では、LEDの点灯の仕組みを知っておく必要がある。ヘッドランプやテールランプのようなLED照明では、0.35mm角程度の小さなLEDチップを数十個並べて点灯している。全てのLEDチップを並列に常時動作させれば消費電力が増える。そこで、例えば20個のLEDチップを点灯させる場合、LEDチップを5個直列につなぎ、それを1ストリングとして4本のストリングを構成する。5個程度だともし1個が壊れてそのストリングが消えても、他の3本のストリングは点灯できる。


図3 LEDドライバの例 Analog DevicesのADD511の場合は4本のストリングを順次点灯させていく 出典:Analog devices, Inc. (Reprinted with permission of Analog Devices, Inc. © 2020 All rights reserved)


図3はAnalog Devices社のLEDドライバの例だが、ここでは4本のストリングを点灯させている。その仕組みはこうだ。例えば最初に1本目のストリングを5ms点灯した後、次に隣のストリングを5ms点灯、さらに順次点灯し4本目まで行ったら、また最初のストリングをもう一度点灯させる。これを繰り返している。人間の目は残像ができるため、短時間で順次点灯させても全部同時に点灯しているように見える。


図4 LEDフリッカ(左)を抑制していなければLEDの表示を認識できなくなる 出典:ON Semiconductor

図4 LEDフリッカ(左)を抑制していなければLEDの表示を認識できなくなる 出典:ON Semiconductor


ところが、このLEDランプをCMOSカメラでシャッターを切ると点灯していないストリングに当たれば、図4のように一部欠けているように映る。これがLEDフリッカである。スマホのカメラ用ならともかく、車載用のカメラではLEDランプの一部が点灯していなければ、それを認識しない恐れがある。このためLEDフリッカを防止することは車載用ではマストになる。

CMOSイメージセンサでは、点灯していないストリングを映さないようにシャッター時間を長くすることで、フリッカを防ぐ。100Hz程度の周波数で、順次点灯していくため、シャッター時間をこの程度長くしても、30〜40fps程度のフレームレートならほとんど影響しない。

ON Semiは今後さらなるダイナミックレンジの拡大(140dB)と高速フレームレート40fpsの両立を目指し、次の車載用CMOSセンサを開発していく。

(2020/09/29)

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