セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

Xilinx、FPGA内蔵のSoCをスバルの新型レヴォーグに搭載

クルマのADAS(先進運転支援システム)システム向けには、ASICではなくFPGAが最適解になりそうだ。もちろん、CPUを集積したSoCも最適化もしれないが、FPGA内蔵のSoCは今後のシステムLSIには欠かせなくなる可能性がある。Xilinxは、FPGA内蔵SoCの「Zynq Ultrascale+マルチプロセッサ(MP)SoC」をスバルの新型レヴォーグに搭載、進化したADAS機能を実現している。

Subaru Levorg is available for pre-orders in Japan starting on August 20th

図1 スバルの新型レヴォーグ 出典:Xilinx、スバル


ADASシステムは、自動運転に向けたレベル1と2の運転支援である。センサからの情報を元にシステムが自動的に判断する、いわゆる自動運転(自律運転)はレベル3以上となる。ここでいうレベルとは、米国の自動車産業団体であるSAE Internationalが定めた標準規格を指す。レベル0〜2までは運転の主体が人間のドライバーであり、ADASシステムがドライバーを支援する。レベル3は特定の場所でシステムがクルマを操作し、緊急時のみ人間が操作する。以降、特定の場所での完全な自動運転はレベル4、どの場所でも完全な自動運転がレベル5となる。

レベルが進むにつれ、チップ仕様は複雑になり、その種類も増えていく。また人間主体のレベル1や2でさえもセンサにカメラ、赤外線カメラ、レーダー、LiDAR(Light Detection and Ranging)などのセンサによってもセンサフュージョン機能は変わる。どのセンサとどのセンサからのデータを組み合わせるか、センサフュージョンはクルマの設計思想によることが多い。このため設計に3〜4年もかかるASICの出番はもはやない。となるとSoCかFPGAか、という選択になる。

XilinxのFPGA内蔵のZynq Ultrascale+ MP SoCは、汎用のマルチプロセッサと専用化可能なFPGAを搭載した半導体チップである(図2)。プログラミングツールは充実しており、一般的なC言語でプログラムし、内部でLSI標準仕様のRTLに変換するツールが普及している。ソフトウエアでプログラミングするCPUで制御と演算を行い、演算専用にはGPUで数値演算を行うことができる。どうしても専用回路にしなければならない場合にはFPGAでハードウエア回路を作る。


図2 XilinxのZynq Ultrascale+ MP SoCのブロックダイヤ 出典:Xilinx

図2 XilinxのZynq Ultrascale+ MP SoCのブロックダイヤ 出典:Xilinx


図2のプロセシングシステムは高速に演算するような場合に威力を発揮する。演算能力の高いARM Cortex-A53のクアッドコアやキャッシュメモリなどを内蔵し、さらにベクトル演算が必要な場合にはGPUのMali-400MPコアを利用できるようになっている。速度の決め手となるメモリとのやり取りを受け持つDDRコントローラ回路も内蔵している。プロセッシングシステムの下(チップの中段)のブロックは、消費電力を減らしたい場合に威力を発揮する。ARM Cortex-R5のデュアルコアや暗号化セキュリティ回路、パワーマネジメント回路、システム制御回路などを搭載している。これらの回路を16nmプロセスで製造している。

最も下のプログラムロジック回路がFPGAである。ここでは専用のストレージ処理や信号処理だけではなく、高速の入出力インターフェイス回路などをプログラムできる。いわばハードウエアで専用化する回路である。

XilinxはこのSoCを新型レヴォーグの自動ブレーキシステム「アイサイト」に搭載した。このアイサイトは2眼のステレオカメラで前方の視野角を広げ、右折・左折・直進が入り混じる交差点での事故を防ぐことが期待されている。交差点での事故が交通事故全体の大部分を占めるからだ。歩行者の巻き込みや右折車と直進車との衝突、出会い頭での衝突など交差点での事故は多い。

Xilinxはこれまで15年間にわたり、車載向けのFPGA製品を出荷してきた(図3)。累計の出荷数量は1億9000万個にも達する。この内、7500万個がADASシステム向けだとしている。これらは28nmと16nmプロセスで製造している。


Xilinx Steady Growth in Automotive

図3 Xilinxの車載市場での実績 出典:Xilinx


ASICの設計に2〜4年もかけられない時代になり、もはや専用ICはよほど使用年月の長いシステムにしか適さなくなった。コンピューティングシステムには、ソフトウエアでプログラムするCPUやGPUに加え、ハードウエアをプログラムするFPGAがHPCやデータセンターではかなり使われるようになりつつある。車載用途でも単なるコントローラとしてECUだけではなく、演算を主体とするECUやドメインコントローラにはCPUシステムとFPGAが威力を発揮する。Xilinxだけではなく、Intel(旧Altera)やLatticeなども車載市場で成長する機会がありそうだ。

(2020/08/20)

月別アーカイブ

セミコンポータルはこんなサービスを提供します