セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

国産スタートアップ、フルHDのカラー画像を撮る赤外線センサを開発

日本発のスタートアップ、ナノルクス社がフルHD・低コストのカラー赤外線センサを開発、ゼロルクスの真っ暗闇でも鮮明なカラー画像をデモした。これまでの赤外線センサはモノクロが常識だった。可視光のRGBを使えなかったからだ。赤外線は目に見えない。赤外線センサは高価で冷却が必要で、解像度が低かった。どうやって鮮明なカラー画像を実現したか。

画出し評価

図1 暗闇でも赤外線でカラー画像を実現 出典:ナノルクス社


新しい技術には半導体チップが必要だ。赤外線センサもやはり半導体技術を使って実現した。ナノルクス社は、既存の部品や回路を組み合わせて、カラー画像が得られることを2018年に証明してきたが、チップを実際に設計、低コストで作れることを今回初めて証明した。

IRセンサは高価であり、しかも解像度は低く、モノクロ映像しか撮れなかった。赤外線を吸収する材料として3元系、4元系の複雑な化合物半導体を使うケースが多く、高価だった。しかも高価ゆえに、センサ部分の高精細化は安くできなかった。このため商用で入手できるIRセンサ、IRカメラは解像度が低く、鮮明ではなかった。

今回ナノルクスが開発したIRセンサは、なんとカラーフィルタを用いるという奇抜な技術を利用しているため、シリコン側は従来のフルHDの解像度(画素ピッチ3µm)で加工できる。この結果、半導体側には10nm以下のような最先端の微細な技術は必要ない。カラーフィルタ側で3µmピッチのフィルムを形成する。

図2に示すように、従来の可視光CMOSイメージセンサと同様、カラーフィルタを形成する。ただし、有機フィルムを合計10層積んでいく訳だが、フィルムAとBを交互に積んでいき、ファブリ-ペロー共振器を構成する。この共振器はフィルタでもあるため、NIR(近赤外)の波長を選択できるように厚さを変えて工夫する。


世界で初めて実用レベル(3µmサイズの画素)IRマルチスペクトルセンサーを実現

図2 10層の有機膜フィルタで色の3原色を創り出す 出典:ナノルクス


目に見えない赤外光でなぜ色をつけられるのか。実は、茨城県つくば市にある産業技術総合研究所という国立研究所の研究者で、現在ナノルクスの創業者であり取締役でもある永宗靖氏が発見した。永宗氏は、赤外線スペクトルの中で、可視光の3原色であるR(赤)・G(緑)・B(青)に対応する波長帯を見つけた。図2のNIR1、NIR2、NIR3がR・G・Bに相当する。もちろんフィルタには色がついている訳ではないが、構造を理解しやすくする目的でわざと色を付けて図示している。

10層重ねたカラーフィルタの厚さは1.1µm未満だという。このため、1画素当たりの面積が3µm×3µm×1.1µmとなる。この技術の特許の独占使用権をナノルクスが得ている。


Nanolux Technology Fabry-Perot bandpass filter

図3 2種類の有機フィルムを交互に重ねて10層の構成にしたカラーフィルタ 出典:ナノルクス


このフィルタ特性を調整するのが真ん中の層の厚さになる。他の層の厚さは変えなくても済むため、コストは低く抑えられる。図3の横軸に波長を取り、縦軸に透過率を示したスペクトル図のように、R・G・Bのフィルタ特性が得られている。有機膜を重ねてファブリ-ペロー・フィルタを構成している。これらのフィルタ膜は可視光を透過するため、光を採り入れるCMOSイメージセンサの裏面側に張り付けるだけで済む。やはりコストは高くならない。


図4 ナノルクス代表取締役社長の祖父江基史氏

図4 ナノルクス代表取締役社長の祖父江基史氏


カラーのフルHD赤外線画像が安く得られるのなら、防犯用のセンサ画像はくっきり見えるようになり、これまで以上に犯罪防止に有効な手段となる。医療用では、眼底を直接見ることができ、心拍数も測れる、とナノルクスの代表取締役社長の祖父江基史氏(図4)は述べている。数百万円もする眼底カメラを1/10の価格で提供できるようになり、大病院ではなくても小さな病院でも備え付けられるようになる。通常のCMOSイメージセンサにIR専用カラーフィルタを設けただけなので、静止画だけではなく動画も同様に撮ることができる。低価格のカラー赤外線カメラの用途は広い。祖父江氏は、量産に備えて次のラウンドの資金調達の準備を始めている。

(2020/02/27)

月別アーカイブ