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ON Semiに見るツールとチップの使い方

半導体メーカーがチップだけを売る時代は終わった。ツールを揃えることで、カスタマイズしやすさが半導体ビジネスの優劣を決めるようになった。その例を幕張メッセで開催されたTechno-Frontier 2019に出展したON Semiconductorに見ることができる。

図1 ICをボードに実装した状態で評価する総合開発環境 出典:ON Semiconductor

図1 ICをボードに実装した状態で評価する総合開発環境 出典:ON Semiconductor


ON Semiconductorが今回力を入れて展示したものはまず、「Strata Developer Studio」と呼ぶ総合開発環境ツールだ(図1)。このソフトウエアをON Semiのウェブサイトからダウンロードしパソコンにインストールする。このアプリを立ち上げておき、評価したい回路基板をパソコンに接続する。この展示会ではLEDの評価基板と2チャンネル/4チャンネルのUSB PD(Power Delivery)基板、ロジックボードをデモ用に用意した。これらのボードはパソコンに差し込めば、その基板を認識し、評価すべき項目にふさわしい画面が出てくる。

例えば、LED評価ボードでは、LEDを駆動する4つの回路−すなわちパルス駆動、リニア駆動、降圧、昇圧駆動−を評価できる。評価画面にはLEDの色も評価できるようになっている。この開発環境には、LED駆動ICの回路図や基板の回路図もクリックだけで表示できる。こういったICのドキュメント情報も一緒に入っている開発環境は使う回路設計者にとってはありがたい。

IoTデバイスでは、ON Semiは産業用にBluetooth LE(Low Energy)を搭載したIC「RSL10 SiP」を二つの応用についてデモした。一つはコインバッテリで長時間使えるような用途を狙った円形の回路ボードにRSL10 SiPを搭載したもの(図2)と、ソーラーバッテリで動作するようなエネルギーハーベスティングの超低消費電力の回路ボードにこのSiP(System in Package)を搭載した例をデモした。


図2  RSL10 SiPを実装した円形IoT基板 出典:ON Semiconductor

図2  RSL10 SiPを実装した円形IoT基板 出典:ON Semiconductor


RSL10 SiPは、従来のRSL10 SoCというBluetooth LEチップにアンテナモジュールや周辺部品も集積した新製品チップである。このSiPを円形の回路ボードに3軸加速度センサや3軸ジャイロセンサ、温度センサ、磁気センサ、照度センサなどを搭載している(図3)。


図3 ON SemiのRSL10 SiPをボードに実装したIoT 出典:ON Semiconductor

図3 ON SemiのRSL10 SiPをボードに実装したIoT 出典:ON Semiconductor


デモでは、この円形型のIoTセンサを激しく揺り動かしてみせ、そのデータをBluetoothからスマートフォンへ転送し、スマホからクラウドに上げ、クラウド上で振動の具合をダッシュボードの形に見える化して表示している。

ソーラーパネルを電源として使うデモでは、回路ボードには温度センサとRSL10 SiPなどを搭載し、Bluetoothを経てスマホに温度データを送っている。しかも間欠的にデータを送っているため、消費電力は少なくて済む。スマホには温度を見るためのアプリ「BLEスキャナー」をインストールしている。

ON Semiがデモしたもう一つの半導体は、2種類のCMOSイメージセンサだ。同社は車載用のイメージセンサでは50%以上の市場シェアを握り、工業用途では強い。今回のデモでは、XGA高解像度でプローブカードをチェックするためのマシンビジョン用のリファレンスデザインと、もう一つは360フレーム/秒と極めて高速のモノクロのイメージセンサを示した。

XGAのイメージセンサのリファレンスデザイン(図4)では、1.1インチ方式のイメージセンサカメラを使い、センサ自身は8M~12M画素のカラー表示を行える。29mm×29mmの標準的な工業用マシンビジョンを製作、プローブカード像をキャプチャーして、その合否を判定する。16M画素の製品も開発中だ。


図4 XGAのイメージセンサでプローブカードを捉える 出典:ON Semiconductor

図4 XGAのイメージセンサでプローブカードを捉える 出典:ON Semiconductor

360フレーム/秒の超高速のモノクロイメージセンサのデモでは、3枚のQRコードを張り付けた円盤を回転させ、その3つのQRコードを高速で読み取るというもの。応用としてはVR(Virtual Reality)のゴーグル内に設置するアイトラッキング機能を考えており、フレーム間の差分をとり、その変化分を検出するとしている。グローバルシャッターに使う。

以上、紹介したON Semiconductorの開発ツールやチップ実装基板はあくまでも評価するためのソフトウエアとハードウエアであり、ICだけを展示してもその機能は全く見えない。今や、いかに見せるかが半導体ビジネスの鍵となっている。

(2019/04/24)

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