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Arm、XilinxのFPGAに集積するCortex-M1/M3をライセンスフリーに

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ARMは、Cortex-M1およびM3のCPUコアをXilinxのFPGAにソフトコアとして集積しソフトIPとして、誰でも使えるライセンスフリーで提供することを、10月1日から始まったXilinx Developer Forumで発表した。Arm Cortex-MシリーズのCPUコアは、制御命令を主体としてマイコンに使われることが多い。FPGAは主に専用回路を設計するのに適しており、工業用IoTをはじめとする組み込みシステム用途を狙う。

図1 Arm Embedded and Automotive部門Portfolio Product Management DirectorのPhil Burr氏

図1 Arm Embedded and Automotive部門Portfolio Product Management DirectorのPhil Burr氏


今回のCortex-M1およびM3のソフトコアに関しては、ユーザーに制限なく誰でも無料で使えるものとなっている、と同社Embedded and Automotive部門Portfolio Product ManagementのDirectorであるPhil Burr氏(図1)は述べる。これまでXilinxやAlteraなどのFPGAには、ARM Cortex-Aシリーズが使われることが多く、制御というより演算を主体とする応用で使われてきた。ARMは、今回Cortex-Mシリーズを投入することで、FPGAからソフトIPとしてFPGAを使ったSoCやシステム設計を容易にできるようになるが、そのためのツールArm DesignStartも提供する。

マイコンなどのコントローラを主体とするCortex-Mシリーズでも、M1は単純な制御のみだが、M3にはリアルタイム制御が可能であり、32ビット・64ビット整数演算のMACやメモリ保護回路も含まれている。これらをソフトIPとして、XilinxのFPGAであるSPARTANシリーズやARTIXシリーズ、ZYNQ Z7000シリーズ、ZYNQ Ultrascaleに集積する(図2)。いわば、FPGAの中にソフトIPを入れ込んで、ユーザーに提供するという形をとる。


Extending Arm benefits and ecosystem across Xilinx portfolio

図2 ArmのCortex-MシリーズをXilinxのFPGAにソフトIPとして埋め込む FPGA内の回路の制御がしやすくなる 出典:Arm


ユーザーは、DesignStartを使って、Cortex-MのIPコアを埋め込むためにXilinxのFPGA開発ツールVIVADOにRTLを埋め込むことから設計作業が始まる(図3)。ArmのCPUコアには、多くのサードパーティが作ったソフトウエア資産があり、またソフトウエアコードは再利用する形になっている。このため幅広いエコシステムを利用できるというメリットがある。FPGAベースのどのような開発ボードにも使える。


Rapid time to market with simplified development flow

図3 ライセンスフリーのCortex-Mシリーズを集積したFPGAの開発は容易になる 出典:Arm


Cortex-Mシリーズは制御用のCPUコアとして様々なSoCに使えるため、これまで出荷された350億個のSoCにCortex-Mが使われてきた実績がある。最近のSoCは、CPUだけではなく、GPUやDSP、ISPなどさまざまなプロセッサを集積するようになってきており、交通整理を行う制御用のプロセッサコアが必要になる。このためCortex-Mシリーズの需要は多い。さらにFPGA設計者がSoCへ移るときにはコントローラ部分をそのまま使えることはメリットが大きい。

Armは、これまで大量に使われてきたCortex-MシリーズのコアをFPGAにライセンスフリーで使わせることで、試作を自由にしてもらい、FPGAからSoCへ移行する時にライセンス料をいただくことで売り上げにつなげる。ライセンスフリーのRISC-Vが登場したことで、Armのビジネスモデルを転換しながらもマネタイズできる方法を模索していると言えそうだ。

(2018/10/03)

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