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Intel、バンド幅512GB/sのHBM2を集積したFPGAを発売

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Intelは、バンド幅が512Gバイト/秒と極めて広いHBM2(High Bandwidth Memory)を搭載したFPGA「Stratix 10 MX」の販売を開始した。HBMはTSV(Through Silicon Via)を使って、DRAMメモリアレイチップを縦に重ねた構造を持つ高密度メモリ。大量のデータを一気に流す用途に適している。

図:Stratix 10 MX

図1 HBM2を基板に集積したFPGA、Stratix 10 MX 出典:Intel Corp.


IntelはこれまでもFPGAのStratix 10ファミリを出荷してきた。28Gbpsのトランシーバを持つStratix 10 GXや、組み込みクワッドコアのArmプロセッサを内蔵したStratix 10 SXなどがある。今回は高速のHBMを基板に搭載したFPGAという位置づけで、HBMのバンド幅は例えば従来のDDR 2400 DIMMモジュールと比べると10倍高速だとしている。

新製品の512GB/sというバンド幅を生かす用途には、HPC(高性能コンピューティング、要はスーパーコンピュータや超大型コンピュータ)向けの多機能アクセラレータやデータセンター、NFV(ネットワーク機能の仮想化)、放送などがある。これらは大量のデータを転送するハードウエアアクセラレータや、ストリームデータのパイプライン動作の仕組みなどが必要となる。

HPC分野では、大量のデータを流す前後に圧縮・伸長する能力が最大限求められる。HBM2内蔵のFPGAは、FPGA単独よりも大量のデータ転送を圧縮しアクセラレーションする。HPDA(High Performance Data Analytics)環境では、Apache KafkaやApache Spark Streamingのようなストリーミングデータのパイプラインフレームワークに、リアルタイムのハードウエアアクセラレーションが必要。Stratix 10 MX FPGAは、ホストCPUの負荷をかけることなく、データの読み出し/書き込みや暗号化/解読をリアルタイムで同時に行える。

Stratix 10 MX FPGAファミリは、配線チップを基板に内蔵した技術EMIB(Embedded Multi-Die Interconnect Bridge)を使っており、FPGAとDRAM部分を高速化している。EMIB技術は、従来のシリコンインターポーザをチップ全体の下に置くのではなく、基板内部に凹部を作り、この凹部に配線用のシリコン多層配線チップを埋め込む技術である(図2)。シリコンインターポーザと比べ、小さな配線チップを使うためチップ間の距離を短くできる上にコスト的には安価になる。FPGAとDRAM間をつなぐためにこの配線チップが埋め込まれ、その距離が短いために高速に通信できる。今回の技術ではHBM2は基板上にマイクロバンプを通して設置・接続され、埋め込み配線チップを通してFPGAと接続する。


図:Heterogeneous Integration using EMIB Technology

図2 Intelが開発したチップ埋め込み基板技術EMIB 出典:Intel Corp.


EMIB技術は、高性能なモノリシックFPGAとHBM2を効率よく基板上に集積し、メモリバンド幅のボトルネックを解消し、消費電力を上げずに高速化を達成してきた。Stratix 10 FPGAファミリは、14nm Fin FETプロセス技術とEMIBなどのパッケージング技術を特長としている。

(2017/12/26)

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