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Lattice、よりエッジ側でコンピューティングを展開

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小規模FPGAで存在感を示すLattice Semiconductorがエッジデバイスのインテリジェント化に小規模FPGAの必要性を訴求している。IoTシステムでは、データを全てクラウドに上げ、クラウド上でデータ処理するならあまりにもクラウドの負担が大きくなる。このため、IoT端末側である程度データ処理すべきというのがエッジコンピューティングである。

一方、コンピューティングの世界では、特にクラウドのハードウエアであるデータセンターでの演算を加速するため、従来のCPUやGPUに加え、FPGAで専用回路を作り演算を高速化しようという流れもある。CPUは同じハードウエア上で、さまざまなソフトウエアを動かし独自の機能を実現するチップであるが、GPUはCPUほどフレキシビリティがないが、やはりソフトウエアを使ってグラフィックスの色塗り(レンダリング)のような並列演算に向く。さらに高速化したい場合には、ソフトウエアではなく、固定のアルゴリズム演算をハードウエアで行うのにはFPGAが向く。例えばマルチCPUシステムでバスやインターフェースがボトルネックなら、そのインターフェース回路をFPGAで実現する。

IntelがAlteraを買収したのは、まさにFPGAでハードウエア専用回路を作る用途もカバーするためだ。IntelはCORE i5やi7などの最新プロセッサでも自社開発のマルチGPUコアを集積しているが、機械学習やディープラーニングなどのAI用途ではGPU専門のファブレスメーカーNvidiaと提携している。これによりIntelは優れたCPU、GPU、FPGAを手に入れており、データセンターがどのように進化しても対応できるようにした。QualcommはXilinxと提携しており、ハイエンドのHPC(高性能コンピューティング)向けの半導体を扱うQualcomm Datacenter Technologiesを小会社として組織化し、このほどHPC分野向けにARMベースのマイクロプロセッサCentric 2400を出荷した。


図1 Lattice Semiconductor COOのGlen Hawk氏

図1 Lattice Semiconductor COOのGlen Hawk氏


FPGAを専用のハードウエア回路として使う用途はコンピュータだけではない。機械学習やディープラーニングのようなAIにも向いており、LatticeのCOO(最高執行責任者)のGlen Hawk氏(図1)は、「コンピューティングはエッジデバイスにもやってくるようになった」と述べている。特に、インテリジェント化、スマート化はエッジに向かっており、これまでデータセンターで使われてきたニューラルコンピューティングもエッジに来るようになっているという。

ニューラルネットワークコンピュータは、並列処理ができること、新しいアルゴリズムを変えられるというメリットもある。しかも、Latticeのような小規模FPGAはニューラルコンピューティングにも向くとHawk氏は言う。現在AIのディープラーニングの応用としてパターン認識に向いた畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が多く使われている。学習する場合の重み係数は従来8ビット、16ビットが使われているが、もっと精度を落としてもかまわない。4ビット、あるいは1ビット(1と0のバイナリ)という重みさえも提案されている。LatticeのFPGAに使われているLUT(ルックアップテーブル)は4入力1出力なので、むしろCNNにはピッタリだ、とHawk氏は言う。


図2 Latticeの狙いは小規模の応用からエッジへ向かう 出典:Lattice Semiconductor

図2 Latticeの狙いは小規模の応用からエッジへ向かう 出典:Lattice Semiconductor


ニューラルコンピューティングだけではなく、Latticeはエッジや民生など小規模の集積回路を設計しているため、XilinxやAlteraとはぶつからない(図2)。しかも、小規模であるから消費電力の削減が優先され、前者は微細化とFinFETプロセスを使っているのに対して、Latticeはコンピューティング用途でも低消費電力のFD-SOIプロセスを選択する。

コンピューティング用途を狙うのは、新しい成長分野だとみているからだ。LatticeのPLDはこれまで制御系でたくさん使われ、ここ数年はコネクティビティで伸ばしてきた。しかし、コネクティビティやモバイルはそろそろ頭打ちになっており、次の新分野としてコンピューティングに狙いを付けた(図3)。


図3 エッジコンピューティングで今後成長へ 出典:Lattice Semiconductor

図3 エッジコンピューティングで今後成長へ 出典:Lattice Semiconductor


今から5年後の2022年にはエッジコンピューティングが成長することで、Latticeも一緒に成長していくと期待する。

(2017/11/10)

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